技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)

2017年4月号

Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

Revolution CT─Smart Cardiac Technologyがもたらすoutcome

松本 和也(CT営業推進部製品企画)

本稿では,「Revolution CT」に搭載されたSmart Cardiac Technologyの概説と,その臨床ベネフィットについて述べたい。
Smart Cardiac Technologyの最大の目的は,その検査要望が増加している心臓CT撮影のワークフロー(ここでは,被検者の撮影〜画像処理に用いる画像再構成までを指す)のさらなる改善,そして高いワークフローを維持した状態でのクオリティの向上とオペレータに左右されない均一性の実現である。本テクノロジーは,“Auto Gating”“Smart Phase”“SnapShot Freeze”の3つのアプリケーションで構成されている。以下に,それぞれのアプリケーションとそのベネフィットについて概説する。

■Auto Gating

心臓CT撮影において,心拍状態(心拍数や心拍変動の程度・回数,不整脈の発生頻度など)に対し至適撮影プロトコールを選択することは,撮影を成功させるために重要な点であり,オペレータの経験に左右されてしまうことも少なくない。Auto Gatingは,心臓CT撮影時の被検者の心拍状態と,検査目的に最も至適な撮影プロトコールを自動設定するアプリケーションである。
このアプリケーションの実現のため,世界中の心拍状態および実施された撮影プロトコールを収集,解析を行った(図1)。その結果を基に,Revolution CTには,あらゆる心拍状態に適応できる撮影プロトコールがプリセットされている。もちろん,このプリセットされている撮影プロトコールは,各施設で修正・追加することも可能である(図2)。実際の操作の流れとしては,本スキャンの直近の息止め状態の心拍情報を基に,装置が自動的に至適撮影プロトコールを設定する。そのため,撮影プロトコール選択過程において,知識や経験が少なくても,高いクオリティを実現する撮影が可能となり,かつ同時にワークフローも改善するアプリケーションである。

図1 心拍数と至適心位相の関係

図1 心拍数と至適心位相の関係

 

図2 心拍数と至適撮影タイミングの事例

図2 心拍数と至適撮影タイミングの事例

 

■Smart Phase

心臓CT撮影の次のポイントは,静止冠動脈の心位相の検索である。これまでの方法として,至適心位相(多くの場合,拡張中期や収縮末期)と考えられる心位相を複数位相で画像化し,2Dもしくは3Dにて目視で静止心位相を検索する方法がある。しかし,検索時間の問題やオペレータによる差異があった。あるいは,自動的に生データ上で心臓全体の中心部をモーション解析し,最小モーションの心位相を検索する方法がある。こちらも心臓全体のモーション解析であるため,冠動脈には必ずしも至適な心位相とはならない問題があった。
Smart Phaseは,指定した心位相範囲を2%間隔で画像再構成し,冠動脈にフォーカスしたモーション分析を行い,各冠動脈のモーションアーチファクトが小さい心位相を自動的に至適心位相として画像再構成を行うアプリケーションである(図3)。すべての過程をバックグラウンド処理するため,検索時間の問題を解決,オペレータの差異を解決,そしてあらゆる心拍状態であっても至適心位相の自動検索を可能としている。高いクオリティの画像再構成を実現し,かつ同時にワークフローを改善するアプリケーションである。

図3 冠動脈抽出による各心位相による冠動脈モーションのスコア例

図3 冠動脈抽出による各心位相による冠動脈モーションのスコア例

 

■SnapShot Freeze

前述のSmart Phaseであっても,モーションアーチファクトのない心臓CT画像が得られないケースもある。その場合には,SnapShot Freezeを適用する。SnapShot Freezeは,目的心位相とその前後約60ミリ秒のデータセットの計3つの画像を用いてベクトル動態解析を行うことで,各冠動脈の速度,移動方向などモーションアーチファクトに起因する要素を解析し,モーションアーチファクトが抑制された静止冠動脈画像を再構成するアルゴリズムである(図4)。そのモーションアーチファクトの抑制力は,回転速度では0.058秒以下相当,実効時間分解能では29ミリ秒以下と,非常に高い時間分解能を得ることが可能である。
モーションアーチファクトの抑制方法には分割再構成法と呼ばれる,短い時間分解能を持ったデータを複数組み合わせることで,時間分解能を向上させてモーションアーチファクトを抑制する方法が知られている。この方法の弱点は,冠動脈が心拍ごとで同じ動きをしていないため,心拍ごとに冠動脈に空間的なズレが生じてしまい,空間分解能が犠牲となってしまう点がある。SnapShop Freezeは,1心拍のデータからの解析であるため空間分解能の犠牲なく,高心拍などでの冠動脈のモーションアーチファクトを効果的に抑制可能である。

図4 冠動脈抽出,そして冠動脈モーション解析による静止冠動脈画像化プロセス

図4 冠動脈抽出,そして冠動脈モーション解析による静止冠動脈画像化プロセス

 

■Auto Gating, Smart Phase, SnapShot Freezeの連動

Revolution CT Smart Cardiac Technologyは,これら3つのアプリケーションを個々として使用することも可能であるが,プロトコール選択,撮影,至適心位相検索,そして画像化までを一連の流れとして同時に使用することも可能である。それにより,高いクオリティの画像,ワークフローの改善,そしてオペレータに左右されないクオリティの均一化など,これらすべてを実現するアプリケーションとなっている。今後もオペレータ,医師,被検者らに有益な技術開発を継続していく。

 

●問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
CT営業推進部
〒191-8503
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