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取材報告

2010
マイクロソフトが医療機関経営者向けにシンポジウムを開催

医療機関経営者などが参加したシンポジウム会場
医療機関経営者などが
参加したシンポジウム会場

大井川和彦 氏(執行役常務パブリックセクター担当)
大井川和彦 氏
(執行役常務パブリックセクター担当)

伊藤元重 氏(東京大学)
伊藤元重 氏
(東京大学)

木田康雄 氏(業務執行役員パブリックセクターテクノロジーソリューション本部長)
木田康雄 氏
(業務執行役員パブリックセクター
テクノロジーソリューション本部長)

シンポジウムでのディスカッション
シンポジウムでのディスカッション

  マイクロソフト株式会社は6月30日(水),東京コンファレンスセンター品川(東京都品川区)において,医療機関の経営者を対象としたシンポジウム「医療の経営向上に向けてITの効果的活用とは」を開催した。マイクロソフトは医療をはじめとしたヘルスケア分野において,「ソフトウェアとサービスの革新を通じて,世界中の健康医療を向上させること」を目標に掲げている。この目標のもとに,国内でも「Microsoft Office SharePoint Server」などを用いたソリューションを医療機関に提供している。また,医療ITのニーズを可視化して,現場のニーズにあった医療情報システムを構築できるような環境づくりをめざし,病院でCIO(Chief Information Officer)を務めるような医療ITの専門家たちによるCHART(Connected Health A Round Table)を組織するなど,医療分野におけるIT普及のための活動を進めてきた。今回のシンポジウムは,経営者の視点から,医療機関が抱える諸問題をITを活用して解決していくというねらいから設けられた。実際に同社のソリューションを取り入れ,病院経営に成果を上げている施設の経営者・管理者がパネリストとして参加し,パネルディスカッションなどが行われた。

  開会に先立ち,同社の執行役常務パブリックセクター担当の大井川和彦氏が挨拶した。大井川氏は,日本国内で展開している医療分野への取り組みについて,ライセンスやマーケティング,ソリューション事業のほか,CHARTのようなコミュニティ活動に力を注いでいると述べた。

  大井川氏の挨拶に続き,東京大学大学院経済学研究科教授の伊藤元重氏による基調講演が行われた。テーマは「医療産業のイノベーション」。伊藤氏は,世の中が変わるときは,常識が変わるときであるとし,現代はITが金融,流通,政治,教育を大きく変えているとして,医療ITも例外ではないと説明した。その上で,医療は日本の財政にもかかわる重要な問題であると述べた。さらに,今後の医療を考えると,IT,財政,少子高齢化,グローバル化がキーワードになると力説し,メディカルツーリズムなど産業面からの医療のあり方などについて触れた上で,医療分野にITが普及していくことによって,いままでの医療の仕組みが変わっていくだろうと持論を展開した。

  続いて,同社の業務執行役員パブリックセクターテクノロジーソリューション本部長の木田康雄氏が,医療機関向けのソリューションを紹介した。木田氏は,医療が抱える課題として,医療の質の向上,地域医療連携の実現,健全な病院経営の3点を挙げた。そして,医療の質の向上のための院内コラボレーションの充実を図る院内ポータルとして福井県済生会病院の事例や,国立成育医療センターの院内コミュニケーションの事例を解説した。また,地域医療連携の実現のためのソリューションとして倉敷中央病院の地域連携パス,健全な病院経営のための情報漏えい対策の取り組みとして聖路加国際病院の事例を紹介した。さらに,木田氏はクラウドコンピューティングのためのオンラインサービスについても説明を行った。

  この後,「医療経営向上に向けてのIT活用法」をテーマにしたパネルディスカッションが設けられた。ファシリテータは東京医科歯科大学大学院医療経済学分野教授の川渕孝一氏。パネリストは表1のとおり。相田氏からは,倉敷中央病院における地域連携パスなどの地域医療連携の取り組みとDPCデータ分析によるコストマネジメントについて報告があった。また,神野氏は,恵寿総合病院を中心とした,診療所,急性期,慢性期,介護福祉施設での患者の生涯を通じて診療情報を扱っていくための方策が紹介された。堺氏は,バランストスコアカードによる見える化についての取り組みを報告した。公立病院の経営者である平川氏は,自治体病院におけるITを活用した経営について解説した。一方,民間病院の経営者である星氏は,ITに頼り切らず,研修会出席カードなどにより,職員の意識改革に取り組んだ事例を披露した。正木氏は,院長補佐という立場から,IT導入の前にまずマネジメントがありきであり,特に事務部門のマネジメント意識が経営改善には重要だと述べた。また,宮島氏は,ワークフローの効率化と経営パラメータをリアルタイムに近い状態で可視化する手法を紹介した。森川氏は,全体最適をめざした院内のITガバナンスなどの取り組みについて報告した。この後,パネリストらの討論が行われ,医療にとっての経営とは何かといったことが話し合われた。そして,最後に大井川氏が,院内の情報を見える化して,組織の個々が病院経営に貢献できるようなソリューションを提供していきたいと述べ,シンポジウムは終了した。

表1 シンポジウムパネリスト
相田俊夫 氏(財団法人倉敷中央病院副理事長)
神野正博 氏(社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)
堺 常雄 氏(聖隷浜松病院院長)
平川秀紀 氏(山形市立病院済生館館長)
星 北斗 氏(財団法人星総合病院理事長)
正木義博 氏(済生会横浜市東部病院院長補佐)
宮島孝直 氏(津山中央病院副院長)
森川富昭 氏(徳島大学病院病院情報センターセンター部長病院教授)

●問い合わせ先
マイクロソフト株式会社
マイクロソフト カスタマー インフォメーションセンター
TEL 0120-41-6755