次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)

2014年8月号

No. 148 Sliding MIPビューアを用いた脳動脈瘤の簡易計測

西村 大輔/大塚 忠義(医療法人社団松弘会三愛病院放射線科)

はじめに

当院では2013年4月,新しい外来棟(メディカルモール)がオープンした。従来の病棟を検査棟とし,機能を分けたことで,診療体制の効率化を図っている。これは,(1)早期発見,(2)早期診断,(3)早期治療にさらに力を入れるための整備であり,一人ひとりの患者をより丁寧に診る環境を作った。「小さな病院でも病変を見落とさずに発見するには,精密な検査が欠かせない」と高度な画像診断装置を積極的に取り入れ,早期発見により治療率を高めている。
現在,1.5T MRI装置2台,3T MRI装置1台,64列CT装置1台,320列CT装置1台を保有し,2013年度の検査実績はMRIが1万2339件,CTが1万3845件と数多くの件数を経験している。そのうち,MRIは約35%,CTは約20%を「AZE VirtualPlace 新(あらた)NT」(AZE社製)を用いて,ほぼリアルタイムに画像処理を行っている。症例にもよるが,処理時間は1症例につき,おおよそ5~30分程度である。
本稿では,このワークステーションの機能の1つであるSliding MIPビューアを用いた脳動脈瘤の計測について報告する。

脳動脈瘤

脳動脈瘤は,形態学的に嚢状動脈瘤(saccular aneurysm)と紡錐状動脈瘤(fusiform aneurysm)に分類される。
日本脳神経外科学会の事業として行われた,未破裂脳動脈瘤の全例調査(UCAS Japan)の結果では,6646例の登録を基に解析し,年間出血率は0.64%,つまり未破裂脳動脈瘤を持った人のうち,クモ膜下出血を起こす人は1年間に0.64%であり,瘤が5mm以上の人に限定すると1.1%と報告されている。
経過を追う場合,瘤が拡大,破裂,また脳・神経を圧迫して障害を来すこともあるので,慎重な経過観察が必要で,少なくとも年に一度,または6か月に一度は瘤のサイズの経過を追うことが推奨されている1)
MRAや造影CTAは,動脈瘤の低侵襲的な診断法として有用である。両者は1回のデータ収集であらゆる方向からの再構成画像が作成可能で,動脈瘤と親動脈との関係を詳細に描出できる。MIP(maximum intensity projection)やVR(volume rendering)による三次元表示に加えて,MPR(multi-planar reconstruction)や原画像の詳細な観察が診断に有用である2)

Sliding MIPビューア

脳MRAにおいて動脈瘤に遭遇した際に,瘤のサイズ計測にVRを用いた場合,以前の経過観察の画像と閾値が異なり,計測に誤差が出ることがあった。また,同じデータでも計測を数回行えば,閾値の違いにより誤差が生じることもある(図1)。
一方,横断像の元画像では,動脈瘤の長軸,短軸を設定することが困難なことに数多く遭遇する。
Sliding MIPビューアは,任意方向の直交断面をリアルタイムに作成・表示して画像を閲覧する機能で,主に血管の走行に沿って画像を再構成させながら観察したい時に使用する。
今回,AZE VirtualPlace 新NTに搭載されたSliding MIPビューアを用い,動脈瘤の長軸および短軸を計測することで,閾値の違いによる誤差を最小限にとどめることができるのではないかと考えた。

図1 VRにおける血管径の変化

図1 VRにおける血管径の変化

 

計測方法

当院では,次の手順でSliding MIPビューアによる動脈瘤の計測を行っている。

(1)Sliding MIPビューアを立ち上げる(図2)。

図2 Sliding MIPビューア立ち上げ画面

図2 Sliding MIPビューア立ち上げ画面

 

(2)「カラーマップ/WL設定」から「表示」を選択し,VRを表示する(図3)。

図3 「カラーマップ/WL設定」から「表示」を選択

図3 「カラーマップ/WL設定」から「表示」を選択

 

(3)左ウインドウのMIPを動脈瘤が見えるスライスに合わせる(図4)。

図4 スライス位置合わせ

図4 スライス位置合わせ

 

(4)VRまたはMIPを右ドラッグしながら測定点(動脈瘤)を赤い点に合わせる(図5)。

図5 測定点の設定

図5 測定点の設定

 

(5)VRまたはMIPで動脈瘤の長短軸が見やすいアングルに合わせ,長軸および短軸径を計測する(図6)。

図6 長短軸径の計測

図6 長短軸径の計測

 

まとめ

AZE VirtualPlace 新NTのSliding MIPビューアを用いることにより,閾値の違いによる誤差を最小限にとどめ,VRと同様の角度からの動脈瘤の長軸および短軸径を簡単に計測することができた。

●参考文献
1)脳ドックのガイドライン2014(改訂・第4版). 日本脳ドック学会脳ドックの新ガイドライン作成委員会編, 札幌, 響文社, 2014.
2)井田正博, 青木茂樹, 相田典子・他 : 新版 よくわかる脳MRI(『画像診断』別冊KEY BOOKシリーズ). 東京, 秀潤社, 2004.

【使用MRI】
Ingenia 3.0T(フィリップス社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace新NT(AZE社製)

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