インナビネット特集 インタビュー
ザイオソフト株式会社取締役社長 山村雅夫 氏

モダリティの高機能化に伴い,画像診断におけるデータ量は飛躍的に増えており,ワークステーションの担う役割も重要性を増しています。さらに,フィルムレス化により,医療機関内の各所でも3D画像を見たいというニーズが高まっているほか,地域医療連携や遠隔画像診断の広がり,クラウドコンピューティングの登場などを背景に,ワークステーションの位置づけは大きく変わりつつあります。そこで,インナビ・インタビューでは,「ziostation」を中心としたワークステーションとソリューションを手がけるザイオソフト(株)社長に6月1日に就任した山村雅夫氏に,同社の製品開発をはじめとした今後の事業戦略についてお話をうかがいました。


● 6月1日に社長に就任されて以来,精力的に活動していますね。

  社長就任にあたり,社内・社外に対して新しい体制づくりを進めることを打ち出したのですが,社外を回る機会も多く,忙しい日々が続いています。当社の営業パートナーであるアミン社はもちろん,新たなソリューションを提供するために,各モダリティメーカーやPACSメーカーのトップの方々ともいろいろなお話をさせてもらっています。

● 新しい体制づくりのねらいは何でしょうか。

  もともと当社は高い技術力を持っており,その技術の蓄積があります。一方で,現在のワークステーション市場は,ユーザのニーズの多様化が進んでいるとともに,メーカー側の技術開発が熾烈になってきています。このような状況だけに,われわれとしてもユーザのニーズを素早くくみ取り,開発に生かして,その製品で満足度を上げていくことが重要です。また,フィルムレス化が進んでいるので,従来のユーザ以外に,医療機関内で幅広く使用していただけるようなソリューションを提供できるようにしたいとも考えており,ビジネスの幅を広げていくつもりです。ただし,闇雲に拡大するわけではなく,われわれの持つ技術を生かせるチャンスがある分野を積極的にねらっていきたいと思っています。そのための体制づくりに取り組んでいくということです。

● どのような組織体制になるのでしょうか。

ザイオソフト株式会社取締役社長 山村雅夫 氏  一番大きなところは,新しい事業を展開する営業推進,事業推進のサポート体制をつくることです。さらに,従来の縦割りの組織を見直してスリム化し,開発,営業,マーケティング,サービスの各セクションが横の連携をとり,すぐに情報が行き渡るようにして,迅速な対応ができるようにしました。組織をスリム化したことで,社内のコミュニケーションがいままで以上に良くなりますし,経営の効率化が図れます。米国も同様の体制としており,グローバル化を図る上では,このような組織をベースに進めていきたいと考えています。

● これまでの手応えはいかがでしょうか。

  かなり感じています。営業パートナーのアミン社のご理解もいただき,今年の売り上げも上方修正しました。また,複数の企業から今後の新しい展開についてのご相談もいただいています。当社の技術力と組織力の両輪がうまく機能して事業を前進させていくことで,多くの企業からwin-winの関係が築けるとの期待感を持っていただいています。

● 技術力の高さがザイオソフトの特色ということですが,それを今後どのように製品に生かすのでしょうか。

  これまで当社は主にCT用の画像処理・解析アプリケーションを手がけてきましたが,われわれの技術は,CT以外の領域でも生かすことができるものです。例えば,MRIのアプリケーションや,医療機関内での画像処理のソリューションが考えられます。MRIに関しては今後3Tなど新しい機種により市場拡大が期待されますが,当社ではユーザのワークフローや使いやすさ,さらにはユーザの目的用途にあったプロトコルを自由に定義できるように,よりきめ細かな要求に対応します。また,当社が現在展開している「VersaWeb」や「zioTerm 2009」といったビューワ,iPad,iPhoneでの画像処理技術を用いて,PACSメーカーとの協業も見据えながら,医療ソリューションとして提供します。

