技術解説(AZE)

2014年12月号

Digital Radiography(DR)を極める【動画編】

画像解析技術がサポートする「大動脈弁治療」の新展開(ワークステーション:AZE VirtualPlace)

阪本 剛((株)AZE開発部)

心臓から血流を体循環に送り出す上で重要な構造物である大動脈弁は,狭窄や閉鎖不全が生じると全身の血流停滞を引き起こし,肺や肝臓などさまざまな臓器に影響を来すため,臨床上の注目度は高い。そのため,さまざまな治療法やデバイスが開発され,次々と臨床の現場に適応されている。近年では,経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)が登場し,大動脈弁治療の可能性も広がりを見せている。また,ハイブリッド手術室の開発によって手術場での放射線透視撮影が可能になり,カテーテル治療と外科治療が統合された環境で治療を行えるようになった。今まさに大動脈弁治療現場は新たな展開を見せていると言える。

■TAVRのサポート

ハイブリッド手術室には放射線透視撮影装置が設置されているため,身体内部の血管情報をリアルタイムに表示することが可能である。これに対して,画像解析装置は術前に撮影されたデータを用いるため,あらかじめさまざまな計測が可能であるという利点を生かすことができる。特に,TAVRでは多列CTによる事前の計測が有用とされており,大動脈弁輪の形状(長径,短径,面積など)や弁に付着する石灰化領域の確認,弁尖と冠動脈入口部との位置関係など,術前に知るべき重要な情報を数多く取得することができるメリットがある1)。「AZE VirtualPlace」に搭載される“4次元解析ソフトウェア”では心位相を複数分割したデータを読み込むことで,計測に最適な位相を任意に選択し,弁輪や弁尖の各種計測を行うことが可能である。また三次元構築された画像上で計測位置を確認することも可能であり,二次元画像で計測するよりも実値に近い値を計測することが可能であるとされる(図1)。

図1 4次元解析ソフトウェア上での計測結果

図1 4次元解析ソフトウェア上での計測結果
上:左室流出路における大動脈弁輪レベルの短軸MPR画像
下:バルサルバ洞から流出路を逆方向に表示したVR画像
1心拍を複数分割したデータから収縮期のデータを選択し,大動脈弁輪を計測する。
三次元画像上で計測位置の確認を行うことも可能である。データはR-R間隔30%の収縮期。

 

■大動脈弁置換術(AVR)付随手術のサポート

外科医が行うAVRにおいても,画像解析装置はさまざまな情報を提供することができる。特に,正中開胸下で施行されるAVRは付随手術が可能であり,大動脈弁治療と同時に冠動脈バイパス術(CABG)やメイズ手術なども施行されることがある。ほかにも閉塞性肥大型心筋症は局所的に強い血流を弁に与えるため,治療後の弁温存のために流出路心筋を切除し,弁に与える負荷を軽減する手術を伴うこともある2)。このような手術は狭い視野で行われるため,術前に準備した情報が術者へのストレスを低減し,手術の安全性を補助することにつながる。例えば,AZE VirtualPlaceでは三次元構築されたデータを基に,上行大動脈から逆方向に流出路内部を表示できるため,手術視野に近いアングルから左室内腔を観察することができる。さらに,装置に搭載されている“3Dカットツール”などを使用することで三次元画像における左室中隔のボクセルデータを削り,その切除量なども測定することが可能である(図2)。このように画像解析装置が事前に提供できる情報の自由度は高く,術者にとって必要な情報を幅広く表示することが可能である。

図2 3Dカットツールによる切除量の測定画像

図2 3Dカットツールによる切除量の測定画像
閉塞性肥大型心筋症において施行されるAVRでは,左室流出路心筋切除(myectomy)を伴うことがある。あらかじめ術前CTで画像化しておくことにより,手術に対する術者のストレスの低減を可能にする。

 

さまざまな技術が統合されたハイブリッド手術室のような新しい環境が登場するに従い,治療医に必要とされる情報の質や量が変化している。それに伴い画像解析も新しい環境が必要とする情報価値を見極め,さまざまな情報を必要に応じて提供する必要がある。われわれは事前に準備できる情報の質および量を高めることで,新しい医療環境がもたらす恩恵を最大限に引き延ばすことを常々検討している。本稿では画像解析装置AZE VirtualPlaceがハイブリッド手術室やTAVRなどの新しい展開に対して,どのように大動脈弁治療をサポートしうるかを解説した。

●参考文献
1)Holmes, D.R. Jr., et al. : 2012 ACCF/AATS/SCAI/STS expert consensus document on transcatheter aortic valve replacement. J. Thorac. Cardiovasc. Surg., 144・3, e29〜84, 2012.
2)Kayalar, N., et al. : Concomitant septal myectomy at the time of aortic valve replacement for severe aortic stenosis. Ann. Thorac. Surg., 89・2, 459〜464, 2010.

 

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