技術解説(フィリップス・ジャパン)

2017年6月号

MRI検査のリスクマネージメント

静音化技術と条件付きMRI対応インプラントの安全性

MRI装置の著しい進歩は,高磁場化,高機能化を実現し,多くの施設で臨床応用が行われている。また,これらの進歩と同時に,MRI検査の安全性も重要視され,特に,MRI検査時の騒音および体内インプラント患者の検査においては,その重要性が叫ばれている。本稿では,MRI検査を安全に管理するシステムとして,静音化技術および体内インプラント患者の検査システムについて紹介する。

■静音化技術の取り組み

MRI検査時の騒音対策は,さまざまな技術が開発されてきたが,近年,安全性と検査環境改善への関心から再び注目されている。フィリップスは,“ComforTone”という静音化技術を開発し,安全性と検査環境改善を実現させた。ComforToneは,gradient wave formを可変させる手法を用いており,コントラストごとにそれぞれ最適なフォームを採用することによって画質や撮像時間のトレードオフを最小限にし,最大限の静音効果が得られるように設計されている。ComforToneは,位置決め画像やリファレンススキャンをはじめとした,すべてのシーケンスに対応する静音化技術で,一連の検査を通して最大80%の検査音ノイズを低減することができる。この技術により,検査時の不安から発生する不意の挙動抑制,沈静下の小児検査など,安全な検査環境の構築に期待できる(図1)。

図1 ComforToneの概要

図1 ComforToneの概要

 

■条件付きMRI対応インプラントの安全性

2012年から条件付きMRI対応ペースメーカが発売され,早急な対応が求められている。条件付きMRI対応インプラント患者のMRI検査では,インプラントの安全条件に準拠し,撮像パラメータの設定を行う。この場合,MRI対応インプラントに指定される条件は,比吸収率(以下,SAR),磁場の時間的変化率(以下,dB/dt),最近では,SARに代わってB1+rmsであり,これらの条件をコンソールのユーザーインターフェイスで確認し,撮像条件の調整を必要とした。この操作は煩雑で,オペレータのスキルや経験年数を必要としており,現在まで大部分のMRI装置では設定時間を要していた。このような条件付きMRI対応インプラント患者のMRI検査を,安全かつ簡便に行うことができる機能が“ScanWise Implant”である。ScanWise Implantでは,まず,患者基本情報登録中にインプラントの存在が示された場合,MRI条件付きインプラントに関連するガイダンスが起動する。オペレータはステップバイステップのガイダンスに沿って,インプラントメーカーの条件値であるSAR,B1+rms,dB/dtなどの入力を行う。条件値入力後,撮像プロトコール内すべてのシーケンスに対し,RF出力および傾斜磁場出力を管理する,実績ある手法により撮像パラメータは最適化される。撮像パラメータの最適化は,フィリップス独自のMRIシーケンス用sequence orderオブジェクトモデルを使用し,予測に基づいて実際のスキャン施行,およびその結果としてRFおよび傾斜磁場への暴露を評価し行っている(図2)。
ScanWise Implantは今日,インプラント使用患者のMRI検査が必要とされる場合に,オペレータが直面する複雑なワークフローへのソリューションである。ScanWise Implantは,IECおよびISOがFDA,MRI製造メーカー,インプラント製造メーカーとともに進める標準化活動へのフィリップスの積極的な関与から開発され,上述したフィリップス独自の技術により,オペレータのスキルや経験年数に依存することなく,安全かつ簡便に検査を行うことができる機能である。

図2 ScanWise Implantのインターフェイス

図2 ScanWise Implantのインターフェイス

 

安全な検査環境構築のための技術として静音化技術であるComforToneと,条件付きMRI対応インプラントの安全性としてScanWise Implantを紹介した。今後のMRI検査における安全性を担保するための技術として期待したい。

 

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