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取材報告

2009

GECT Advanced Technology Symposium 東京-大阪同時開催
─次世代MDCTにおける最新技術と臨床的有用性を講演─


東京会場風景
東京会場風景

大阪会場風景(ライブ中継)
大阪会場風景
(ライブ中継)

デモンストレーション風景
デモンストレーション風景

取締役副社長・川上 潤氏
取締役副社長・川上 潤氏

基調講演:栗林幸夫氏
基調講演:栗林幸夫氏

東京会場・講演1,3座長:木村文子氏
東京会場・講演1,3
座長:木村文子氏

講演1:陣崎雅弘氏
講演1:陣崎雅弘氏

大阪会場・講演2,4座長:鳴海善文氏(ライブ中継)
大阪会場・講演2,4
座長:鳴海善文氏
(ライブ中継)

講演2:富山憲幸氏(ライブ中継)
講演2:富山憲幸氏
(ライブ中継)

講演3:赤羽正章氏
講演3:赤羽正章氏

講演4:村上卓道氏(ライブ中継)
講演4:村上卓道氏
(ライブ中継)

東京会場:六本木アカデミーヒルズ49から臨む美しい夕焼け
東京会場:
六本木アカデミーヒルズ49から臨む
美しい夕焼け

 GEヘルスケア・ジャパンは2009年11月14日(土)の午後4時から,「GECT Advanced Technology Symposium」を東京と大阪で同時開催した(東京会場は六本木アカデミーヒルズ49,大阪会場は新大阪イベントホール レ ルミエール)。両会場間はインターネットでライブ中継され,スクリーンを通して交互に講演が行われた。本シンポジウムでは,2008年10月に発売されたHD(High Definition)CTテクノロジーを結集した「Discovery CT750 HD」,2009年5月に発売され,CT750 HDのコンセプトとLightSpeed VCTの主要機能を併せ持ち,日本のユーザーの意見が大きく反映された「LightSpeed VCT VISION」の最新技術と臨床応用の成果が5名の演者により発表された。

 講演に先立ち,GE社から,最新装置であるワークステーション「AW VS4 XT」,フラットパネル搭載一般撮影装置「Discovery XR650」,超音波診断装置「LOGIQ E9」の技術紹介が行われた。また,通路には該当製品の本体やモニタなどが展示され,デモンストレーションが行われていた。

 シンポジウムの冒頭,挨拶に立ったGEヘルスケア・ジャパン(株)取締役副社長・川上 潤氏は,今年8月からのGE横河メディカルシステム(株)とGEヘルスケア バイオサイエンス(株)の事業統合と社名変更,およびGEの新戦略“ヘルシーマジネーション(healthymagination)”を紹介するとともに,今回の講演の内容は今後大きく加速していくCT技術になると述べた。

 まずはじめに,東京会場から,栗林幸夫氏(慶應義塾大学医学部放射線診断科教授)の基調講演「空間分解能の向上と新しい撮影方法がもたらした心臓CTへのインパクト」が行われた。栗林氏は,マルチスライスCTによる心臓CTは,多くのセンタースタディで高い精度が証明されているとし,急性冠症候群(ACS)発症の原因となる不安定プラークの検出に有効な例を示した。一方,心臓CTは,心拍数の影響,3mm未満のステントの評価,重度石灰化の診断,計測精度の不足,プラーク検出(特に非石灰化プラーク)などの限界があると述べた。これらの課題を克服するDiscovery CT750 HDの技術として,CTで初めて人工ガーネットを使用した新型「Gemstone」検出器による空間分解能の大幅な改善(世界最小の中心空間分解能0.23mm,従来の2.5倍である2460ビュー),ならびに新しい画像再構成法「Adaptive Statistical Iterative Recon:ASiR」を紹介。これにより,3mm未満のステント内腔の評価が可能になるとした。さらに,高速スイッチング・デュアルエナジー法である「Gemstone Spectral Imaging:GSI」についても,ヘリカルスキャンでの連続データ収集とRaw データレベルでの計算・描出が可能であり,血管内の石灰化の検出など,今後の臨床応用が期待されると述べた。

 続いて東京会場からの講演1と3は,木村文子氏(埼玉医科大学国際医療センター画像診断科教授)が座長を務めた。陣崎雅弘氏(慶應義塾大学医学部放射線診断科准教授)の講演1のテーマは,「Fast kVスイッチングによるGemstone Spectral Imaging」。64列以降のマルチスライスCTは,メーカーによって方向性が分かれたが,GEは空間分解能の向上とスペクトラル・イメージングを指向するHD CTを開発した。Gemstone検出器がもたらすスペクトラル・イメージングの特徴は,“Material decomposition”と“Monochromatic Imaging”に代表される。

