取材報告

2005
日本医療情報学会主催のユビキタス医療シンポジウムが開催
技術の現状と将来性について意見交換

シンポジウム会場の様子
シンポジウム会場の様子


田中 博 大会長
田中 博 大会長
(東京医科歯科大学)

 

塚本昌彦 氏
塚本昌彦 氏
(神戸大学)

 

大場光太郎 氏
大場光太郎 氏
(産業技術総合研究所)

 

吉崎正弘 氏
吉崎正弘 氏
(総務省)

 4月22日(金),23日(土)の2日間,東京・学術総合センター(一橋記念講堂)で,有限責任中間法人日本医療情報学会主催による第1回「ユビキタス医療シンポジウム」が開催された。このシンポジウムのテーマは,「ユビキタス医療のグランドデザインと実現へのロードマップ」。医療のIT化に新たな可能性を開く,ネットワーク通信などを活用したユビキタス技術の最新動向と,実現に向けた課題について話し合う場として設けられた。シンポジウムは,日本医療情報学会ユビキタス委員会ワーキンググループの活動報告のほか,基調講演,特別講演,テーマ別セッションで構成。ネットワークやロボティクス,電子タグなど,特に技術面を重点にした内容となった。

 初日,本シンポジウムの大会長で,日本医療情報学会理事長・会長の田中 博氏(東京医科歯科大学大学院疾患生命科学システム情報生物学教授,情報医科学センター長)が,基調講演を行った。この中で田中氏は,ユビキタス医療の概念についての考えを示し,病院内だけでなく日常生活空間でも,情報量に差があるものの医療や健康情報を扱うことができるという,Medical Intelligent Space論を展開した。さらに,「医療過誤をなくすための最後の砦」であるユビキタス医療を実現するための重要な技術となる電子タグについても触れた。

 また,3演題が用意された特別講演は,初日に塚本昌彦氏(神戸大学工学部電気電子工学科教授),大場光太郎氏(独立行政法人産業技術総合研究所知能システム研究部門空間機能研究グループ)が演壇に立った。塚本氏は,コンピュータを身体に装着して使用するウェアラブルコンピューティングについて紹介。自らヘッドマウントディスプレイを着けて発表し,会場を盛り上げた。一方,大場氏は,生活環境に埋め込む形で使われる「ユビキタス・ロボット」について説明。これを実現するためのネットワークノードの開発について発表した。

 翌23日に行われた特別講演3では,吉崎正弘氏(総務省情報通信政策局総合政策課課長)が,「U-JAPAN──2010年の日本」と題し,「e-Japan」に替わる新たな取り組みとして総務省が推進する「u-Japan政策」に関して述べた。この「u」は,ユビキタスを表すもの。吉崎氏は,「u-Japan」実現のためにも,ネットワークの整備,情報通信をより活用できるような社会システムの改革,セキュリティなどの利用環境の整備が必要だとした。

 2日間にわたるシンポジウムでは,医療従事者に限らず,技術開発に取り組む研究者,メーカーの担当者も各セッションで発表。ユビキタス医療実現のために多角的な考察がなされ,産官学にまたがって意見が交換された。また,会場の外では,ポスターセッションやメーカーのシステム展示も行われた。シンポジウムは今後も行われる予定であり,次回,実現に向けてより進んだ内容が発表されることが期待される。



●問い合わせ先
ユビキタス医療シンポジウム事務局
(NPO法人日本医療情報ネットワーク協会内)
TEL 03-3814-3431 FAX 03-3814-3432
info@jamina.jp