技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)

2023年3月号

Cardiac Imaging 2023 CT技術のCutting edge

進化し続けるGE HealthCare CT Cardiac solutionと将来展望

今井 靖浩[GEヘルスケア・ジャパン(株)CT技術部]

循環器領域におけるCTへの期待は年々膨らんでおり,冠動脈の形態診断だけでなく,近年,機能診断においても多く活用されている。その背景には,心臓CT技術開発の貢献が大きいと考えられる。本稿では,2022年のRSNAにて発表された技術や,現在開発中のCutting edge技術に触れ,臨床活用における今後の展望を述べていきたい。

■GE HealthCareフラッグシップCT「Revolution CT」シリーズ

Revolution CTシリーズは,X線焦点指向型の160mm volume detectorと3D collimatorを有し,ワイドカバレッジCTのデータ収集系では難しいとされている高い線量効率と散乱線除去を実現している。画像再構成においては,「Volume High Definition Reconstruction(VHD)」により,cone beam geometryによる幾何学的なアーチファクトへの対策を行い,「Multi Material Artifact Reduction(MMAR)」により,X線ヒール効果によるスペクトラル起因のアーチファクト,体軸方向におけるCT値のシフトなどの対策を行うことで,高いCT値精度と均一性を有する画質を実現している(図1)。
これらの基本技術に加え,心臓CTにおいては,高い空間分解能やリアルタイム性の高いECG gated撮影が要求されるが,「Smart Arrhythmia Management」機能により,不整脈が起こった場合でもリアルタイムにR-peakシグナルをトラックして,必要な撮影心位相を確保しつつ,余分な部分の撮影を行わないことで,被検者の状態に合わせた最適な撮影を実現している。また,冠動脈評価において重要な空間分解能に関しては,X線焦点を偏向しながら従来の2倍以上のデータを収集する「High-Resolution mode」により,高空間分解能画質を実現している(図2)。「Auto Gating」機能は,被検者ごとの撮影を最適化し,最新の心電波形情報や臨床撮影目的などにより,パーソナライズされた撮影を自動的に推奨する機能である。
撮影後には,「Smart Phase」機能により,冠動脈の動きが最も少ない最適な心位相を自動的に画像再構成する。その後,「SnapShot Freeze2.0(SSF2.0)」機能により,モーションによるアーチファクトが残っていれば,冠動脈だけでなく,心臓領域を全体的に補正した画像を再構成する(図3)。また,ディープラーニングを用いた画像再構成である「TrueFidelity Image(TFI)」を使用することも可能であり,高分解能と画像ノイズのトレードオフを克服することで,心臓CTに必要なデータ収集および画像品質を,被ばく低減下でも実現可能な装置となっている。さらに,2022年のRSNAでは,最速0.23秒回転による時間分解能向上を実現した「Revolution Apex Elite」と,それによる多数の臨床画像の提示も行われていた。

図1 Revolution CTシリーズの画像再構成

図1 Revolution CTシリーズの画像再構成

 

図2 High-Resolution mode

図2 High-Resolution mode

 

図3 SSF2.0アルゴリズム概念図と画像比較 SSF2.0では冠動脈(○)だけでなく,弁(➡)のモーションアーチファクトも抑制されている。

図3 SSF2.0アルゴリズム概念図と画像比較
SSF2.0では冠動脈()だけでなく,弁()のモーションアーチファクトも抑制されている。

 

■心臓CT画像解析機能

「CardIQ Xpress 2.0 Reveal」機能は,冠動脈の多角的な解析から心機能評価までをカバーする統合的な機能であり,日々のルーチン心臓CT画像解析の効率を上げるとともに,一貫した解析品質を提供している。ダイナミックCT心筋パーフュージョン解析「Myocardial Perfusion」は,160mmのvolume detectorの特長を用いて撮影されたデータにおいて,経時的な変化より心筋の定量評価をサポートする機能である。

■心臓CTのCutting edge技術

このセクションでは,薬機法未承認ではあるが,現在開発中の技術について触れ,近い将来の心臓CTの臨床応用の展望について述べたい。
dual energy機能である「Gemstone Spectral Imaging」を心臓領域へ利用する開発が進み,2022年秋より160mm volume detectorを用いた数例の臨床撮影を行っており,冠動脈プラークの性状解析,心筋の定量解析などへの応用が期待されている。モーション補正のSSFの次期バージョンも開発が進んできており,(1) 弁の解析や心機能の解析に必要な複数心位相画像を効率良く,短時間で補正する機能,(2) 上述のdual energyデータへの対応,(3) 1024画像マトリックスへの対応などが予定されている。CardIQ Xpress 2.0 Revealは,ディープラーニング技術の搭載により,AI技術による冠動脈の自動抽出および自動センターライン抽出などが実現する予定であり,解析品質の向上だけでなく,ワークフローの改善にもつながることで,心臓CTの臨床使用の重要性が増すと考えられる。
心臓CTの特長として忘れてはならないのが,非侵襲性とアクセスの良さである。fractional flow reserve(FFR)の解析を心臓CTにて行う取り組みも進めており,AI技術を駆使することで,冠動脈抽出から心筋の抽出および領域分割と,その位置的関係性を含めた全自動解析を実現する,CTデータによるFFR解析機能のプロトタイプ開発が進み,臨床的な研究が始まった。

本稿では,循環器画像診断において,フラッグシップCT装置であるRevolution CTシリーズの特長から画像解析機能,および多岐にわたる臨床ニーズに対応するGE HealthCareの取り組みを紹介し,さらに,近い将来,開発が進むCT領域において,いくつかの期待される次世代技術の開発状況や展望を紹介した。CTスキャナとしては,次世代の検出器であるフォトンカウンティング技術も注目されているが,本稿で紹介した技術は,このフォトンカウンティング検出器CTが製品化された際にも有効に使用できる技術である。GE HealthCareでは,しっかりとした製品開発ロードマップを立て,毎年見直しをかけることにより,臨床ニーズに沿った開発を進めることに努力しており,今後もお客様のフィードバックを取り入れながら,より良いスキャナとそれをサポートする解析機能を開発していきたい。

薬事情報
マルチスライスCTスキャナ Revolution
医療機器認証番号:226ACBXZ00011000
アドバンテージ ワークステーション
医療機器認証番号:20600BZY00483000
JB07029JA

 

問い合わせ先
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〒191-8503
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