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日立MRIフォーラム 2016 in Tokyo 
日常診療に役立つMR画像 〜放射線科医はここを診ている〜 脳・脊髄領域を中心に 
吉川 宏起(駒澤大学医療健康科学部教授)
特別講演

2017-4-25


吉川宏起

本講演では,脳・脊髄領域を中心に,MR画像診断において放射線科医がどのように読影しているかについて,経験を基に症例を提示して解説する。

脳病変

●T1強調画像で高信号
T1強調画像で高信号が認められる症例を,放射線科医はどのように読影しているだろうか。図1(60歳代,女性)は,T1強調画像で基底核に高信号が認められ,CT画像でやや石灰化が見られた症例である。近年,ガドリニウム造影剤の脳への沈着が話題になっているが,造影検査歴のない本症例には当てはまらず,T2強調画像でわずかに高信号となることから基底核石灰化であると考えられる。重量パーセント濃度20〜30wt%の淡い石灰化は,表面効果によりT1強調画像で高信号を示すと言われている。
基底核の高信号は肝性脳症でも見られるが,肝移植により肝機能が改善するにつれて信号も低下することが報告されている1)
前述の脳へのガドリニウム沈着については,神田らが2014年に世界に先駆けて発表した2)。ガドリニウム造影剤の投与回数が増えるに従って,淡蒼球や歯状核に多く沈着すると報告している。脳内へのガドリニウム沈着については,腎機能正常者を対象にさまざまな検討が行われており,ガドリニウムが正常blood brain barrierも通過すること3),非イオン性直鎖型キレート製剤でGd3+イオンが錯体から遊離しやすいこと,環状型キレート製剤でも沈着すること4),6回以上の投与で沈着が生じる症例が多いこと,などが報告されている。

図1 基底核石灰化(60歳代,女性)

図1 基底核石灰化(60歳代,女性)

 

●拡散強調画像で高信号
拡散強調画像は,特に急性期脳梗塞の診断に用いられるが,膿瘍や類上皮腫においても有用な情報を提供する。図2の脳膿瘍症例(20歳代,男性)は,拡散強調画像で高信号を示している。ADC mapでのADC値低下を確認し,膿瘍であると診断できる。
類上皮腫は,T1強調画像やT2強調画像では脳脊髄と同等の信号を示すが,拡散強調画像では高信号となることから診断に有用である。

図2 脳膿瘍(20歳代,男性)

図2 脳膿瘍(20歳代,男性)

 

●鞍上槽の囊胞様構造
鞍上槽に認められる囊胞様構造は,ラトケ囊胞であることが比較的多い(図3)。T1強調画像で高信号を示すことが多いが,内溶液のムチン濃度によっては低信号となるケースもある。造影T1強調画像では,被膜が濃染され充実部分は見られない。
小児では,頭蓋咽頭腫の症例で鞍上槽の囊胞が認められることが多い。充実部分がない囊胞としては,クモ膜下囊胞の可能性もあるが,造影検査で部分的に濃染され,小児例であることを踏まえると頭蓋咽頭腫と考えていいだろう。なお,頭蓋咽頭腫はX線検査で石灰化が認められる特徴がある。
また,トルコ鞍上部に囊胞が見られ,それが第三脳室まで連続している症例も多く遭遇する。中脳水道狭窄や松果体囊胞による中脳水道閉塞などにより水頭症を生じることで,第三脳室の圧が上昇して漏斗陥凹が拡張し,トルコ鞍の中に囊胞様となって突出しているのである。

図3 ラトケ囊胞

図3 ラトケ囊胞

 

●脳出血はCTが有利か?
画像診断においては,脳出血はCT,脳梗塞はMRIの拡散強調画像というのが定番となっている。しかし,CTでもわからないようなわずかな出血が,FLAIR画像で高信号に示されることがある。図4は,0.4TオープンMRIで撮像した外傷性出血症例(70歳代,女性)だが,特に脳溝に近い部位の微小な出血では,FLAIR画像が有用であると考えている。

図4 外傷性出血(70歳代,女性,0.4T)

図4 外傷性出血(70歳代,女性,0.4T)

 

●微小脳出血(CMBs)とは?
T2*強調画像で点状低信号として描出される微小脳出血とは何か,という議論が続いている。微小出血がある場合は脳卒中を再発する可能性が高く,また,再発は虚血性よりも特発性脳出血の危険性が高く,特にアジア人に多いという報告5)もあり,注意を払う必要がある。
微小脳出血は,高血圧性細動脈症やアミロイドアンギオパチーを主因とすることが多く,高血圧が少なからず関与していると言える。また,抗血栓薬使用下で頭蓋内出血を招きやすいことから,抗凝固療法の適応について検討する必要があるだろう。
内包後脚部血腫症例では,CTやT1強調画像,T2強調画像,FLAIR画像で内包後脚部に出血が認められた。T2*強調画像では微小出血が多数認められ,血圧コントロールが必須であることがわかる。なお,微小脳出血の検出には磁化率強調画像(SWI)が圧倒的に有用であり,その活用も考えるべきだろう。