● 具体的にはどのような製品を展開していくのでしょうか。

  新しい体制づくりの動きと合わせる形で,9月に新製品,「ziostation 2」をリリースします。これは,いままでの画像処理技術を格段に改善しました。骨除去,血管抽出といった自動抽出機能などを強化しています。さらに,当社で開発した次世代の要素技術である“PhyZiodynamics”の技術の一部を採用しています。他社にはない画期的なアルゴリズムが搭載され使いやすくなっています。
  また,従来に比べて操作性やユーザインターフェイスも改善し,簡単にカスタマイズできる“カスタマイズパレット”を搭載するなど,ユーザの操作性を徹底的に見直しています。例えば,画像処理のプロトコルは用途ごとに異なりますが,ziostation 2では,“目的別プロトコル”で用途や検査ごとにプロトコルを用意しました。さらに,手順に従って容易に画像処理・解析が可能な“クリニカルガイド”機能を搭載しているので,ワークステーションを使い慣れていないユーザでも簡便に操作できるようになっています。このほか,事前に画像処理内容を登録することで,検査後すぐに必要な画像が得られる“自動前処理”を搭載しました。MRIのアプリケーションも充実させており,心機能解析,心筋パフュージョン解析,遅延造影解析などMRIの心臓検査をフルラインナップしています。CTでは肺野領域のCOPD(慢性閉塞性肺疾患)解析も可能になりました。

【画像をクリックすると拡大します】
ziostation2 3D解析
ziostation2 3D解析
MR心機能解析
MR心機能解析
MR心筋パフュージョン解析
MR心筋パフュージョン解析
MR遅延造影解析
MR遅延造影解析
CTルート解析A(肺野領域)
CTルート解析A(肺野領域)

● 新技術“PhyZiodynamics”の特徴についてお聞かせください。

  PhyZiodynamicsは,スーパーコンピューティング技術に基づいて当社が独自に開発したもので,大量の医用画像データを的確に処理する新技術です。あらゆる画像に対応可能で,非常に応用範囲の広い要素技術です。今後の研究開発により,いままでの画像診断を根本的に変えてしまうような革新的な技術だと思っています。
  PhyZiodynamicsは画像の局所的な形状をすべて計算していますので,対象物の動きの方向や移動量を予測でき,正確な動きを再現できます。これまでの画像技術では困難だった心臓や肺など複雑な動きをする画像にも応用できます。さらに,最適な画像の位置合わせが可能になり,目的とする対象領域が的確に抽出できたり,画像フレームを正確に予測することでノイズ軽減が期待できます。CT検査の被ばく低減などにもつながるのではないかと考えています。また,対象の詳細な動きを見たいという術前のシミュレーションにおいても利用できる可能性があります。さまざまな用途が考えられ,いま日本や米国のトップレベルの研究機関と共同で臨床応用に向けた研究を進めています。各方面から,高い期待をしていただいています。

● そのPhyZiodynamicsを搭載した製品がこれからの主力になっていくというわけですね。

  ziostation 2ではPhyZiodynamics技術の一部をすでに採用しています。例えばCTやMRIの心臓解析では,これまでマニュアルで行っていた心臓の内壁,外壁の輪郭を自動的に抽出することが可能になりました。今後,先に述べた研究や臨床の成果をもとに,この技術を応用したさまざまなアプリケーションを考えています。近々では,肝臓の解析機能に応用されます。4Dだけでなく2D,3D画像にも利用でき,しかも対象物を限りません。今後この技術を使用したアプリケーションを開発・製品化していきます。

● ワークステーションの市場は非常に競争が激しくなっています。

  厳しい経済状況の中でも,医療機関内のIT化はかなり積極的に進められています。こうした状況は,われわれのようなソフトウエアやシステムを手がける企業にとって大きなチャンスだと言えます。そのため新たに参入する企業も増えていますが,われわれには技術の蓄積があります。その技術を市場に受け入れられるように製品化すればよいわけです。開発に大きなエネルギーを注がなくても,ユーザのニーズをしっかりと開発にフィードバックすれば,短期間で優れた製品を提供できます。特に現在は,医師をはじめとした医療従事者の業務負担が増えている状況なので,その負担を軽減することにつながるような製品を提供していくことが重要だと考えています。
  また,現状では,モダリティのコンソールやPACS自体に画像処理機能が搭載される方向にあり,いままでのワークステーションの領域と重なる部分が出てきています。しかし,Area Detector CTやDual Source CTの登場で,画像データ量は従来よりもさらに膨大になっており,複雑な画像処理が求められています。われわれの強みは長年3D画像処理に特化したソフトウエアを開発してきたところにあります。今後さらに画像は,高解像度化し,時間軸を含んだ大容量データとなります。実際,当社は脳の4Dイメージングのアプリケーションをいち早く開発し,ユーザ検証が始まっています。一方,ziostation 2では目的別プロトコルやカスタマイズ機能によって,ユーザワークフローに柔軟に対応でき,しかも簡単に使えるようになるため,放射線科はもちろん,診療科などでも活用してもらえるはずです。より高度な画像処理とユーザの立場に立った使いやすいソフトウエアで,当社の付加価値は高まると思います。

