セミナーレポート(キヤノンメディカルシステムズ)

2022年11月号

第45回日本呼吸器内視鏡学会学術集会ランチョンセミナー7 最新のイメージング技術による肺がん、びまん性肺疾患診断

CアームX線システムによる気管支鏡検査の正診率向上

沖  昌英(国立病院機構名古屋医療センター 呼吸器内科)

沖  昌英(国立病院機構名古屋医療センター 呼吸器内科

わが国においては、肺野病変の気管支鏡検査時にX線透視を用いるのが一般的であるが、海外では使用しない国もある。本講演では、ガイドラインにおける気管支鏡検査時のX線透視の位置づけや、臨床試験の結果などを踏まえた上で、実臨床における限局性病変に対するX線透視の意義や、当センターにおけるキヤノンメディカルシステムズ社製のCアームX線システム「Ultimax-i」を用いた気管支鏡検査の現状を報告する。

肺野病変の気管支鏡検査におけるX線透視の必要性

1.ガイドラインでの位置づけ

1)びまん性肺疾患
びまん性肺疾患における経気管支肺生検について、ガイドライン1)ではEvidence statementsとして、「X線透視の使用が非限局性病変における気胸の低減や診断率に影響するという信憑性のあるエビデンスはない(エビデンスレベル3)」と記載されており、びまん性肺疾患においてX線透視は必須ではないと示唆している。
一方、気管支鏡下クライオバイオプシーのガイドライン2)では、「クライオバイオプシーを行う間質性肺病変疑いの患者において、X線透視の使用を提案する(グレードなし)」と記載されている。また、備考では、クライオプローブから胸膜までの距離の計測や進行方向の確認に当たっては、プローブをX線照射方向と直交させることで計測が可能とされており、X線透視の使用が必要という位置づけである。

2)限局性病変
限局性病変の経気管支生検(TBB)について、ガイドライン1)ではEvidence statementsとして、「X線透視は限局性病変において気胸を減少させる可能性がある(エビデンスレベル3)」と記載されている。また、Recommendationsでは、X線透視スクリーニングはびまん性および非限局性病変に対する診断率を改善させないものの、限局性病変の診断率の改善に寄与する可能性があること(グレードD)や、限局性病変の患者のTBBではX線透視を考慮すべきである(グレードD)と記載されており、限局性病変に対してはX線透視を使用した方が良いとされている。

2.孤立性肺野病変に対する気管支鏡検査におけるX線透視の必要性に関する研究
Yoshikawaらが行った単施設・前向き・連続症例登録の臨床試験3)では、非X線透視下にガイドシース(GS)併用気管支超音波断層法(rEBUS-GS)下の鉗子生検および / またはブラシでの擦過細胞診を施行し、ラジアル型超音波プローブ(rEBUS)で病変を確認できない場合にX線透視を施行した。121例、123病変(平均31mm)を解析した結果、rEBUSで描出できた病変は75.6%(93 / 123)であった。X線透視なしでの診断率は61.8%(76 / 123)で、病変が20mm以下では29.7%、20mm以上では75.6%、また、中葉舌区の病変は86.7%であり、20mm以上および中葉舌区の病変ではX線透視は不要である可能性を示唆した。本研究では、非X線透視下のrEBUS-GSは末梢肺病変の診断に効果的であり、病変径や位置、CTでの性状評価、流入気管支の存在は、本手技の診断感度向上に役立つ要因であると結論づけられている。
続いて、非劣性無作為化比較試験について紹介する。Asanoらは、5施設において、限局性病変に対するX線透視の有無におけるrEBUS-GSの病変検出能について検討を行った4)。30mm以上の病変をターゲットとし、「4mm細径気管支鏡+rEBUS-GS+X線透視群」(以下、X線透視群)と、「4mm細径気管支鏡+rEBUS-GS+仮想気管支鏡ナビゲーション(VBN)群」(以下、VBN群)を比較した。140名が登録し、X線透視群64例と、VBN群65例について最終解析を行った。rEBUSで描出できた病変は、X線透視群が96.9%(62 / 64)、VBN群が95.4%(62 / 65)で、診断率はX線透視群が85.9%(55 / 64)、VBN群が76.9%(50 / 65)、p=0.258であった。診断率差は−9%であるが、非劣性マージンは−15%と設定されており、95%信頼区間:−22.3〜4.3%と非劣性は証明されなかった。なお、合併症は、X線透視群が4.7%(3 / 64)、VBN群が1.5%(1 / 65)であった。本研究の結論として、rEBUS-GSにおいてVBNは気管支鏡や生検器具のガイドになる可能性はあるものの、病変採取の正確性を向上させるためにX線透視は必須であり、末梢肺野病変の生検においてVBNはX線透視の代替とはならないとのことであった。
Zhengらは、限局性病変に対する3mmの極細径気管支鏡+rEBUS+VBNについて、X線透視の有無による病変検出能を検討する非劣性無作為化比較試験を行った5)。本研究は、196例の登録目標に対し126例で終了しており、やや信頼性に欠けるが、X線透視あり群60例(病変の平均径29mm)、X線透視なし群60例(同26.3mm)を解析した。診断率はX線透視あり群が81.7%(49 / 60)、X線透視なし群が73.3%(44 / 60)、p=0.38であった。非劣性マージンは−15%に設定されており、本研究においても非劣性は証明されなかった。

