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取材報告

2008

日本医療情報ネットワーク協会が
「ユビキタス医療シンポジウム」を開催


田中 博 氏(東京医科歯科大学)

田中 博 氏(東京医科歯科大学)

篠田義一 氏(東京医科歯科大学)

篠田義一 氏(東京医科歯科大学)

藤本昌彦 氏(総務省)

藤本昌彦 氏(総務省)

山本隆一 氏(東京大学)

山本隆一 氏(東京大学)

原 量宏 氏(香川大学)

原 量宏 氏(香川大学)

中嶋直樹 氏(経済産業省)

中嶋直樹 氏(経済産業省)

中安一幸 氏(厚生労働省)

中安一幸 氏(厚生労働省)

パネルディスカッションの様子

パネルディスカッションの様子

 特定非営利活動法人日本医療情報ネットワーク協会(JAMINA)は,7月8日(火),東京医科歯科大学歯学部附属病院特別講堂(東京・文京区)において,「ユビキタス医療シンポジウム − 混迷する医療・社会保障にITはどう寄与できるか」を開催した。このシンポジウムは同協会の理事長である東京医科歯科大学教授・同大学情報医科学センターセンター長の田中 博氏が,総務省の情報通信月間推進協議会会長表彰(情報通信功労賞)を受けたことを記念して行われた。田中氏の受賞理由は,「患者の心拍や呼吸をワイヤレスで伝送し呼吸停止時にはアラーム音で警告するシステムや、医療従事者等の病室への入退室情報や医療用カート上の薬剤や医療材料の情報を電子タグで把握することで、医療過誤の防止等に資するシステムの開発といったユビキタス健康医療技術の普及に貢献するなど、情報通信の発展に多大な貢献をした」(総務省報道資料)となっている。

 シンポジウムでは,まず同大学研究担当理事の篠田義一氏が,開会の挨拶を行った。篠田氏は,学内のデータベース構築など田中氏の功績をたたえた上で,これからの医療ITについて,人間の欠点を補い,医療過誤の減少に結びつくことが期待されると述べた。篠田氏の挨拶に続き,田中氏の受賞記念講演「混迷する医療・社会保障にITはどう寄与できるか」が行われた。田中氏は,わが国の医療について,医療費の上昇や医師不足などの現状を説明し,それを解決する手段として医療ITが有用であるとした。そして,日本版EHRの実現に向けた動きとして,レセプトオンライン化,特定健診・保健指導の義務化,医療計画の見直しと地域完結型医療の推進があると説明した。また,田中氏は英国,米国,カナダのEHRの進展についても触れ,PHR(personal health record)への展開についても言及した。さらに田中氏は今後の日本版EHRのためのロードマップとPDCAサイクルによる政府・行政も含めた推進体制について提言した。

 続いて,総務省情報通信政策局情報流通振興課情報流通高度化推進室室長の藤本昌彦氏が「ユビキタスネット健康医療に関する総務省の取り組み」と題して招待講演を行った。藤本氏は,IT戦略本部がまとめた「重点計画-2008(案)」を取り上げながら,健康情報活用基盤実証事業,ユビキタスネット技術の実証実験などを紹介した。

 この後,日本医療情報学会会長で東京大学大学院情報学環の山本隆一氏による特別講演(1) 「レセプトオンライン化と義務的健診 − 情報爆発への備え」が行われた。山本氏は,健康情報活用基盤によって増大するデータの扱いに関し,J-MIXやHL7などの形式などについて意見を述べた。また,特別講演(2) では,香川大学医学部附属病院医療情報部の原 量宏氏が「かがわ遠隔医療ネットワークと経済産業省による周産期電子カルテネットワークプロジェクトの全国展開 −日本版EHRの実現をめざして」をテーマに講演した。原氏は,2003年度に,香川県,香川県医師会,香川大学医学部が協力して始めたかがわ遠隔医療ネットワーク(K-MIX)の運用状況や他地域との連携も含めた今後の展望などについて,説明した。

 特別講演(3) では,経済産業省商務情報政策局医療・福祉機器産業室の中嶋直樹氏が「オープンプラットフォームPHR」と題して,PHRを使ったサービス例や国内で展開する上での課題を紹介した。これに引き続き,厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室主査の中安一幸氏が,特別講演・「社会保障分野の情報化にむけて」を行った。中安氏は,政府が導入を進めている社会保障カードについて,今後の展望も含め説明した。

 この後,パネルディスカッション「混迷を極める医療・社会保障にITはどう寄与できるか」が行われた。田中氏が司会を務め,パネリストとして藤本氏,山本氏,原氏,中嶋氏,中安氏に加え,田辺三菱製薬(株)製薬本部SCMセンター計画部企画グループトレーサビリティプロジェクト担当参事の般谷 徹氏,NTTマイクロシステムインテグレーション研究所ネットワーク装置インテグレーション研究部の新藤一彦氏が参加。日本版EHR実現のための方策や総務省,経済産業省,厚生労働省が合同で行う実証事業についての三省の見解について,意見が交換されたほか,社会保障カードのあり方についても活発な議論が行われた。


●問い合わせ先
特定非営利活動法人日本医療情報ネットワーク協会
事務局
TEL 03-3814-3431
E-mail info@jamina.jp