● 今後,市場を拡大していくためには,どのような展開をお考えですか。

ザイオソフト株式会社取締役社長 山村雅夫 氏  日本だけでなく,米国でも展開を始めています。米国にも営業と開発のスタッフがいます。米国のワークフロー技術と日本の高画質・高精度な画像処理と双方の良い点を製品に生かすことができます。また,米国内の主要な大学や有力な病院の放射線科や循環器科に,われわれの製品が採用されています。海外市場でもだいぶ当社の認知度が上がってきたので,今後は米国,ヨーロッパ,オーストラリア,インド,中国市場などで,代理店あるいはモダリティメーカーと協業してビジネスを展開し,グローバル化を進めていくつもりです。
  さらに,ビジネス分野としては,CTだけでなく,MRIやAngioなどの分野でも画像が高解像度,複雑化していますので,当社の技術を応用すれば,いままでにないアプリケーションの開発や,医療分野で新しい市場を開けると思っています。
  最近,日本でも米国でも大規模病院と連携する中小規模病院で3D画像を見たいというニーズが高まっています。しかし,これらの施設の多くは大規模病院の放射線科に依存していて,直接画像を見ることができません。そこで,当社のVersaWebやすでに3000名以上のユーザが利用しているzioTerm 2009とiPhone,iPadのようなクライアントビューワを組み合わせたソリューションにより,大規模病院,中小規模病院それぞれに最適な環境を提供できます。放射線科以外の診療科で,患者説明などにワークステーションを使いたいというニーズが増えていますから,こうした医療システムソリューションを手がけて市場拡大をしていきたいと思います。

● フリーソフトのzioTerm 2009は昨年話題を呼びましたが,その後の反応はいかがでしょうか。

  現在は,教育・研究用として提供しており,大学の講義や,若手の先生方の研究目的など,すでに3000名を超えるユーザに利用していただいています。今後は,われわれが提供するソリューションの中で,どのような位置づけにするかを考えています。

● 医療の分野にも広まりつつあるクラウドコンピューティングへの対応はいかがでしょうか。

  当社では,すでにクラウドコンピューティング用のシステムを開発しており,どこにいても画像を見ることのできる技術には十分対応できます。それぞれの施設ごとにニーズや予算は異なるので,今後は,これらの技術をユーザのニーズに合ったソリューションとして提供していくことが重要だと考えます。例えば画像の表示端末を従来のコンピュータだけでなく,いろいろ選べ─iPhoneやiPadのような端末で─どこにいても,必要とする画像を観察できるような要望にも応えることができます。

● インナビネットの利用者に向けてメッセージをお願いします。

  先ほど申し上げた技術力と組織力の両輪で,新しい技術を開発するとともに,ユーザの声を素早く製品にフィードバックして,使いやすく,良いシステムづくりをめざしていきたいと思います。そのためにもマーケティングにも取り組んでおり,Webサイトなどを活用して,ユーザの皆さまに積極的に情報を発信していきます。これからのザイオソフトにご期待ください。

ザイオソフトWebサイト http://www.zio.co.jp/
(2010年7月7日(水)取材:文責inNavi.NET)

◎略歴
1980年広島大学工学部卒業。82年広島大学工学部情報システム修士号取得。富士ゼロックス株式会社勤務を経て,95年にEFI, Inc.に入社。同社ソフトウエア開発ディレクター,シニアバイスプレジデント&ジェネラルマネージャを歴任後,2008年にザイオソフト株式会社取締役副社長,Ziosoft Inc. CDO。2010年6月に取締役社長に就任。

1980年 広島大学工学部卒業
1982年 広島大学工学部情報システム修士号取得
1982年 富士ゼロックス株式会社入社
1991年 同社ソフトウエア開発マネージャ
1995年 EFI, Inc 入社,ソフトウエア開発マネージャ
1998年 同社ソフトウエア開発ディレクター
2000年 同社シニアバイスプレジデント&ジェネラルマネージャ
2008年 ザイオソフト株式会社入社,取締役副社長 / Ziosoft Inc. CDO
2010年 同社取締役社長に就任

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