実臨床における限局性病変に対するX線透視の意義

実臨床において、限局性病変に対するX線透視が必要となる場面を以下に列記する。

●気管支鏡 / 生検器具の進行方向の確認
特にGSをキュレット誘導するに当たり、キュレットの屈曲方向の確認にはX線透視が必須であると考える。われわれは、キュレット先行法とGS先行法の2種類を用いている。
図1は実際の画像であるが、キュレット先行法では、GSでrEBUSを病変に挿入できない場合、GSにキュレットを通して先行させ、キュレットが引っかかる気管支を探りつつ、キュレットの角度を変えながらGSを病変内にwithinさせる(a)。また、GS先行法では、キュレット先行法よりも先端部分のカーブが大きく、カーブの先も長くできることから、キュレットをGS内で屈曲させてカーブを大きくした上で、ターゲットにwithinさせる(図1 b)。

図1 GSをキュレット誘導する場合のキュレット屈曲方向の確認

図1 GSをキュレット誘導する場合のキュレット屈曲方向の確認

 

●生検器具と病変の位置関係(生検部位)の確認
GSや極細径気管支鏡を病変内にwithinさせても、呼吸によって病変の位置は容易に変動する。Chenらは、肺の上葉は最大呼気と最大吸気で約1cm、下葉は2cm以上動くと報告しており6)、そのような場合にX線透視は必要であると考える。

●鉗子の開き具合の確認
鉗子が開いていることは、GS内に引き込まれないことをもって判断できるが、十分に大きく開いているかをこの方法で確認するのは難しい。特に細径鉗子は開きにくいが、X線透視では大きく開いていることが一目瞭然である(図2)。

図2 細径鉗子の開き具合の確認

図2 細径鉗子の開き具合の確認

 

●胸膜と気管支鏡 / 生検器具の位置関係の確認
極細径および細径気管支鏡検査では、気管支鏡自体が胸膜に到達し気胸を引き起こす危険性があるため、注意を要する。X線透視にて、胸膜と気管支鏡 / 生検器具の位置関係を確認することが重要である。

当センターにおけるX線透視下末梢肺病変の気管支鏡検査

1.Ultimax-iの特長
当センターの気管支鏡検査室で稼働するCアームX線システムであるUltimax-i(図3)は、Cアームを回転させることで、患者の体位変換を行うことなく斜位方向(RAO / LAO)での透視が可能である。術者がフットスイッチで透視・撮影を行えるため、X線防護板やさまざまな機器が設置された狭いスペースでも効率の良い検査を実現。また、Cアームは1°単位での微妙な角度調整も可能であり、ベッド端まで透視できるため、気管支鏡検査にも有用である(図4)。
Ultimax-iでは、透視線量モードを用いることで、ボタン1つで線量をNormal(100%)、Mid(約50%)、Low(約35%)に切り替えられ、低線量での検査も容易に可能である。線量レベルを下げてもコントラストが維持されるため、Lowモードでも良好な画質が得られる(図5)。そのため、当センターではほぼすべての検査をLowモードにて行っている。またパルス透視も可能となっており、パルスレートは1 ~ 15fps(1、2、3.75、7.5、15)の範囲で検査中でも簡単に変更できる(図6)。当センターでは主に7.5fpsを用いており、画質を維持しつつ、さらなる低線量化を実現している。加えて、Ultimax-iでは、透視中の画像をピンポイントで保存できるため、画像保存のために改めて照射・撮影を行う必要がないことも、低線量化に貢献している。
なお、当センターの装置では対応していないが、Ultimax-iの最新機種では、高画質・低線量コンセプト“octave SP”が提供されている。照射線量を従来よりも65%低減しつつ、従来と同等以上の高画質を取得可能であり、進化を遂げている。

図3 名古屋医療センターにおける気管支鏡検査室

図3 名古屋医療センターにおける気管支鏡検査室

 

図4 Ultimax-iによる気管支鏡検査の様子

図4 Ultimax-iによる気管支鏡検査の様子

 

図5 Ultimax-iの透視線量モードにおける線量レベル別の画像比較

図5 Ultimax-iの透視線量モードにおける線量レベル別の画像比較

 

図6 Ultimax-iの低レートパルス透視の概要

図6 Ultimax-iの低レートパルス透視の概要

 

