FUJIFILM MEDICAL SEMINAR 2015 Report デジタル画像処理技術がもたらす未来

2015.7.11 in 名古屋 講演『CALNEO Smartの使用経験』より

低線量域におけるCALNEO Smartと他社FPD との画質評価

鈴木省吾(刈谷豊田総合病院放射線技術科)

刈谷豊田総合病院(病床数672床,診療科19科,診療放射線技師数54名)は,一般撮影室に「RADREX-i」(東芝社製)を設置しており,2014年11月に「FUJIFILM DR CALNEO Smart」を導入して,ストレッチャーでの撮影などに活用している。ポータブル撮影装置としては,「CARESTREAM DRX-Revolution」にFPD「AeroDR」(コニカミノルタ社製)を組み合わせて使用している。
CALNEO Smartは,ビルトインタイプと比べて不利な使用環境(X線の斜入射,撮影距離の不正確)でありながら,ノイズが少ない印象である。さらなる低線量撮影を期待し,低線量域におけるCALNEO SmartとAeroDRを比較した。

検討方法

産科領域のGuthmann撮影では線量低減が求められるが,きわめて低い線量での撮影はノイズの影響が大きく,DQE値を感度として用いることが妥当か不明である。そこで,CALNEO SmartとAeroDRを用いて,物理的画質特性と視覚評価について検討した。

1.物理的画質特性の計測
ノイズ特性は,Guthmann撮影を想定した条件(管電圧:125kV,管電流:250mA,撮影距離:150cm,撮影時間200ms)で管球直前に30cm厚アクリル板を配置し,設定線量0.001mGyで垂直方向のnormalized noise power spectrum(NNPS)を二次元フーリエ変換法にて計測した。解像特性については,エッジ法を用いてIEC-622220-1に準拠した計測を行い,垂直方向のmodulation transfer function(MTF)を採用した。また,noise equivalent quanta(NEQ)は次式にて算出した。
 NEQ(u)=MTF(u)2/NNPS(u)

2.画像収集と比較のための条件処理
画像収集では,FPD直前に人体等価ファントムをGuthmann撮影の体位で配置し,5cm厚のアクリルを追加して撮影した。線量を0.05mGy(1mAs)から2.58mGy(50mAs)まで段階的に増加させ,27枚の画像を収集した。
そして,CALNEO SmartとAeroDRが平等な条件となるように,各FPDのMTFを計測して,その比率から空間周波数処理係数(spatial frequency processing factor:FP)を算出し,これを用いることで解像特性を同等にした。
 FP(u)=MTF(u)KONICA/ MTF(u)FUJI
なお,周波数が高いと係数が膨大な数値となってしまうため,カットオフ周波数を2.5 cycles/mmとした。
等コントラスト処理としては,rawデータ画像にlogフィルタ処理を行い,画像データに設定したROI内の最大値と最小値が基準設定値となるように線形の補正を行った。そして,観察者の視覚差を排除するため,バンドパスフィルタ係数(b-FP:0.3cycles/mmをピークとし,0.6 cycles/mm以上の係数は0とする)を乗じて,コントラストを排した解剖学的構造の輪郭線のみが描出される条件の画像(b-FP画像)を作成した。

3.視覚評価
視覚評価は,診療放射線技師4名が各FPDのb-FP画像について低線量画像から順に観察し,計測可能と判断する画像を回答する方法で行った。

検討結果

図1に物理的画像特性の結果を示す。CALNEO Smartの解像特性(MTF)は,AeroDRと比べ非常に良い結果が出ている。ノイズ特性(NNPS)は,低周波領域ではAeroDRが少し上回るが,0.3 cycles/mm以上ではCALNEO Smartの方が良い結果となり,NEQでも明らかにCALNEO Smartが優れていた。
4名の観察者による視覚評価では,図2のように全員がCALNEO Smartの方が少ない線量から計測が可能と判断した(画像番号が小さい方が低線量)。観察者平均で見ると,計測可能な線量はCALNEO Smartが0.45mGy,AeroDRが0.65mGyと有意差があり,物理評価通りの結果となった。

図1 物理的画像特性の計測結果

図1 物理的画像特性の計測結果

 

図2 視覚評価の結果

図2 視覚評価の結果

 

まとめ

J-RIMEのDRLs 2015では,Guthmann撮影の診断参考レベルは6mGyに設定されている。今回はファントムによる検討ではあるものの,十分に低い線量で計測可能との結果を得られたことは大きい。今後の期待としては,低周波数成分のみの解像特性や,厚みの情報を極限まで減少させたコントラスト特性を考慮した計測専用処理が搭載されれば,低線量撮影での計測が可能となり,全脊椎や下肢全長,術前計画(テンプレートマッチング)など,臨床で活用できると考える。

 

●そのほかのセミナーレポートはこちら(インナビ・アーカイブへ)

【関連コンテンツ】
TOP