●脳血管障害
硬膜静脈洞血栓症は描出しにくい疾患であるが,Patelら6)は,硬膜静脈洞に生じた血栓を,T1強調画像やFLAIR画像,拡散強調画像,T2*強調画像,また造影画像では,造影T1強調画像や造影MRAで描出可能であったと報告している。
同様に画像診断が難しい硬膜動静脈瘻については,井料ら7)が3T装置による高い時間分解能,空間分解能を用いた4D ASL-based MRAにより,非造影でも血管撮影と同様に皮質静脈への逆流を描出できたと報告している。また,SWIが有用との論文8)も報告されている。
動静脈奇形をはじめとした血管奇形についても,MRIでの診断が有用である。静脈奇形などは,プロトン密度強調画像やSWIで放射状に走行するアンブレラサインなどを明瞭に描出することができる。T2*強調画像でもとらえることができ,多房性である海綿状血管奇形では多くの点状低信号が認められる。

●BeamSatの効果
脳外科手術の術前には,Matas法による検査が行われる。これは術中の脳虚血や脳梗塞を予防するため,患側の頸動脈を指で押さえて対側からのクロスフローがあるかを確認する検査で,血管撮影で行われてきた。この検査をBeamSatで代用可能か検討を行った。
左内頸動脈にBeamSatを印加したMRAでは,左側内頸動脈(左側前大脳動脈,中大脳動脈)および右側前大脳動脈は描出されない(図5 a)。左内頸動脈へのBeamSat印加に加え,左頸動脈を指で押さえると,右側内頸動脈からのクロスフローにより両側前大脳動脈および左側中大脳動脈への血流を認めることができた(図5 b)。

図5 BeamSat+Matasの有無の比較

図5 BeamSat+Matasの有無の比較

 

脊髄病変

●Conjoined nerve roots
1つの椎間孔からは一対の神経根が出ているのが一般的だが,まれに複数の神経根が出ているconjoined nerve rootsが見られる。術前には,その有無を確認するため脊髄造影検査が行われてきたが,MRIでも詳細に観察することで確認できる場合もある。また,神経根に微小な神経鞘腫が見られることもあり,詳細な観察が非常に重要である。
椎間孔を適切に描出するには,斜位で撮像する必要がある。3Dで角度を変えて観察することもできるが,画質が十分とは言えないため,撮像時には留意する必要がある。

●低髄圧症候群
低髄圧症候群は,まれな疾患のため診断がつきにくい。脳では造影検査で硬膜が厚くなり,増強効果を示す所見となるためわかりやすいが,脊髄では脳脊髄液の漏出の有無,部位を確認する必要がある。脊髄硬膜外に脳脊髄液が漏出していると,通常は見えない硬膜を確認でき,硬膜外腔にT2強調画像で高信号(液体)が認められる(図6)。造影T1強調画像でも,造影剤の分布から漏出箇所を確認することができる。
Vargasら9)は,自発性頭蓋内圧低下症の治療前のT2強調画像で,硬膜外の静脈が拡張する所見があると報告している。硬膜外には非常に多くの静脈があり,MRIではこれらの静脈もよく観察することが重要である。

図6 低髄圧症候群(40歳代,女性)

図6 低髄圧症候群(40歳代,女性)

 

●脊髄梗塞
脊髄梗塞は,アーチファクトの少ない拡散強調画像により正確な診断ができるようになったが,脳梗塞と比べると小さな梗塞の検出が難しく,さらなる画質向上が期待される。
脊髄動脈は前側に1本,後側に2本走行しており,これらの梗塞はT2強調画像で高信号として認められる。なお,胸髄はアダムキュービッツ動脈から多く栄養されているため,大動脈解離がアダムキュービッツ動脈に及ぶ場合には,脊髄梗塞を生じる危険性が高い。

まとめ

近年,MRIの画質は大きく向上し,さまざまな症例の画像が報告されるようになっている。今後は,人工知能などを活用して読影の見落としを減らすとともに,さまざまな症例画像を診療放射線技師にフィードバックし,画質の向上に取り組んでもらうことが,より良い医療につながっていくと考える。

●参考文献
1)Naegele, T., et al : Radiology, 216, 683〜691, 2000.
2)Kanda, T., et al : Radiology, 270, 834〜841, 2014.
3)McDonald, R.J., et al : Radiology, 275, 772〜782, 2015.
4)Stojanov, D.A., et al : Eur. Radiol., 26, 807〜815, 2016.
5)Charidimou, A., et al : Stroke, 44, 995〜1001, 2013.
6)Patel, D., et al : AJNR, 37, 2026〜2032, 2016.
7)Iryo, Y., et al : Radiology, 271, 193〜199, 2014.
8)Jagtap, SA., et al : Neurology India, 62, 107〜110, 2014.
9)Vargas, M.I., et al : AJNR, 36, 825〜830, 2015.

 

吉川宏起(Yoshikawa Kohki)
1977年 山口大学医学部卒業。同年 東京大学医学部附属病院放射線科に助手として入局。85年 東京大学医学部附属病院放射線科講師,90年 関東労災病院放射線科部長,95年 東京大学医科学研究所放射線科助教授。2003年より現職。


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