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福岡リハビリテーション病院 
ECHELON OVALとオープンMRI2台で整形外科から脳神経領域まで専門性の高い診療に柔軟に対応
RADARや静音技術などを駆使した高度な検査を提供

2016-9-26


左から眞竹健太郎技師,布川洋一技師,加々美 智部長,渡邉誠士技師,髙濱友寛技師,廣島貴彦技師

左から眞竹健太郎技師,布川洋一技師,加々美 智部長,
渡邉誠士技師,髙濱友寛技師,廣島貴彦技師

福岡リハビリテーション病院では,隣接する整形外科専門の福岡リハ整形外科クリニックと合わせて,日立製作所社製超電導型1.5T MRI「ECHELON OVAL」および,永久磁石型0.4TオープンMRIの「APERTO Eterna」と「APERTO Inspire」の計3台を導入して,整形外科を中心とする診療に活用している。約120名のリハスタッフをそろえた充実した設備のリハビリテーション施設で整形外科や脳血管疾患後の診療に取り組む同院での,ECHELON OVALを中心にした複数のMRIの運用方法について,検査部の加々美智部長にお話しをうかがった。

本院と整形外科専門クリニックで幅広い診療を提供

加々美 智 部長

加々美 智 部長

同院は,筑前・黒田藩の藩医として代々仕えた原三信の流れを汲み,“400年の歴史”を誇る。1997年に福岡リハビリテーション病院と改称して,整形外科,リハビリテーション科,リウマチ科を中心とする診療をスタート。2010年には,本院に隣接して膝痛・肩痛・腰痛の治療やスポーツ外来を中心とする整形外科専門外来とリハビリ施設を備えた福岡リハ整形外科クリニックをオープンした。本院の診療科も,内科,脳神経外科,神経内科,消化器外科,肛門外科,血管外科,形成外科,歯科と拡充して,診療の充実を図ってきた。また,2004年には,特別養護老人ホーム,ショートステイ,デイサービスなどを提供する総合的な介護保険施設であるリハモール福岡を開設するなど,医療から福祉まで地域に根ざした診療を提供している。特に,リハビリテーションでは,約120名のスタッフと西日本ではトップクラスの広さと設備をそろえ,リハビリプールやドライブシミュレーター,ロボットスーツなどの最新技術も取り入れた診療を行っているのが特徴だ。

診療科目の拡充に合わせて1.5T MRIを含む3台体制へ

画像診断において重要な役割のMRIは,2004年に本院にオープン型のAPERTO Inspireが,クリニックには2010年の開院と同時にAPERTO Eternaが導入された。さらに,診療科の拡大と高度な検査に対応するため,2013年に1.5TのECHELON OVALが導入され,本院とクリニックを合わせてMRI3台体制となった。これらのMRIについて加々美部長は,「当初は関節や骨など整形外科領域の検査がメインであり,広い検査空間を確保でき画質も安定しているオープンMRIを使用してきました。脳神経外科や神経内科など診療科の拡充によって,頭部領域などで高度な検査が求められるようになったことから,新たに1.5Tの高磁場MRIを導入しました」と,その経緯を説明する。

3台のMRIが稼働。左から本院の「ECHELON OVAL」,「APERTO Inspire」,クリニックの「APERTO Eterna」

3台のMRIが稼働。左から本院の「ECHELON OVAL」,「APERTO Inspire」,
クリニックの「APERTO Eterna」

 

広い検査空間と高画質撮像が可能な1.5T MRIを導入

1.5T MRIの導入に当たっては,他社製装置も含めて機種選定を行った結果,ECHELON OVALが選定された。加々美部長は選定の理由について,「やはり当院の診療の中心は整形外科領域であり,機種選定では従来のオープンMRIと同様に,広い検査空間が確保できることがポイントになりました。ECHELON OVALは,横幅74cmの楕円形ボアで広い空間を確保できることと,63.3cmのワイドテーブルで,オープンMRIと同様に観察部位をFOVの中心に置いて撮像できることが決め手になりました」と評価する。
同院のスポーツ外来では,アマチュアからプロまで多くのスポーツ選手を診療している。大相撲九州場所の際には力士のMRI検査も行っているが,ECHELON OVALでは200kg近い体格でも,腰の検査が可能だったという。加々美部長は,「体格の大きな力士の検査ができるのは,おそらくワイドボアのECHELON OVALだけでしょう。力士からも,これなら楽に検査が受けられると好評でした」と述べる。また,ECHELON OVALではテーブル内のSpineコイルとその他のコイルを組み合わせて使用する「WIT RF Coil System」によって検査準備に時間がかからないこと,テーブルの稼働距離が長く,検査時に足側からガントリに入る“フットファースト”の運用が可能なことを評価している。
一方で画質については,体動アーチファクトの低減技術である“RADAR”を活用した検査が有効だという。同院では,肩の腱板損傷や関節唇の断裂疑いの検査の際にRADARを適用しているが,加々美部長は,「MRIは撮像時間が長い上に,肩関節は呼吸移動の影響を受けやすい部位です。さらに,そのアーチファクトが腱板に沿った形で画像に出ることが多く,診断の妨げにもなりますが,RADARを使うことで動きのアーチファクトが低減されます」と述べている。また,頭部撮像領域では,従来のT2強調画像,T1強調画像,FLAIR,拡散強調画像に加えてTOF-MRAやT2*強調画像でもRADARが活用できるため,モーションアーチファクトがなくなっている。さらに,撮像での位置決めをサポートする“AutoPose機能”を使用することで,位置決めのズレが少なく迅速な検査が可能になっている。

