Canon Clinical Report(キヤノンメディカルシステムズ)

2023年11月号

先進的予防医療を提供するクリニックが、最も低被ばくな健診センターをめざして国産デジタルPET-CT 2台を導入 ~世田谷区初のPET導入で、病診連携を進め画像診断センターとして地域に貢献~

セントラルクリニック世田谷

Cartesion Prime

 

セントラルクリニック世田谷は、2023年3月に世田谷区上野毛の閑静な住宅地に会員制メディカルクラブとして開院した。クリニックでは高度で先進的な予防医療を提供するため、キヤノンメディカルシステムズのデジタルPET-CT「Cartesion Prime」2台や1.5T MRIを導入し、人間ドックに活用している。また、PET空白地帯となっていた世田谷区に開設したことで、病診連携で大学病院など近隣の医療機関との医療機器共同利用を促進し、地域の画像診断センターとしての役割も果たしている。高精度で被ばくの少ない健診の提供をめざす同クリニックがCartesion Prime を選定した理由や検査の実際について、佐藤俊彦理事長、中島康雄院長、放射線科の藤井佐紀技師に取材した。

佐藤俊彦 理事長

佐藤俊彦 理事長

中島康雄 院長

中島康雄 院長

藤井佐紀 技師

藤井佐紀 技師

 

Cartesion Prime 2台を導入し予防医療と病診連携を柱に開院

セントラルメディカルクラブは、遠隔画像診断支援サービス設立や栃木県初のPETセンター開設など、画像診断や予防医療などの医療サービスの提供に先駆的に取り組んできた放射線診断専門医の佐藤理事長が、2003年に創設した会員制医療サービスである。宇都宮セントラルクリニックと提携し、最新の画像診断機器を活用した健診を会員に提供してきた。セントラルクリニック世田谷は、セントラルメディカルクラブの医療サービスを提供することを柱の一つに、資本提携するオリックスのサポートを受けて開設された。高度画像診断機器を活用した人間ドックをはじめ、0次から1次、2次の予防医療を中小企業の経営者を中心とした会員向けに提供している。
クリニックには、Cartesion Prime 2台や1.5T MRIなどの画像診断機器が導入された。佐藤理事長は、「会員向けの健診センターとして、万が一の装置トラブルでFDG注射後に検査できないということがあってはならないので、PET装置を2台導入することは必須だと思います。装置の利活用のために病診連携で画像検査を提供することも計画していたため、PET空白地帯であったこの地での開院を決めました」と説明する。
病診連携においては、中島院長がクリニックの顔となって連携先との関係づくりを行っている。中島院長は、「顔の見える連携が当クリニックの特長の一つです。画像検査を受託する連携だけではなく、健診の結果、精密検査や治療が必要になった場合にも、互いに知っている外部連携医師に直接紹介しています」と話す。連携先とていねいに関係を築くことで、大学病院や地域の医療機関からの検査依頼が増加しており、地域の画像診断センターとしての役割も大きくなっている。

高感度で被ばく低減に有効なCartesion Primeを採用

半導体検出器を搭載したCartesion Primeは、体軸方向27cmの有効視野や280ピコ秒未満のTOF時間分解能により、高画質や収集時間の短縮を実現している。ディープラーニングを用いて設計された画像再構成技術「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)」をPET画像とCT画像に使用できる点も特徴だ。
佐藤理事長はCartesion Primeを採用した理由について、「当クリニックを日本で最も低被ばくな健診センターにしたいと考えています。Cartesion Primeは有効視野が広いため感度が高く、FDG投与量を低減できることや、AiCEがCTの撮影線量の低減とPETの画質向上に利用できることなどに期待しました」と述べる。
PET用にトレーニングされたAiCEは、コントラストを損なわずにノイズを効果的に低減することができる。中島院長は画質について、「半導体検出器による画質向上とAiCEでの再構成処理により、ノイズが多くなりやすい肝臓の中の集積も評価できると思います。従来のPET画像を基にした診断基準では処理できないような高画質も得られると考えており、ほかの読影医とも相談しながら画質や読影について検討していきます」と説明する。

健診と病診連携で投与量を低減した検査を追究

診療放射線技師が6名在籍する放射線科では、PET-CTとMRIで担当を分け、PET-CT検査には4名が当たる。オープン当初は会員の1回目の検査が集中していたが、夏頃からは病診連携の検査が増えており、2023年7月実績では健診と病診連携の割合は3:7となっている。病診連携ではCT検査単独の依頼もあるため、Cartesion Primeを80列CT として活用している。
藤井技師はPET-CT検査について、「健診では頭部と体幹部のFDG-PETを撮像しています。体幹部の撮像範囲は眼窩から骨盤までが基本で、1ベッドあたり2分収集のため、10分程度で検査自体は終了します。デリバリーFDG製剤を使用しているため減衰や体格を考慮して収集時間を調整していますが、Cartesion Primeのパフォーマンスを考えると、標準的なプロトコールでおおむね対応できています。病診連携では呼吸器科や乳腺外科、血液内科からの依頼が多く、がんの転移精査やステージング、治療効果判定が中心です」と説明する。
被ばくの少ない検査を追究するため、健診と病診連携それぞれの目的に合わせてFDG製剤の投与量の目標値を設定している。藤井技師は、「ガイドラインでは3.7MBq/kgが標準とされていますが、医師と画質を確認しながら低減を図っており、現在は病診連携では3.0〜3.3 MBq/kg、健診では2.8〜3.2 MBq/kgほどで検査をしています」と話す。佐藤理事長は、「Cartesion Primeは装置性能が良いため、さらに投与量を低減する余地があると思います。分注器なども活用して、最も低被ばくな健診センターをめざします」と意気込みを述べる。

