Centricity PACS × 日本大学病院
超音波検査のRaw dataをPACSサーバに保存することで精度の高い統合画像診断を実施 〜地域医療連携における超音波センターをめざしデータを最大限に活用できる環境を構築〜

2015-4-6

GEヘルスケア・ジャパン

PACS


LOGIQ E9のVolume Navigationを使用した針生検では,磁気センサーの情報もPACSに保存して次回検査時に利用

LOGIQ E9のVolume Navigationを
使用した針生検では,磁気センサーの情報も
PACSに保存して次回検査時に利用

2014年10月,旧病院の近隣に新築移転した日本大学病院は,超音波診断に力を入れているのが特色の一つである。その一環として,効率的で質の高い超音波診断を行うために,GEヘルスケア・ジャパンの「Centricity PACS」を導入。超音波検査のRaw dataをサーバに保存し,検査後も画像処理できる環境を構築した。一般的に,超音波検査のデータは,PACSに静止画だけを保存する運用が中心であるが,Raw dataをいつでも扱えるようにしたことで,画像処理や過去画像との比較が容易に行え,精度の高い統合的な画像診断が可能になった。Centricity PACSでのRaw data保存の意義や運用の実際について,同院消化器内科医長であり,超音波診断室長を兼任する小川眞広准教授を取材した。

超音波診断の強みをさらに強化した新病院が2014年10月に開院

小川眞広 准教授

小川眞広 准教授

日本大学医学部の付属病院である駿河台日本大学病院は,2014年10月1日から日本大学病院として新たな一歩を踏み出した。新築した施設は,病床数320床の規模を持ち,5つのセンターと21の診療科で構成され,「病院は病者のためにある」という理念の下,高度急性期医療を担う医療機関として機能している。また,建物の4階には健診センターを併設し,早期診断から治療までの診療体制を施設内で構築している。
新病院の特色の一つと言えるのが超音波診断の充実である。同院のあるJR御茶ノ水駅周辺には,大学病院など急性期医療を手がける大規模病院が数多く存在するが,その中にあって,特に力を入れて取り組んでいるのが超音波診断であると,小川准教授は説明する。
「新病院の企画を進める上で考えたことは,当院が強みとしていた超音波診断をさらに強化し,差別化を図ることでした」
同院の超音波診断室では,新病院開院前の2011年度に5150件の超音波検査を施行している。このうち,Bモードだけの検査が1896件,カラードプラを追加したものが1934件,造影超音波を追加した検査が1320件となっている。このほか,肝がんにおける超音波ガイド下針生検,ラジオ波焼灼療法(RFA)も施行している。検査は,日本超音波医学会の超音波専門医の認定を受けている常勤医8名と非常勤医4名が主導して,研修医や臨床検査技師の教育に取り組みながらダブルスクリーナー法で質の高い超音波診断を行っている。小川准教授は,「検査件数は決して多いとは言えませんが,これは1件あたりの検査に時間をかけているためです。当院では,スクリーニングだけでなく,CTとMRI検査後の最終的な確定診断においても超音波検査を施行するなど,質を重視しています。また,ルート確保などに時間がかかる造影超音波検査の件数が非常に多いことも当院の特徴であり,このことも1件あたりの検査時間の長さにつながっています」と,その理由を説明する。
超音波診断を特色としている新病院では,装置のラインナップも充実している。超音波診断室では,GEヘルスケア・ジャパンのポケットサイズの超音波診断装置「Vscan」が14台,CTやMRIの画像とフュージョン表示できる“Volume Navigation”機能を搭載した汎用型の「LOGIQ E9」が2台のほか,「LOGIQ S8」が2台,「LOGIQ 7」と「LOGIQ S6」が各1台あり,他社製も含め8台の据え置き型装置で,スクリーニングから精査までを施行している。
さらに,これらの装置のデータを有効に活用するために,新病院ではPACSにGEヘルスケア・ジャパンの「Centricity PACS」を採用。Raw dataをPACSサーバに保存することで,データを最大限に利用して,質の高い超音波診断を行っている。

