「第3回大腸3次元CT研究会」（事務局本部：吉田広行氏，永田浩一氏・ハーバード大学医学部，マサチューセッツ総合病院，日本事務局：遠藤俊吾氏・昭和大学横浜市北部病院消化器センター内）が2010年1月24日（日），ホテル西洋銀座（東京）にて開催された。

　わが国の大腸がん患者が急増している状況下，大腸がん検診の受診率向上ならびに早期発見を進めることが急務となっている。近年，急速に進歩した多列CTを用いる大腸3D-CT検査（仮想内視鏡検査，CT Colonography : CTC）が新しい大腸がん検査法として注目され，米国ではすでにいくつかの多施設共同臨床試験を経て，2009年はじめに大腸がん検診ガイドラインに記載され，欧米では現在も複数の臨床試験が進行中である。そこで，大腸3次元CT研究会では，わが国における大腸3D-CT検査のエビデンスを確立し，スクリーニングも含めた臨床応用の実現をめざして，全国12施設が参加する日本初の多施設共同臨床試験（JApanese National CT colonography trail：JANCT）を2009年秋から開始した（詳細はこちらへ）。

　本研究会にはJANCT参加施設を中心に約40名が参加し，JANCTを円滑かつ適切に進めるための発表と意見交換が行われた。前半の特別講演，研究会会議の後，顧問会として，外科，消化器内科，放射線科の3名の顧問の挨拶があった（表1参照）。JANCTは，消化器科や放射線科など臨床科の枠を越えて連携することを目指している。いずれの顧問も，大腸3D-CT検査の重要性を強調し，前処置法や画像表示法などの技術的進歩と普及を望みたいと述べた。

　最後に，事務局本部のマサチューセッツ総合病院・吉田広行氏から，JANCTの現状説明と質疑応答が行われた。吉田氏は，大腸がんおよび大腸3D-CT検査の欧米と日本における歴史と現状を解説し，なぜJANCTか？について，改めて説明した。JANCTは開始以来順調に症例登録数を積み重ねており，2010年1月末現在で三桁に達したという。

　JANCTは2010年秋頃には症例登録が終了し，年末までに最終的なデータ解析を行って，2011年初頭には学術専門誌に最終結果を発表するというスケジュールで進んでいる。今後も，臨床試験の質を高めるための定期的な意見交換の場として， 4〜5月頃に第4回大腸3次元研究会を開催する予定とのことだ。

開会挨拶
マサチューセッツ総合病院　吉田広行

特別講演
「大腸がんスクリーニング検査の腸管前処置−内視鏡，造影X線からCT-Colonographyまで−」
大船中央病院 特別顧問　上野文昭

研究会会議
テーマ「大腸3D-CT検査の腸管前処置のコツとピットフォール」
司会　北海道社会事業協会小樽病院　平山眞章，マサチューセッツ総合病院　永田浩一

演題1 「JANCTに参加して、〜自治医大の現状〜」　 自治医科大学 放射線科　歌野健一

演題2 「JANCTの円滑な遂行のための工夫」　 長崎県 上五島病院 内科　本田徹郎

演題3 「JANCTの登録症例における大腸洗浄度の検討」　 北海道消化器科病院 内科　加藤貴司

演題4 「炭酸ガス自動注入器に関する検討」　 北海道消化器科病院 放射線科　高林健

演題5 「腸管前処置の評価と読影におけるピットフォール」　 マサチューセッツ総合病院 放射線科　永田浩一

総合討論

顧問会
ご挨拶　癌研有明病院 メディカルディレクター・名誉院長　　武藤徹一郎
ご挨拶　金沢大学 放射線科 教授　　松井修
ご挨拶　慶應義塾大学 消化器内科 教授　　日比紀文

多施設共同臨床試験の現状のご説明と質疑
司会　昭和大学横浜市北部病院 消化器センター　遠藤俊吾，マサチューセッツ総合病院　吉田広行

（敬称略）