CT画像診断の次世代スタンダードを作る 〜画像の高精細化とさらなる低被ばく化の実現をめざして 
瀧口 登志夫(キヤノンメディカルシステムズ株式会社 代表取締役社長)

2023-12-25


瀧口 登志夫(キヤノンメディカルシステムズ株式会社 代表取締役社長)

「Global Standard CT Symposium」は,320列Area Detector CT(ADCT)「Aquilion ONE」をグローバルスタンダードCTとして世界に普及させ,新たに切り開かれる臨床知見を共有いただくとともに,国内CT医療被ばく半減プロジェクトを推進し,その進捗を報告することを主な目的として開催してきました。12回目の今回は,今後の10年を見据え,「CT画像診断の次世代スタンダードを作る」をテーマに完全オンラインで開催します。

Deep Learning画像再構成の標準搭載に向けて

逐次近似応用再構成「Adaptive Iterative Dose Reduction 3D(AIDR 3D)」は,標準搭載への取り組みを進め,今年7月現在で国内にのべ8120台が導入されました。さらに,Deep Learningを応用した次世代の画像再構成技術「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)」は,CTをはじめ,MRIやPET-CTにも搭載を進めています。AiCEは,これまでの被ばく低減技術の課題となっていた被ばく低減と画質のバランスにおいて,AIDR 3Dと比較して新たな効果を発揮していることが,多くの研究発表にて報告されています。現在,AiCEは80列以上のCTへの搭載を進めており,国内での稼働台数は今年7月現在で1120台と急速に普及しつつあります。2023年中には販売するすべてのラインアップにAiCEを標準搭載し,次世代の被ばく低減技術の普及とさらなる医療被ばくの低減に努めてまいります。

CT画像のさらなる高精細化への取り組み

新たな画像の高精細化技術として,Deep Learningを応用した超解像画像再構成「Precise IQ Engine(PIQE)」をリリースしました。PIQEは,高精細CT「Aquilion Precision」によってもたらされた高精細CT画像をAquilion ONEで実現する技術であり,適応部位の拡大に向けて開発を進めています。なお,Aquilion Precisionは現在,国内で48台が稼働しており,日々の臨床・研究を通して次々とエビデンスを発信しています。

画像の高精細化と低被ばくを同時に実現するPhoton Counting検出器搭載型X線CT

画像の高精細化とさらなる被ばく低減を同時に可能にするPhoton Counting検出器搭載型X線CTについて,今年4月,国立がん研究センターと特定臨床研究を開始しました。われわれはこれまで,CTの能力を飛躍的に向上させる多くの革新的技術を開発・製品化してきました。そして,半導体検出器モジュールの設計と製造のグローバルリーダーであるレドレン・テクノロジーズ社をキヤノングループに迎え入れ,テルル化亜鉛カドミウム(CZT)を用いたPhoton Counting検出器搭載型X線CTの開発を進めています(図1)。
CTの製品化を通して得てきたさまざまな技術と,X線阻止能や安定性の観点で優れた素質を持つCZT検出器との相乗効果によって,画像診断技術のさらなる発展に寄与してまいります。

図1 Photon Counting検出器搭載型X線CT開発の流れ

図1 Photon Counting検出器搭載型X線CT開発の流れ

 

*AiCE,PIQEは画像再構成処理の設計段階でAI技術を用いており,本システム自体に自己学習機能は有しておりません。


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