超音波検査のデータを最大限に活用できる環境をめざす

同院の超音波診断室では,肝がんなどの肝疾患をはじめ,消化器領域の検査を主に担当している。肝がんは,ウイルス性肝炎,肝硬変などの慢性肝障害に由来するものが多く,従来C型肝炎患者ががんを発症することが多かったが,高齢化とともに近年C型肝炎患者は減少しつつある。一方で,慢性肝障害患者が高齢化し,その後にがんになるケースが増加している。肝がん患者の高齢化が進んだことで,治療が困難な症例も増えており,早期発見とともに低侵襲な治療がいままで以上に求められるようになっている。検査においても同様に,低侵襲性が求められており,簡便に施行でき,患者さんに負担をかけない超音波検査が果たす役割は大きい。小川准教授は,新病院における超音波診断の有用性を生かした検査環境構築のコンセプトを,次のように説明する。
「従来の画像診断では,超音波検査を行ってからCTやMRI検査を施行していました。そこで,当院では,超音波診断装置による精査を追加して,高い時間分解能・空間分解能という長所を生かした統合的な画像診断を行い,診断精度の向上を図ることにしました。また,コンパクトで使い勝手の良いVscanを外来と病棟に配置して,“触診補助マシン”として活用できるようにすることで,“誰でもどこでも超音波検査”ができるようにするとともに,LOGIQ E9などのハイエンドクラスの装置を診断と治療に生かせるような環境をめざしました。特に,Vscanについては,電子カルテシステムといったIT化やモダリティの高機能化などの影響で,若い医師が触診をする経験が不足しがちであることから,患者さんとのコミュニケーションツールとしても積極的に使ってもらいたいと考え,導入しました」
しかしながら,画像データの運用において,一般的に超音波検査のデータはキー画像などの静止画だけがPACSサーバに保存され,動画像などは保存されない。PACSで運用される画像データは,あくまでもCTやMRIが中心であり,超音波画像は参照用としての役割にとどまっていたと言える。同院においても,旧病院のPACSでは,超音波検査は静止画データだけをサーバに保存するという運用であった。そのため,超音波診断室では,後で画像処理を行う必要がある場合,別途用意したハードディスクにRaw dataを保存し対応していた。結果として,ディスク容量の不足や超音波診断装置の更新などにより,ハードディスクを追加で設置していかなくてはならず,データ管理が煩雑になりがちであった。
旧病院では,このような運用を長年続けてきたが,超音波検査データもCTやMRIと同じように,過去画像と比較しながら画像処理を行ったり,条件設定の変更といった調整をしたり,さらには動画像が扱えるようになると利用価値が高まる。超音波診断を新病院の特色と位置づけ,精度の高い診断を行う同院にとって,超音波検査のデータを余すところなく活用できる環境は必須であった。
そこで,新病院のPACS導入に際しては,超音波診断装置から得られるRaw dataをサーバに保存できる環境の構築をテーマにしました。その機種選定の過程で候補に挙がったのが,Centricity PACSである。小川准教授は,「新病院のPACS選定は,放射線科が中心となって行いましたが,超音波診断室としてはRaw data保存を要件に挙げて,放射線科と協議しながら検討を行いました。放射線科としても,全モダリティのデータをPACSサーバに保存することの重要性を理解しており,検討の結果,Centricity PACSの採用が決まりました」と,経緯を説明する。

14台導入されたVscanは外来や病棟で触診補助マシンとして活用

14台導入されたVscanは外来や病棟で触診補助マシンとして活用

 