オープンMRIによるMR Arthrographyで関節唇を描出

検査部の診療放射線技師は8名で,本院とクリニックの画像検査を担当する。MRIの検査件数は3台合計で月平均480件だが,そのうち約半数がECHELON OVALであり,脳神経外科と神経内科の頭部領域,整形外科では脊椎関連の検査を主に行っている。当初,ECHELON OVALの導入によりAPERTO Inspireはリプレイスされる予定だったが,永久磁石型でランニングコストがかからないことから継続使用となった。APERTO Eternaはクリニックの整形外科外来のオーダを中心に,APERTO Inspireは本院の病棟患者の検査とクリニックのバックアップとして運用されている。加々美部長は,「オープンMRIが2台になったことで,検査依頼が重なった時にもすぐに対応できます。検査のために再び来院する必要がなくなり,患者さんにもメリットが大きいですね」と述べる。
同院では,肩関節の脱臼に伴う関節唇の損傷状態の確認のため,関節腔に造影剤を投与して撮像するMR Arthrographyを行っている。X線撮影用造影剤にガドリニウム造影剤を混合して関節部分に注入し,透視撮影に続いてMR撮像を行う。MR Arthrographyでは,腕を下げて撮像した後,続けてABER位と呼ばれる腕を挙上した状態で撮像が必要なことから,開口径の広いオープンMRIで検査を行っている。加々美部長は,「撮像中に体位の変換が必要になりますので,開口径の広いオープンMRIで検査を行っています。関節鏡などを用いた修復術術前に,MR Arthrographyはなくてはならない情報のため,全例で撮像しています」と述べる。

■症例1:RADAR T2強調像FatSat(ECHELON OVAL)

症例1:RADAR T2強調像FatSat(ECHELON OVAL)

肩関節は,呼吸性のモーションアーチファクトが腱板に重なりやすく,磁場中心から離れているため撮像が難しい。RADARによって動きを抑制し,ワイドボアガントリで肩関節を磁場中心近くにポジショニングできるため画質が向上し,腱板の評価に有用である。
RADAR,T2WI,FatSat,COR,
FOV:160,TR/TE:3421/70,
スライス厚:3mm

 

■症例2:MR Arthrography(APERTO Eterna)

症例2:MR Arthrography(APERTO Eterna)

肩関節腔内にGd造影剤,ウログラフイン,生食,カルボカインを透視下にて注射し,T2強調画像,脂肪抑制T1強調画像(a),ABER位T1強調画像(b)にて関節唇の剥離を評価する。
オープンMRIはABER位がとりやすく,磁場中心で撮像が可能で肩関節の機能撮像に適している。
a:T1WI,FatSat,COR,FOV:200,TR/TE:731/15,スライス厚:4mm
b:T1WI,ABER位,FOV:200,TR/TE:580/13,スライス厚:4mm

 

■症例3:膝蓋骨の亜脱臼疑い(ECHELON OVAL)

症例3:膝蓋骨の亜脱臼疑い(ECHELON OVAL)

T2RELAX Mapにより膝蓋骨軟骨の変性がカラーマップにて評価できる(a)。
RSSG WEは薄いスライスにて描出できるため膝蓋骨軟骨の形態の把握に有用である(b)。
a:T2RELAX Map,AX,FOV:160,TR/TE:2000/12,スライス厚:4mm
b:3D RSSG,AX,FOV:160,TR/TE:16/7.4,FA:25°,スライス厚:1.1mm

 

MRI3台体制で整形外科から脳神経領域まで幅広いニーズに対応

ECHELON OVALには,2016年4月から新しい静音化技術である“Soft Sound ”が搭載された。Soft Soundでは検査時のノイズを従来の1/10に低減可能で,同院でもバージョンアップによって利用が可能になった。Soft Soundの効果について加々美部長は,「撮像が始まってもほとんどわからないくらいの騒音レベルに抑えられています。撮像時間が長いMRI検査では,静かなことは大きなメリットです」と述べる。そのほか,同院では膝関節の自家培養軟骨移植術の評価にT2RELAX Mapを用いた撮像にも取り組んでいる。
同院では今後も,整形外科,リハビリテーションのみならず幅広い診療に対応すべく,1.5TのECHELON OVALを中心にした3台のMRIを駆使して,最適な検査を提供して地域の医療に貢献していく。

(2016年7月6日取材)

 

福岡リハビリテーション病院

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