 まず,80kVと140kVで撮影した画像のCT値から物質弁別を可能にする“Material decomposition”は,例えば血管の石灰化と狭窄の両方が1回の検査で非侵襲的に検出可能になる。Discovery CT750 HDでは,Fast kV switching Dual Energy技術により,0.5msの高速スイッチングと50cmのフルFOVを実現した。

 さらにHDCTでは,GE独自の仮想単色X線画像である“Monochromatic Imaging”が可能になる。Fast kV switching Dual Energy技術による時間差のないスキャンが実現するMonochromatic Imagingは,従来のCTの概念を変えるインパクトをもたらすという。Monochromatic Imagingとは,80kVと140kVの2つのエネルギーでスキャンしてビームハードニング補正を行い,単波長のエネルギーのX線画像を作成するもの。例えば,65,80,100,120 keVの画像が作成できる(Monochromatic Imagingは従来のX線スペクトルの単位であるkVpではなく,ピーク値をとってkeVで表す)。正確なCT値の計測が可能であり,ビームハードニングアーチファクトの少ない画像を作成することができる。120kVpと65keVの画像を比較したファントムによる画質の評価では,65keVのMonochromatic Imagingは被ばく線量は変わらず,SNRが同等で,CNRが良い画像であることが確認された。陣崎氏は,Monochromatic Imagingは従来の120kVpのCT画像を置き換えて,CTのスタンダードになる可能性があると強調した。また,ヨード濃度を計測する手法のメインストリームになる可能性にも言及した。

 講演2と4は大阪会場で発表され,座長は鳴海善文氏(大阪医科大学放射線医学教室教授)が務めた。講演2の富山憲幸氏(大阪大学大学院医学系研究科放射線医学講座准教授)のテーマは,「HD最新使用経験─High Definition CTが臨床にもたらす価値:胸部CTを中心に」。冒頭,0.23 mmの高空間分解能を実現したCT750 HDにおける20年ぶりの分解能更新がもたらすメリットについて,中心空間分解能33%向上,オフセンター20 cmでも44%向上,密度分解能も40%向上,アーチファクトの軽減を強調した。そして,進展固定肺を用いたHDCTの画質評価と臨床例での画質評価(HDCTとVCTの比較)を行ったところ,通常線量ではHDCTの画質は有意に改善される,低線量ではノイズの影響が大きいがASiRの利用により減少可能,HDCTはすりガラス陰影や細気管支病変などの診断の確診度が向上するなどの結果が得られたと述べた。

 東京会場からの講演3は,赤羽正章氏(東京大学医学部附属病院放射線科准教授)が「ASiRによる低被曝と高分解能の実現」と題して発表。HDCTの新しい画像再構成法「Adaptive Statistical Iterative Recon:ASiR」は,PET/CTやSPECTで使われる逐次近似法を応用した画期的な画像再構成法で,Rowデータ中の信号をすべて使ってノイズ成分だけを除去する。ASiRは,0〜100%までの割合をユーザーが選んで調節するASiR-Blendingが可能である。赤羽氏はASiRの活用法として,雑音量を減らす→画質向上,雑音量を増やさずにmAsを下げる→被曝低減,画質保持,雑音量増加を抑制しつつ空間分解能向上→高分解能の関数,HiRes modeなどを挙げ,臨床におけるメリットを具体例を示しつつ解説した。

 最後は大阪会場から,村上卓道氏(近畿大学医学部放射線医学講座放射線診断学部門教授)が講演4「VHS機能による4次元画像診断」と題し,GE社と共同開発したVolume Helical Shuttle(VHS)による4Dスキャンについて講演した。VHSは加減速領域の有効利用とサンプリング間隔の短縮により広範囲なシネスキャンを行う撮影法で,2009年4月に製品化された日本発の技術として期待されている。VHSは,40 mmビーム幅でも500チャンネル相当の広い領域を高速で撮影可能〔MultiPhase Volume検査,Whole Organ撮影や,動態・機能検査(4D-CTA, CT Perfusionなど)〕であり,装置の買い換えなしで現存の64列検出器(VCT)で使用可能である。開発者の村上氏は,腹部や頭部,頭頸部,胸部の4次元CTAや胃蠕動運動の画像の特長について,さらに,血流の速い腫瘍の濃染状態を時系列的に観察できる動脈相にVHSを用いた肝ダイナミック検査の有用性について解説した。また,村上氏がGE社と共同開発した新しい肝血流解析ソフトウエア(CT Perfusion 解析ソフトウエア)の原理と有用性を紹介し,パーフュージョンCTがいよいよクリニカルユースの時代に入ったと述べた。


●問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン(株)
広報
TEL 042-585-9249
http://www.gehealthcare.co.jp