2.Cアームの設定
X線像は平面像のため奥行き(前後関係)の情報が得られないことから、X線照射方向に対して気管支鏡の進行方向が直交するようにX線透視をポジショニングすることがきわめて重要である。当センターでは、生検部位に対する気管支鏡の適切な進行方向をCT画像上で確認し、その進行方向に直交するCアームの角度を設定する(図7)。またナビゲーションシステムも活用しており、この角度を仮想X線画像(サイバネットシステム社製「DirectPath」:図8a)でも再現してX線透視画像をシミュレーションすることで、そのCアーム角度での透視下における気管支鏡の進行方向を事前に確認している。また、当センターでは気管支鏡検査において3面の天吊りモニタのうち2面を使用し、1面はエコーが病変にwithinした時のX線透視画像を表示し、気管支鏡の角度やエコーの進行を見る参照モニタ、もう1面はリアルタイムのX線透視モニタとなっている(図8 b)。実際の手技では、参照モニタと床置きの仮想X線モニタを確認しつつ、X線透視モニタを見ながら病変に鉗子を寄せていく。

図7 Ultimax-iのCアームの傾き設定の一例

図7 Ultimax-iのCアームの傾き設定の一例

 

図8 仮想X線画像(ナビゲーション)の活用

図8 仮想X線画像(ナビゲーション)の活用

 

3.症例提示
症例は、64歳、男性、肺がんの確定診断のため極細径気管支鏡を用いたrEBUS下クライオバイオプシーを実施した症例である。病変長径:17.8mm、病変性状:solidで、air bronchus signは認めないものの、rEBUS positionはwithinとなった。極細径気管支鏡は左B1+2aiiα(5次の気管支)まで到達し、鉗子生検10個、クライオバイオプシー2個(凝固時間:10秒、6秒)を施行した(図9)。小さな病変で胸膜に接していても、CアームのRAO/LAO角度を正確に設定して生検を行うことで、気胸のリスクを軽減できる。本症例は、クライオバイオプシーの結果、carcinomaであった。

図9 症例:肺がん患者の極細径気管支鏡を用いたrEBUS下クライオバイオプシー(64歳、男性)

図9 症例:肺がん患者の極細径気管支鏡を用いたrEBUS下クライオバイオプシー(64歳、男性)

 

まとめ

近年、rEBUSやVBNが注目され、多くの気管支鏡医がそれらをうまく使いこなしているが、さらにX線透視をうまく活用することで、診断率の向上が期待できる。また、正確かつ安全な気管支鏡検査を行うためにはX線透視の補助が必須であると考える。
気管支鏡検査に当たっては、気管支鏡や生検器具の進行方向に直交するようにX線照射を行うことがきわめて重要であり、そのためにはCアームのX線システムの使用が効果的である。また、高画質と低線量を両立していることが望ましく、近年の気管支鏡検査は多くのモダリティを併用し、患者の周囲に機器が密集するため、コンパクトかつ操作性に優れていることが求められる。
気管支鏡医は正確、安全、被ばくの少ない検査を行うために、常にX線システムの機能や使い方にも意識を向けて検査を行う必要があると考える。

*記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。

●参考文献
1)Du Rand, I.A., Blaikley, J., Booton, R., et al. : British Thoracic Society guideline for diagnostic flexible bronchoscopy in adults : Accredited by NICE. Thorax, 68(8) (Suppl.1) : i1-i44, 2013.
2)Maldonado, F., Danoff, S.K., Wells, A.U., et al. : Transbronchial Cryobiopsy for the Diagnosis of Interstitial Lung Diseases : CHEST Guideline and Expert Panel Report. Chest, 157(4) : 1030-1042, 2020.
3)Yoshikawa, M., Sukoh, N., Yamazaki, K., et al. : Diagnostic value of endobronchial ultrasonography with a guide sheath for peripheral pulmonary lesions without X-ray fluoroscopy. Chest, 131(6) : 1788-1793, 2007.
4)Asano, F., Ishida, T., Shinagawa, N., et al. : Virtual bronchoscopic navigation without X-ray fluoroscopy to diagnose peripheral pulmonary lesions : A randomized trial. BMC Pulm. Med., 17(1) : 184, 2017.
5)Zheng, X., Xie, F., Li, Y., et al. : Ultrathin bronchoscope combined with virtual bronchoscopic navigation and endobronchial ultrasound for the diagnosis of peripheral pulmonary lesions with or without fluoroscopy : A randomized trial. Thorac. Cancer, 12(12) : 1864-1872, 2021.
6)Chen, A., Pastis, N., Furukawa, B., et al. : The effect of respiratory motion on pulmonary nodule location during electromagnetic navigation bronchoscopy. Chest, 147 (5) : 1275-1281, 2015.

一般的名称:据置型デジタル式汎用X線透視診断装置
販売名: 多目的デジタルX線TVシステム
Ultimax-i DREX-UI80
認証番号:221ACBZX00010000

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