次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)

2018年7月号

No. 195 Dual Maskを使用したマスクコピーによる3D-CT画像作成

阿部  駿(JA秋田厚生連秋田厚生医療センター放射線科)

はじめに

当院では「AZE VirtualPlace」(AZE社製)を画像解析に活用しており,整形外科領域のCTでは,VR画像作成で関節面や目的の骨の抽出のためのパーツ分けをルーチンで行っている。さらに,小さい骨折線や細かな変位を見やすくするためには,標準関数ではなく分解能の高い骨用関数で作成する高分解能VR画像が有用であるが,ノイズなどによりパーツ分けが困難になり作成に時間を要する。その解決方法の一つとして,2017年に本連載1)で紹介したマスク画像データを用いて高分解能VR画像を作成する方法があるが,PC上にマスク画像データを保存・展開する必要があり,若干わかりにくい点があった。
今回紹介する“Dual Mask”を使用することで,簡単にマスクコピーを使った高分解能VR画像など3D-CT画像の作成が可能となる。

作成方法

骨の高分解能VR画像を作成する場合は,基準画像に骨用関数,マスク画像に標準関数を選択し,Dual Maskのアプリケーションを起動する。次に,位置合わせ画面で基準画像とマスク画像の位置合わせを行う。画像フィルタのみ変更の場合は,そのまま次に進む。Dual Mask画面にノイズの少ないマスク画像を選択し,骨の抽出やパーツ分けを行い,各レイヤーの下にあるコピーを押すとマスク画像のマスクが基準画像にコピーされるので,骨用関数での高分解能VRが簡単に作成できる(図1)。

図1 Dual Mask操作画面

図1 Dual Mask操作画面

 

位置合わせ機能

Dual Maskのマスクコピー以外の主な機能として,位置合わせ機能とフィルタ機能がある。Dual MaskはFOVやスライス厚が異なる画像同士のマスクコピーも可能である。両画像の位置や大きさが異なる場合は,手動補正や自動の剛体・非剛体補正で簡単に位置を合わせることができる(図2)。

図2 位置合わせ操作画面

図2 位置合わせ操作画面

 

股関節の大腿骨骨頭を抽出する場合,抽出に時間を要する。Dual Maskを使い,拡大再構成した画像をマスク画像にすることで,分解能が高い画像で大腿骨骨頭のみを抽出し,基準画像にマスクコピーすることで簡単に大腿骨骨頭を抽出できる(図3)。

図3 基準画像(a)と拡大再構成したマスク画像(b)

図3 基準画像(a)と拡大再構成したマスク画像(b)

 

下肢3D-CTAにおいて,自動抽出では骨と接する骨盤領域の血管の抽出に失敗する場合がある(図4 a)。このような場合には,単純画像と造影画像をDual Maskで起動し,位置合わせをした後,単純画像で骨のみを除去したマスク(図4 b)を造影画像にコピーすることで,簡単に血管のみのVR画像・MIP画像が作成できる(図4 c)。

図4 マスクコピーを使った骨除去 a:造影CTから自動骨除去を行ったMIP画像 b:単純CTから骨除去したマスクMIP画像 c:マスク画像からマスクコピーした造影CTの基準MIP画像

図4 マスクコピーを使った骨除去
a:造影CTから自動骨除去を行ったMIP画像
b:単純CTから骨除去したマスクMIP画像
c:マスク画像からマスクコピーした造影CTの基準MIP画像

 

画像フィルタ機能

Dual Maskのもう一つの機能として,平滑化やエッジ強調など多数の画像フィルタがある。ワークステーションに骨関数の画像がない場合でも,標準関数から骨用関数と同等のVR画像(図5)やMPR画像(図6)を作成可能である。

図5 大腿骨転子部骨折のVR画像 a:骨用関数 b:標準関数フィルタ適用(ガウスエッジ強調2Level=3) c:標準関数

図5 大腿骨転子部骨折のVR画像
a:骨用関数
b:標準関数フィルタ適用(ガウスエッジ強調2Level=3)
c:標準関数

 

図6 腰椎圧迫骨折症例のMPR画像 a:骨用関数 b:標準関数フィルタ適用(ガウスエッジ強調2Level=3) c:標準関数

図6 腰椎圧迫骨折症例のMPR画像
a:骨用関数
b:標準関数フィルタ適用(ガウスエッジ強調2Level=3)
c:標準関数

 

まとめ

Dual Maskのマスクコピーを使用することで骨の抽出を簡略化でき,3D-CTのルーチン作業の効率化や時間の短縮になると考える。また,位置合わせや画像フィルタにより整形外科領域以外にも日常の3D画像作成に幅広く使用でき,画像診断の一助になることが期待される。

●参考文献
1)阿部 駿 : AZE VirtualPlace標準機能
を使った外傷CTでの効果的な3D画像作成法. INNERVISION, 32・10, 88〜89, 2017.

【使用CT装置】
Brilliance CT64(フィリップス社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace(AZE社製)

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