「快適性」「柔軟性」「信頼性」を実現したCentricity PACS

新病院の開院とともに稼働し始めたCentricity PACSは,海外はもとより国内でもトップクラスの導入実績を有している。日本では,2008年度の診療報酬改定で電子画像管理加算が設けられPACSの導入が進んだが,その中にあって,Centricity PACSは実績を積み上げ,フィルムレス環境の構築に貢献してきた。Centricity PACSの技術的な特長は,「快適性」「柔軟性」「信頼性」という3つのキーワードで表現できる。
快適性を実現する技術として,独自の画像圧縮技術である“Progressive Wavelet”を採用した。画質を劣化させない可逆圧縮によりデータサイズを1/3まで圧縮して保存でき,サーバからビューワまで高速に画像転送する。さらに,ビューワ上に送られる画像を,ハードディスクではなくメモリに展開する“ダイレクトメモリアクセス”により,画面表示までの時間も高速化。ストレスのない読影を行える。また,院内への参照画像の配信はWebベースで行われ,ブラウザ上で動作する「Centricity Web」で参照できる。これにより,電子カルテシステムなどと容易に連携し,PACSで一元管理されている各種モダリティ画像を院内各所から表示させることが可能である。これらに加えて,サーバやアーカイブの二重化やプロアクティブメンテナンスなどにより,診療を止めることができない医療機関の信頼に応える堅牢なシステムを構築できる。
新病院では,Centricity PACSのストレージをRAID 6方式で,短期保存用(Short Term Storage:STS)と長期保存用(Long Term Archive:LTA)の2つに分けて設置している。STSはRAID容量が48TBで,LTAはRAID容量が96TBで1/2〜1/2.5の可逆圧縮により192〜240TB保存できるようにした。超音波検査のRaw dataの保存用として,50TBを想定している。また,データ保存はツーティア方式で行われる。これは,まず検査データがSTSに保存され,一定期間が過ぎるとLTAに移行される。読影や参照の際には,STSにデータがない場合にのみLTAにアクセスして取得することになる。このような運用により,データ量の増加によるサーバ容量の圧迫を最小限に抑え,効率的に管理することが可能となる。
さらに,新病院では,読影ビューワとして,「Centricity Universal Viewer」を採用した。同社が読影効率の向上とワークフローの向上をめざして開発したこのビューワは,読影医のニーズに合わせた画面レイアウト(ハンギングプロトコル)を学習し,次回からすぐに同じ画面レイアウトを表示できる“スマート・リーディング・プロトコル”機能を搭載している。これにより,ハンギングプロトコルを設定し直すことなく,常に最適なレイアウトが表示され,読影作業の効率化を支援する。また,マウス操作を省力化する“ナビゲータ”機能も搭載した。この機能により過去の検査データを容易に検索でき,少ない操作で過去画像との比較読影を行うことができる。ほかにも,Centricity Universal Viewerは,同社のワークステーション「Advantage Workstation」のアプリケーション“Advanced Application”も利用できるという特長がある。クライアント端末に負荷をかけずにサーバサイドでの画像処理を行い,作成した3D画像と2D画像を並列表示するといったことも可能である。
新病院の超音波診断室や放射線科の読影室では,このCentricity Universal Viewerが利用できるようになっている。超音波診断室の統括治療支援読影室では,電子カルテシステム端末のモニタとCentricity Universal Viewer用の高精細モニタを並列して設置しており,読影医はカルテ情報を参照しながら読影する。また,放射線科では,放射線科医がAdvanced Applicationで解析処理などを行い,診断に役立てている。
このように,新病院では,Centricity PACSやCentricity Universal Viewerなどによる画像配信環境を構築したことで,超音波診断室や放射線科,ほかの診療科でも超音波検査のRaw dataを含めたモダリティの画像を供覧できるようになった。すべてのモダリティ画像情報から得られるメリットを診断,治療に有効活用できるようになり,ワークフローの効率化,診断精度の向上につなげている。

Centricity PACSでのRaw data保存による統合画像診断環境の概念

Centricity PACSでのRaw data保存による統合画像診断環境の概念

 