■Cartesion Primeによる臨床画像

図1 左乳がん(T1N0M0) a MIP画像 b fusion(axial)画像 左乳房3時方向に最大径5.0mmの結節を認め、SUVmax=8.7の集積を呈している。

図1 左乳がん(T1N0M0)
a MIP画像 b fusion(axial)画像
左乳房3時方向に最大径5.0mmの結節を認め、SUVmax=8.7の集積を呈している。

 

検査支援機能や業務の自動化でスタッフの負担を軽減

Cartesion Primeは空冷の採用によりチラーが不要で、柔軟に設置することが可能である。操作室を挟んで配置された2つの検査室内はすっきりとしていて広く、加えてCartesion Primeのガントリにはフレアデザインを採用しているため、圧迫感のない快適な検査室となっている。また、高さ47.5cmまで下げられる寝台やフットスイッチなど検査を支援する機能が実装されており、藤井技師は、「ポジショニングや説明をしながら寝台操作ができるフットスイッチを多用していて、時間短縮になっています。寝台の動作が速いため下まで下げやすく、安全に移乗できます」と述べ、最近は病診連携において介助が必要な患者も増えていることから、より有用性を発揮していると話す。
放射線科では、会員や介助が必要な患者の増加でスタッフの負担が増えることが課題の一つと考えており、そのような中でも安全・正確に業務を遂行するために検査業務の自動化・デジタル化を進めている。1つはデータフローのデジタル化で、Cartesion PrimeがDICOM RRDSR(Radiopharmaceutical Radiation Dose Structured Report)に対応していることから、核医学の医療被ばく管理運用方法の国際標準である「REM-NM(Radiation Exposure Monitoring for Nuclear Medicine)」に準拠した運用フローを構築した。手入力なしに投与情報をRISやPET-CT装置、PACS、クラウド型医療被ばく線量管理システムへ登録することができる。藤井技師は、「投与情報の入力ミスは画像再構成が終わった時点で気づくことが多く、データ入力から画像再構成までをやり直す必要がありました。デジタル化により入力の手間とミスがなくなり、時間と労力を削減できています」と話す。また、投与終了や撮像、退室の時間を音声で知らせる仕組みを構築して時間管理もデジタル化し、ほかの作業に集中していてもタイミングを逃さずに検査を遂行できるようになっている。

健診では受診者に画像を見てもらいながら結果説明を行っている。

健診では受診者に画像を見てもらいながら結果説明を行っている。

 

REM-NMに準拠した運用フローで、安全・正確に検査業務を行える環境を構築

REM-NMに準拠した運用フローで、安全・正確に検査業務を行える環境を構築

 

Cartesion Prime活用の幅を広げ先進的な取り組みをめざす

同クリニックではCartesion Primeのさらなる活用をめざし、健診ではアミロイドPET導入に向けて検討を進めている。中島院長は、「健診ではPET-CTを長期的に見ていくため、がんに限らず健康管理に活用していきたいと考えています。例えば、PETで血管の炎症を見ていくことで動脈硬化との関係についての知見が得られるのではないかと考えています」と話す。
また、佐藤理事長は、「現在視野に入れているのが、海外で行われている去勢抵抗性前立腺がんに対するPSMA標的内用療法です。そこではPET-CTを治療だけでなく、診断からステージング、再発チェックにも活用したいと考えていて、早期に遠隔転移が見つかれば外照射や免疫放射線治療などを組み合わせて治療できます。治療については宇都宮セントラルクリニックと連携し、Cartesion Primeを活用して先進的な医療を提供できるのではないか期待しています」と展望する。
高精細、高画質、被ばく低減を実現するCartesion Primeが、予防医療と画像診断で人々の健康増進と地域医療に貢献するクリニックの挑戦を支えていく。

(2023年9月15日、20日取材)

*AiCEは画像再構成処理の設計段階でDeep Learningを用いており、本システム自体に自己学習機能は有しておりません。
*記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見が含まれる場合があります。

一般的名称:X線CT組合せ型ポジトロンCT装置
販売名:PET-CTスキャナ Cartesion Prime PCD-1000A
認証番号:301ACBZX00003000

 

セントラルクリニック世田谷

セントラルクリニック世田谷
東京都世田谷区上野毛3-3-4
TEL 03-6805-9145
https://nidc.or.jp

 

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