次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)

2014年5月号

No. 145 先天性心疾患のMRI検査におけるAZE VirtualPlace Plus 雷神の使用経験

西川 彰人(独立行政法人地域医療機能推進機構中京病院統括診療部放射線部)

●はじめに

当院では,2012年12月,心臓MRI検査開始にあたり,フィリップス社製MRI装置「Achieva 1.5T」のアップグレードを行い,32ch SENSE Torso Cardiacコイルを導入した。それと並行して,心臓MRI画像解析ソフトウェアを搭載したワークステーションの導入も行った。ワークステーションの選定にあたっては,解析ソフトウェアの充実,ソフトウェアの使いやすさ,解析処理時間,解析結果の表示方法,院内ネットワークの構築などを総合的に考慮して,「AZE VirtualPlace Plus 雷神」(AZE社製)を導入した。
そこで本稿では,当院でのワークステーション使用例として,先天性心疾患のMRI検査の解析を中心に一部紹介する。

●先天性心疾患のMRI検査

当院には,中京こどもハートセンターが併設されており,先天性心疾患(congenital heart disease:CHD)の拠点病院の役割を担っている。この1年間で当院が実施した心臓MRI検査数は175症例であり,そのうち,CHD MRI検査は75症例である。
CHD MRI検査は,乳・幼・小児期の術後遺残症例における病態・形態の現状把握や,再手術の必要性の判定に威力を発揮している。また,CHD MRI検査の対象となっている疾患は,弁閉鎖不全による逆流や心血管の狭窄による心室負荷からなる疾患,心筋障害を来している疾患,エコー検査で評価が困難な形態の疾患などが挙げられる。
CHD MRI検査においては,cine画像,PC(phase contrast)法によるflow画像,3D whole heart MRA画像の撮像を行っている。さらに,冠動脈疾患を伴う症例では,造影心筋perfusionや心筋遅延造影撮像を行うことがある。

●画像解析・画像構築

1.心機能解析

心室に対し短軸で撮像したcine画像より,左右の心室容量や拍出量,駆出率などの心室機能解析を行う。左心室機能解析に関しては,以前より搭載されているソフトウェア“MRI心駆出率解析”を使用して行っている(図1)。
CHD MRI検査で重要な右心室機能解析には,今回新しく導入されたソフトウェア“MRI右心室解析”を使用している。このソフトウェアの特徴は,1つの画像でROIを設定すると,「全フェーズの同じ位置のスライスにROI作成」のボタンが表示されることである。当院では1スライス30phaseでcine撮像をしているので,ワンクリックで残りの29画像すべてのROIをほぼ修正なしで自動表示することができ,ROI設定の労力軽減に有用な機能となっている。さらに,必要なスライスすべてのROI設定と同時に解析結果も表示されるため,結果確認も容易に行うことができる。このソフトウェアの使用により,解析時間の短縮・解析結果の精度向上と,心臓カテーテル検査では困難な心室容積の測定に威力を発揮している(図2)。

図1 “MRI心駆出率解析”による左心室機能解析

図1 “MRI心駆出率解析”による左心室機能解析

 

図2 “MRI右心室解析”による右心室機能解析

図2 “MRI右心室解析”による右心室機能解析
「全フェーズの同じ位置のスライスにROI作成」()をクリックすることにより,他の画像にもROIが自動表示される。

 

2.flow解析

PC法により,各血管・弁・人工血管のflow画像を撮像し,“MRフロー解析”ソフトウェアにて血流量や拍出量などの解析を行う。ここで,より正確なROI設定を行うことが,より良い解析結果を得ることにつながるため,撮像する際には的確なVENC(velocity encoding)値を設定し,信号強度の高い位相差画像を得ることに気を付けて検査している。
解析はROIの設定のみで瞬時に結果が表示され,逆流率やQp/Qs(肺体血流比)などの比較結果もすぐに確認することが可能である(図3)。
当院のCHD MRI検査では,大動脈,上下大静脈,主肺動脈,左右肺動脈,肺静脈,三尖弁,僧帽弁のflow解析より,正確な血流量測定や短絡血流量の測定結果が得られている。

図3 “MRフロー解析”による上行大動脈の血流量解析

図3 “MRフロー解析”による上行大動脈の血流量解析

 

3.3D表示

3D whole heart MRA画像より,3Dソフトウェアを使用して,大血管や心房・心室の形態把握が容易に行える。3D構築を行う際には,マルチレイヤー機能を使用して色分けをすることにより,全体の血管走行や狭窄などの把握がよりわかりやすくなる(図4)。作成時間もソフトウェア内の数々のツールを使用することにより,短時間で行うことが可能となっている。

図4 3Dソフトウェアによる心・血管3D構築

図4 3Dソフトウェアによる心・血管3D構築

 

●評 価

今回,当院でのCHD MRI検査におけるワークステーションの使用例を一部紹介した。
心臓MRI検査において,ワークステーションでの解析は必須である。CHD MRI検査は,複雑な心・血管系の撮像と解析に時間と労力が必要なため,まだ全国的にも普及していないのが現状となっている。しかし,紹介したVirtualPlace Plus 雷神のMRソフトウェアを使用することで,解析処理時間の短縮と労力の軽減を図ることが可能である。

●おわりに

当院では,他のMRI検査においても新しいソフトウェアの導入により,ワークステーションの使用頻度が増えている。その中でも,“Computed DWI”は,2つ以上のb値からなるDWI画像データを計算することで,任意に設定したb値のDWI画像が得られ,さらにADC mapのボリュームヒストグラム解析も行えることから,前立腺MRI検査でDWIによる病変検出能の向上に大変期待できるソフトウェアとなっている(図5)。また,“ダイナミック4D 解析”ソフトウェアについても,乳腺dynamic MRI検査における解析診断で,ROIを設定するのみで瞬時にtime density curveが得られ,診断に有用なものとなっている。

図5 “Computed DWI”による前立腺DWI画像解析

図5 “Computed DWI”による前立腺DWI画像解析
b=0(a)とb=800(b)の画像からb=2000(c)の画像を作成する。

 

今後はさらに,これらの解析ソフトウェアを使いこなし,画像診断の一助となるように活用していきたいと思う。同時に,さらなる解析ソフトウェアの充実を願い,ワークステーションの有用性が高まることを期待したい。

 

【使用MRI装置】
Achieva 1.5T(フィリップス社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace Plus 雷神(AZE社製)

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