Raw data保存により画像診断における“扇の要”に

超音波診断室では健診において,まず検査者が検査を施行するとともに,スクリーナーとして所見を作成する。異常が見つからない場合は,超音波画像の静止画を25ショット,Centricity PACSに保存するが,精査が必要と判断した場合はRaw dataも保存する。その所見に基づいて,超音波専門医が二次読影を行うが,異常が見つかった症例については静止画だけでなく,Raw dataを展開して読影する。精査の場合も,エラストグラフィや造影超音波検査,超音波ガイド下針生検も含め,Raw data保存を行っている。
Raw dataをCentricity PACSに保存することにより,従来の静止画保存ではできなかったゲインやダイナミックレンジ,time gain compensation(TGC)のパラメータ調整が可能になる。また,検査中に超音波診断装置から過去の検査データを呼び出して,施行中の検査の画像と同じ断面を速やかに並列表示するといったこともできる。さらに,異なるデータを重ね合わせるハイブリッド表示やaccumulationなどの画像処理にも対応する。エラストグラフィにおいては,検査後に任意で設定したROIのelasticity indexを表示したり,2か所のelasticity indexの比をグラフ表示したりもできる。ほかにも,造影超音波検査では,time intensity curve(TIC)で造影信号を自動追従して,信号強度の変化を観察するといったことが行える。
このように,検査を終えた後からでも必要に応じて画像処理できるのがRaw dataの最大のメリットである。小川准教授は,「従来のように静止画しか保存していない場合,CTやMRIで描出されていた病変が超音波画像になかったら,検査を再度行うといったことがありました。それがRaw dataを保存することによって,パラメータの変更などの画像処理をして詳細に観察できるようになり,検査のやり直しなどの無駄を減らせます。また,過去データと比較しながら検査を行えるので,微細な変化を見逃すリスクも低減します。加えて,過去の動画像と比較表示することにより,患者さんにわかりやすい説明もできます。Raw data保存により,超音波検査が画像診断における“扇の要”の役割を果たし,無駄な検査を減らして生産性を上げるだけでなく,患者さんの負担を減らすことになるのです」と述べる。
さらに,Raw data保存は,超音波検査が持つ定量性と再現性という課題の解決にもつながる。小川准教授は次のように説明する。
「エラストグラフィは,検査者によって弾性率などの計測値が異なってしまうことがありましたが,Raw dataから測定できるため,後から検証して,より正確なものへと修正することが可能です。検査結果の客観性を高め,精度を高くすることができるのもメリットだと思います」
小川准教授は,日常診療においても,治療を終えた症例などを再度検証するためにRaw dataを用いている。データから診療に有用な情報を画像処理を行いながら確認し,研究や学会発表に役立てている。このように,後からデータを検証して,診断や治療結果を見直すことも,質の高い超音波診断へと結びついている。
超音波検査のRaw data保存の恩恵を受けているのは,超音波診断室だけではない。CTやMRIの検査画像を読影する放射線科の読影医や他科の医師も,超音波画像を参照する機会が増えている。読影レポートと併せて動画像などを参照したり,患者説明に利用したり,旧病院の時よりも超音波画像を診療に用いるケースが増え,病院全体での診療の質の向上にもつながっている。

PACSでの一元管理によって,CTやMRIの画像との並列表示や過去画像との比較が容易になり,精度の高い診断,治療を実現

PACSでの一元管理によって,CTやMRIの画像との
並列表示や過去画像との比較が容易になり,
精度の高い診断,治療を実現

Centricity Universal Viewerで読影を行う超音波診断室内の統括治療支援読影室

Centricity Universal Viewerで読影を行う
超音波診断室内の統括治療支援読影室

 

地域医療連携における超音波センターとしての役割をめざす

新病院の開院から約半年が過ぎ,超音波検査のRaw data保存が進む中で,小川准教授は改めてその重要性を実感している。
「従来,超音波検査は生理部門に組み込まれ,PACSでデータ管理していない施設も多くありましたが,超音波検査のRaw dataを保存し,それを活用することによって診断の精度が高まり,その後の治療法にも影響するといっても過言ではありません。メリットを最大限に生かすためにも,ほかの放射線部門の検査画像とともに,PACSで一括管理することが重要です」
新病院では,今後も検査から治療までの体制が整った超音波診断室の特色を発揮しながら,無駄を省いた生産性の高い診療を展開していく。そして,地域医療連携においても,周辺の診療所や病院の超音波検査を担う存在をめざす。地域の超音波センターとなり,連携先の医療機関に超音波画像を配信することで,地域住民に効率的で質の高い医療を提供する。超音波検査のRaw data保存は,その実現に向けた第一歩だと言えよう。

*販売名称:セントリシティ・ユニバーサル・ビューワ
 医療機器認証番号:225ABBZX00019000号

*汎用超音波画像診断装置  LOGIQ E9
 *LOGIQ E9 with XDclearはLOGIQ E9の類型です 医療機器認証番号:220ABBZX00177000号

*汎用超音波画像診断装置  LOGIQ S8
 医療機器認証番号:222ABBZX00199000号

*汎用超音波画像診断装置  LOGIQ 7
 医療機器認証番号:21300BZZ00082000号

*汎用超音波画像診断装置  LOGIQ S6
 医療機器認証番号:217ABBZX00014000号

*汎用超音波画像診断装置 Vscan
 医療機器認証番号:第221ABBZX00252000号
 “Vscan”はGeneral Electric Companyの登録商標です

(2015年3月4日取材)

本記事はインナービジョン社がGEヘルスケア・ジャパンの依頼に基づき行った,日本大学病院に対するインタビューを同社の同意を得て編集したものです。
お客様の使用経験に基づく記載です。仕様値として保証するものではありません。

 

●お問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン株式会社 ヘルスケア・デジタル事業本部
〒191-8503 東京都日野市旭が丘4-7-127
TEL 0120-202-021
http://www.gehealthcare.co.jp

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