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東北大学と日立製作所が
専用LSIの開発で小型・軽量化を実現した
超小型頭部近赤外光計測装置の試作機を開発

(2011/9/14)

●問い合わせ先
国立大学法人東北大学 加齢医学研究所 教授 川島隆太
fbi@idac.tohoku.ac.jp

(株)日立製作所
トータルソリューション事業部
新事業開発本部 人間指向ビジネスユニット
[担当 : 吉村]
TEL 03-4564-9668(直通)
http://www.hitachi.co.jp/

超小型頭部近赤外光計測装置の試作機

  国立大学法人東北大学 加齢医学研究所の川島 隆太教授と(株)日立製作所らは,JST研究成果展開事業(先端計測分析技術・機器開発プログラム)機器開発タイプの一環として,脳活動にともなう前頭葉部分の血液量の変化を簡単に計測する超小型頭部近赤外光計測装置の試作機の開発に成功した。東北大学が脳機能イメージングの知見をもとに研究で必要な要素を提示して,それに即して日立製作所が試作機の基本原理とシステム構成の開発を行った。

  本試作機は,頭部に装着するワイヤレスのヘッドセットと計測結果を表示するコンピュータ用アプリケーションソフトウエアの2点で構成される。ヘッドセットは,脳活動にともなう前頭葉部分の血液量変化の測定に特化して,新規に開発したもの。測定した信号を処理する主要回路をひとつのLSIに集約し,信号処理基板の面積を日立の従来製品と比べて約1/10にしてヘッドセットに内蔵した。これにより,測定した信号をコンピュータなどを経由せずに,直接ヘッドセット内で高速処理することが可能となった。ヘッドセットはワイヤレスで,その重量は信号処理基板を含めても約90gと軽量化に成功した上,デザインを改良することによって高い装着性を実現した。この成果により,学校,家庭,オフィスなど,日常に近い状況で前頭葉部分の血液量の変化が簡単に計測可能となったことから,脳科学をはじめ認知学,心理学,教育学など幅広い分野での活用が期待される。また,同時に計測した20人の脳の血液変化量データを,一つのコンピュータ上で表示し,データベース化するアプリケーションソフトウエアも併せて開発。これにより,測定しながらリアルタイムで計測結果を表示することを実現した。本成果は,複数の人が共存する中で,脳がどのような相互作用を行っているかを解明する「社会脳科学」など,最先端の研究分野への応用も期待できる。今後,川島教授らは本試作機を研究に用いて,その有用性を検証していく。

●本試作機の主な特長

(1) 主要回路の信号処理部をひとつのLSIに集約することで,小型・軽量化を実現
従来は主要な回路の信号処理を行うために,大規模な回路,コンピュータによる分析アルゴリズムを用いていたが,本試作機では信号処理部をひとつのLSIに集約し,ヘッドセットの重量 約90gにしました。また,乾電池(CR123A)連続駆動6時間(常温)を実現した。

(2) 20人の脳を同時に計測,かつ,計測結果をリアルタイムに表示
今回はデータ伝送を最適化したZigbeeプロトコルにより無線化し,これまでコンピュータで処理していた多くの信号処理をヘッドセットに内蔵されているLSIで処理し,コンピュータでの処理プロセスを軽減させることで,20人までの同時計測を可能にした。また,従来ポスト処理で行ってきた,ベースライン補正や周波数解析によるアーティファクト除去や心拍演算などを,LSIに組み込んだ独自のアルゴリズムで実時間処理することによりリアルタイム計測を実現している。

(3) ワイヤレスで装着しやすいヘッドセット
ヘッドセットはワイヤレスで装着することができるため,被験者の行動を制約することなく,より日常に近い状況で計測することができる。また,ヘッドセットを従来の額を包み込む形状から頭部の前後を軽く挟み込む形状とすることで,被験者がヘッドセットを装着するのにかかる所要時間を約10秒程度に抑え,拘束性の低いデザイン設計を行った。