次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)

2016年4月号

No. 168 CT ColonographyにおけるAZE VirtualPlace大腸解析ソフトウェアの活用法

立崎 秀人(医療法人泰仁会 十和田第一病院 放射線科)

はじめに

CT Colonography(以下,CTC)は,大腸内視鏡検査と注腸X線検査の利点を併せ持ち,検査の簡便性と大腸疾患に対する感度の高さから現在多くの施設で取り入れられている。
当院におけるCTCは,2012年8月の開始以降,大腸スクリーニング検査や便潜血陽性に対する二次検査として年間60件程度を施行している。今回,当院のCTCにおいて臨床上有用であった症例を基に,「AZE VirtualPlace新(以下,VirtualPlace)」(AZE社製)の大腸解析ソフトウェアの活用法を紹介する。なお,本稿の大腸病変に対する表現は,当院が依頼する遠隔読影のCT検査読影報告書より引用した。

VirtualPlaceによる大腸解析

当科担当診療放射線技師は,CTC撮影後に大腸解析ソフトウェアにて仮想内視鏡画像(virtual endoscopy:VE),仮想注腸画像(virtual double contrast barium enema:VDCBE),仮想展開画像(virtual gross pathology:VGP)を作成し,3D primary readingによる一次読影を行う。その際,必要に応じVE+MPR画像,マルチレイヤー機能,マルチボリューム機能を使用したVDCBEも作成する。

1.仮想内視鏡画像:VE
VEの直腸から大腸回盲部までの往復経路を観察(fly through)することで,大腸全般のスクリーニングに有用である。粗大病変から5mm程度の小結節まで隆起性病変に感度が高い。
図1は,70歳,女性,便潜血陽性の二次精査として施行した症例である。肛門より29.3cmのS状結腸に,CT値32.3HU,長軸径53.6mmの壁肥厚による強い狭窄が認められる。VEでは肛門側(図1 a),口腔側(図1 b)両方から全周性壁肥厚病変の観察が可能である。さらに,狭窄部より口腔側の観察では,肛門より194cmの上行結腸バウヒン弁付近に壁の肥厚が確認できる(図1 c)。高度の狭窄病変の口腔側にある別の病変もfly throughにて容易に観察できた症例である。

図1 仮想内視鏡画像:VE

図1 仮想内視鏡画像:VE
a:VE,肛門側から(
b:VE,口腔側から(カメラ反転
c:VE,上行結腸の壁肥厚(
d:VDCBE

 

図2は,41歳,男性,検診の便潜血陽性に対し大腸スクリーニング目的で施行した症例である。肛門より12.6cmの直腸に,4.8mm×4.3mm,CT値33.1HUの隆起性病変が認められる(図2 a)。2体位同時観察のVEでは茎の存在(図2 b)と病変部の可動性を認め,Ip病変と鑑別できる。MPR サジタル画像(図2 c,d)でも,その様子は明瞭である。VEの活用で小病変を拾い上げ,その形状,性質を指摘できた一例である。

図2 2体位同時観察画面

図2 2体位同時観察画面
a:VE,仰臥位
b:VE,腹臥位
c:MPR,サジタル画像(仰臥位)
d:MPR,サジタル画像(腹臥位)

 

2.仮想注腸画像:VDCBE
VDCBEは,大腸全体を抽出したVR画像である。大腸概観の観察に適しており,病変部の存在位置を明確にすることができる。
図3は,60歳,男性,大腸がん疑い精査目的にて施行した症例である。肛門より15.8cmの直腸に,長軸径27.2mm,CT値45HU,全周性の壁肥厚がVDCBEで明瞭に観察できる(図3 a)。また,マルチレイヤー機能,マルチボリューム機能により腫瘍や血管,骨の情報を付加することで,解剖学的な病変部の位置が正確に判断できる(図3 b,c)。病変部の側面変形像は注腸X線検査における深達度診断が適合でき(図3 a),仙骨の情報を付加した側面像は直腸病変の部位診断に有用である(図3 c)。直腸(Rs)のapple core signを,VDCBEの作成により位置関係を含め明瞭に描出できた一例である。

