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取材報告

2010
第7回 血管バイオメカニクス研究会 開催
―CAVIの臨床的有用性が検討される―

会場風景
会場風景

代表世話人:折茂 肇氏(健康科学大学)
代表世話人:折茂 肇氏
(健康科学大学)

事務局:白井厚治氏(東邦大学医療センター佐倉病院)
事務局:白井厚治氏
(東邦大学医療センター佐倉病院)

事務局:高田正信氏(富山逓信病院)
事務局:高田正信氏
(富山逓信病院)

林 紘三郎氏(岡山理科大学)
林 紘三郎氏
(岡山理科大学)

松田文彦氏(京都大学大学院医学研究科附属ゲノム医学センター)
松田文彦氏
(京都大学大学院医学研究科附属
ゲノム医学センター)

Roland Asmar氏(Hopital Hotel Dieu, Paris)
Roland Asmar氏
(Hôpital Hôtel Dieu, Paris)

  第7回血管バイオメカニクス研究会が,2010年11月6日(土),THE GRAND HALL(東京都港区)にて開催された。共催は,血管バイオメカニクス研究会とフクダ電子(株)。代表世話人は折茂 肇氏(健康科学大学学長),事務局を白井厚治氏(東邦大学医療センター佐倉病院教授)と高田正信氏(富山逓信病院院長)が務めた。同研究会は,わが国で生まれた新しい動脈硬化指数である心臓足首血管指数(cardio ankle vascular index:CAVI,キャビィ)の認知向上と,臨床的有用性の検討を目的とし,年に1回開催されている。CAVIは,大動脈を含む心臓から足首までの動脈の硬さを反映する指標で,この値が高くなるほど動脈硬化の進行が疑われるとされる。

  開会にあたり,折茂氏が挨拶に立ち,「今回は海外からも13名の参加があり,CAVIがグローバルな動脈硬化指数として認知されつつあること,また,国内外の研究者の架け橋となっていることに感銘を受けている。日本発のCAVIがより普及し,グローバルスタンダードとなることを期待している」と述べた。

  今回は,CAVIの臨床的有用性に関する研究を中心に,10題の口演と15題のポスターセッション,6題の海外口演が行われ,参加者は熱心に耳を傾けた。また,松田文彦氏(京都大学大学院医学研究科附属ゲノム医学センターセンター長)による「コホート研究の報告:地域に根ざした新たな予防医学の試み―長浜コホート研究におけるCAVIの活用―」では,滋賀県長浜市の協力を得て2005年から始まったゲノム疫学コホート研究の概要と,新たな試みとして実施されたCAVIを用いた動脈硬化度測定の解析中のデータが紹介された。さらに,Roland Asmar氏(Prof., Hôpital Hôtel Dieu, Paris)による海外セッション「Measurement of arterial stiffness:use of the CAVI index and the pulse wave velocity. The French Experience」も行われ,それぞれの口演,セッション後の質疑応答では,活発に意見が交わされた。

  また,今回注目されたプログラムSpecial Memorial Lectureでは,スティフネスパラメータβ(超音波エコーによる頸動脈等の口径変位と血圧から,頸動脈等の動脈硬化度を見る指標)の開発者である林 紘三郎氏(岡山理科大学工学部生体医工学科教授)より「血管バイオメカニクスの基礎と応用」と題した講演が行われた。林氏はまず,自身の過去の研究がCAVIとして臨床の現場で役立っていることへの喜びを示し,開発の経緯と,血管弾性に対する臨床医と理工学研究者の意識の違いについて説明した。機械工学を研究していた林氏は,新しく脳動脈瘤に関する研究を始めるにあたり,当時,血管の力学的性質について定量的に使えるデータがなかったことから,基本的な血管バイオメカニクスを研究する必要に迫られてスティフネスパラメータβの数式を導き出したと,開発の経緯を述べた。そして近年,白井氏らが,そのスティフネスパラメータβを,速度と容積弾性率の式を使って算出し,臨床的に有用な血圧に依存しないCAVIを開発したと説明した。林氏は,CAVIの臨床的有用性を認めた上で,理工学的見地から,弾性率の変化がそのまま材質の変化(血管の硬化)となるかを研究したところ,血管の厚さの増大が,血管が硬化したかのように見えることがわかってきたと述べ,データを見る際には,CAVIの算出に使う血管口径に,短期間で増減する血管の厚さも含まれていることを考慮する必要性を示唆した。

  次回の第8回血管バイオメカニクス研究会は,2011年11月5日(土)に開催される予定である。

ポスターセッション1
ポスターセッション1
ポスターセッション2
ポスターセッション2
血圧脈波検査装置(CAVI/ABI)(フクダ電子(株)社製)
血圧脈波検査装置(CAVI/ABI)
(フクダ電子(株)社製)
会場では熱心な議論が交わされた。
会場では熱心な議論が交わされた。

●問い合わせ先
フクダ電子(株)
血管予防営業部
深谷(フカタニ)
TEL 03-5684-1423