取材報告

2005
カナダ医療IT推進組織「Infoway」総裁による
講演会およびシンポジウム開催

レクチャー会場風景
レクチャー会場風景


全員

 

田中 博 氏
田中 博 氏
(JAMI会長)

 

向井 保 氏
向井 保 氏
(MEDIS-DC理事長)

 政府によるe-Japan計画や保健医療分野のグランドデザインにより,これまで医療のIT化が積極的に進められてきたが,電子カルテやレセプト電算システムの普及は,設定目標に届いていない状況にある。一方,医療のIT化が急激に進んでいる欧米諸国では,日本における電子カルテの概念とは異なる相互運用型の生涯電子カルテ(EHR:Electric Health Records)の普及を国レベルで積極的に推進することで,大きな成果が上がっている。

 こうした中,国家規模での相互運用型EHR構想が順調に進んでいるカナダから,医療IT推進のための非営利企業「Infoway(Canada Health Infoway Inc.)」社長兼CEOであるRichard C. Alvarez氏が来日したのを機に,日本医療情報学会(JAMI),医療情報システム開発センター(MEDIS-DC),保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)の三者が,同氏による講演会とシンポジウムを企画。6月3日(金),都市セン ターホテル(東京)において開催された。シンポジウムでは,日本の医療ITに関わる行政,学会,工業会関係者をシンポジストに迎え,来場者を交えた活発な意見交換が実現した。

 講演に先駆け,本会の企画者側を代表して,JAMI会長の田中 博氏が挨拶。「欧米の国家的なIT政策は非常にうらやましいと同時に,数年以内という限られた期間で本当に実現できるのだろうかと考えていたが,Alvarez氏からは,困難はあったが着実に実現できているとうかがった。そうした意味で本会は,日本ではどのように実現していけばいいのかを学ぶ良い機会だ」と述べた。続いて,MEDIS-DC理事長の向井 保氏が挨拶。「カナダでは,日本のグランドデザインにあたる計画が1989年に立ち上がったが,遅々として進まないなど,日本と同じような状況があった。しかし,Alvarez氏は辛抱強く続けることが大切と話されている」と述べ,日本でも今後は産学官がより協力し,着実に次のステップに進みたいとの考えを示した。

 Alvarez氏は「Strategy and Current Issues for Health IT in Canada」をテーマに,カナダの医療IT戦略と課題について講演を行った。Alvarez氏によると,カナダでは90年代にEHR構想が立ち上がったが,現在の状況に至るには非常に長い時間が費やされたという。しかし,明確かつ実用的なビジョンに基づいた報告書や戦略を実行して結果を出すことで,医療IT推進に対する連邦,州・準州政府閣僚のコンセンサスが着実に得られ,予算を獲得,国レベルでのIT化を強力に推進することができたと報告した。

 続いて,シンポジウムを前に,行政側から新村和哉氏(厚生労働省医政局医療機器・情報室室長)と藤本康二氏(経済産業省情報政策局医療・福祉機器産業室室長),学会から田中氏,さらに,MEDIS-DCの遠藤 明氏(専務理事),JAHISの篠田英範氏(運営管理)らシンポジストから,それぞれの組織における取り組みが簡潔に紹介された。豊田 建氏(JAMI)が司会を務めたシンポジウムでは,Alvarez氏に対し,Infowayの仕組みなど細かな部分も含めた質問をはじめ,活発な意見交換が行われた。

 英国やオーストラリア,米国などと並び医療ITを積極的に進めるカナダのトップによる講演ということもあり,会場には多数の関係者がつめかけ,熱心に耳を傾けていた。

Richard C. Alvarez 氏
  Richard C. Alvarez 氏
(President and CEO,Canada Health Infoway)
2004年4月からInfoway社長兼CEOに就任。それまでの1994年からの10年間は,医療情報の標準化と普及,データベース整理・統計整理のための組織「CIHI(canadian institute for health information)」の所長を 務めた。また,ISO/TC215のカナダ責任者として10年間にわたり国際的活動に貢献。そのほか医療関係の重要な役職を担当し,名実ともに,カナダにおける医療情報システム推進のリーダーである。


●問い合わせ先
保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)
TEL 03-3506-8010
http://www.jahis.jp