図3 仮想注腸画像:VDCBE

図3 仮想注腸画像:VDCBE
a:air image(apple core sign
b:air image 正面像〔マルチレイヤー(上腸間膜動脈,下腸間膜動脈)+マルチボリューム(骨情報)〕
c:air image 側面像(仙骨情報)

 

3.仮想展開画像:VGP
VGPは,大腸粘膜面を短時間で盲点なく観察できる大腸の展開画像である。
図4は,83歳,男性,悪性腫瘍の検索を目的に施行した症例である。肛門より13.1cmのS状結腸に,13.1mm×10.5mm,CT値24.9HUの腫瘍性病変がVEにて確認できる(図4 a)。腫瘍部分は表面不整の隆起性病変と認識できるが,VE+MPR画像による観察で病変+残渣であることが明瞭である(図4 b)。また,腫瘍周囲には5mm前後の小結節が散在するが(図4 c),MIP表示でCT値が300HU前後を示している結節はタギングされた残渣であると証明できる(図4 d)。散見される小結節の中に,CT値38HU,6.2mm×6.0mmのIs病変が確認できる(図4 d〜f)。このような症例においては,VGPとMIP表示の併用で解析作業の効率化を図ることができる。VGPの活用で病変と残渣の存在を分別し,証明できた一例である。

図4 仮想大腸展開画像:VGP

図4 仮想大腸展開画像:VGP
a:VE,表面不整の隆起性病変(
b:VE+MPR画像
c:VGP
d:VGPのカラーMIP表示(CT値:赤300HU〜黒−100HU),残渣の中のIs病変(
e,f:d()のVEとMPRアキシャル画像

 

VirtualPlaceの大腸解析レポート機能

当科では,大腸解析ソフトウェアのレポート機能を使用した解析結果をCTC画像とともにPACS保管している(図5 a)。拾い上げた病変の詳細情報と検査情報(大腸拡張の状態やCO2の量など)を記録保管することで,一次読影の報告やフォローアップスタディの際,前回検査情報として活用できる。
また,フォローアップスタディにおいては,2体位同時観察機能が有効活用できる。通常使用する同一検査内の2体位とは異なり,時系列に沿った患者の同一体位を2体位として比較することで,時間の経過とともに出現した大腸内の変化をとらえやすい。
図5 bは,便潜血陽性フォローアップ目的にて施行した患者の2体位同時観察である(2015年4月と2016年1月施行の仰臥位)。肛門より145cm付近の上行結腸に出現した壁の肥厚が一目瞭然である。図5 cは,2012年の施行時に指摘された直腸隆起性病変フォローアップのため,2016年1月に施行した患者の2体位同時観察である。フォローの病変とは別に,肛門より66.1cmの下行結腸に,前回5mm以下のため拾い上げなかった小結節が今回の検査では6.9mmまで大きくなっていることが,2体位同時観察により容易に確認できる。これらの画像を記録することで,視覚的に説得力のある結果報告となる。

図5 大腸解析レポートと2体位同時比較(時系列)

図5 大腸解析レポートと2体位同時比較(時系列)
a:大腸解析レポートとキー画像
b:2015年(上)と2016年(下)に施行したCTC(仰臥位)の2体位同時観察
c:2012年(上)と2016年(下)に施行したCTC(仰臥位)の2体位同時観察

 

まとめ

大腸解析ソフトウェアのVE,VDCBE,VGPは,それぞれ優れた特性を持ち,それらの活用により精度の高い大腸精密検査が可能となる。また,大腸解析から得たさまざまなデータは,レポート機能の活用により整理され要約された情報として保存ができる。

●参考文献
1)これ1冊でわかる! 大腸CTプロフェッショナル 100のレシピ. 杉本英治監, 永田浩一編, 東京, メディカルアイ, 2015.
2)ワークステーション完全制覇. 畦元将吾, 石風呂 実監, 日本放射線技師会出版会, 2008.

【使用CT装置】
Activion16(東芝社製)
【使用自動送気装置】
プロトCO2L(エーディア社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace 新(AZE社製)

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