New Horizon of 4D Imaging(ザイオソフト)

2013年7月号

JRC2013 ziosoft/AMIN Seminar Report 超四次元画像PhyZiodynamicsテクノロジーによる定量解析の可能性

PhyZiodynamicsを用いた包括的な心機能診断 〜心筋局所壁運動の定量化:ストレインの臨床応用

真鍋徳子 氏(北海道大学病院放射線診断科講師)

真鍋徳子 氏

真鍋徳子 氏

第72回日本医学放射線学会総会が、2013年4月11日(木)〜14日(日)の4日間、パシフィコ横浜で開催された。ザイオソフト/アミンは、最終日の14日に共催のランチョンセミナー27において、「New Horizon of 4D Imaging〜超四次元画像PhyZiodynamicsテクノロジーによる定量解析の可能性」を開催した。セミナーでは、山下康行氏(熊本大学大学院生命科学研究部放射線診断学分野教授)を座長として、真鍋徳子氏(北海道大学病院放射線診断科講師)、森谷浩史氏(大原綜合病院附属大原医療センター画像診断センター長)が講演した。PhyZiodynamicsによる心機能解析と呼吸動態解析への応用についての講演を“特別編”として誌上採録する。

 

 

[‌ziostation2による包括的な心臓MRI解析]

心臓MRIの利点は、検査の低侵襲性や高いコントラスト分解能、空間分解能が挙げられる。再現性が高く、被ばくがないため繰り返し検査を行うことが可能であり、“ワンストップショップ”として1回の検査で多くの情報が得られる。
心機能異常は、代謝異常から拡張能異常、心筋血流異常、局所収縮能異常、心電図異常、胸痛、梗塞と段階的に進行する。ziostation2による包括的な心臓MRI解析では、左室容量解析、心筋血流計測、遅延造影定量、局所壁運動評価、拡張能評価などによって、さまざまな段階の心筋障害の程度を定量的にとらえることが可能である。心臓MRIでは、遅延造影が心筋バイアビリティ評価のゴールドスタンダードとされており、ziostation2の“MR遅延造影解析”では、造影されている部分を定量評価することで、心筋全体に占める梗塞の割合を数値として求めることが可能だ。
しかし、遅延造影でわかるのは虚血による心機能異常の最終段階であり、さらに早い段階で異常がわかれば早期に治療が可能になる。そこで、ziostation2の“MR心筋ストレイン解析”を用いた、梗塞や心電図異常よりも先に起こる局所壁運動異常の評価、また、PhyZiodynamics技術により可能になった、さらに早い段階で起こる拡張機能異常の評価について報告する。

[‌タギングによる心筋ストレイン評価]

MRIによる局所壁運動評価は、通常のシネ画像に加えて、タギング法(tagging法)を用いて解析を行っている。タギング法では、心電図のR波の直後に格子状の“タグ”と呼ばれる磁気標識をつけ、その形態変化をシネ画像で追跡することで、動きの変化を観察できる。1980年代後半に開発されたが、3T MRIによってタグが心周期の最後まで持続することで評価がしやすくなり、近年再び注目されている。タギング法による壁運動評価では、拡張期から始まる1心周期の曲線が得られ、収縮期にピークをとる値がピークストレインと呼ばれている。
ストレインは、心臓の拡張末期の2点間の距離に対して、収縮末期にどれだけ縮んだかの割合を示す。左室の心筋は、三層構造になっており、最内層は心臓の長軸方向に走る筋肉からなる。その外側の中層は、心臓を取り囲むような輪状筋が走っている。この長軸方向のlongitudinal strainと、輪状筋方向のcircumferential strainを測ることで、局所心筋壁運動が詳細に評価できる(図1)。

図1 心筋のストレインについて(参考文献:Oyama-Manabe, et al. Eur Radiol 2011;21(11):2362-8)

図1 心筋のストレインについて
(参考文献:Oyama-Manabe, et al. Eur Radiol 2011;21(11):2362-8)

 

[‌正常心筋と梗塞域のストレインによる定量比較]

正常例の心筋ストレインは、左室、右室のどこにROIを取っても、ストレインのパターンは均一で、ピーク値も近いことがわかる。しかし、梗塞域のストレインを正常心筋と比較してみると、図2のように側壁の正常心筋()と中隔の梗塞域()の比較では、正常に比べて梗塞部位でストレインが低下しており、低下の程度を定量化することも可能である。
正常心筋と心内膜下梗塞、そして貫璧性梗塞を比較すると、心筋の最内層を走る縦走筋の線維方向(longitudinal strain)は、心内膜下梗塞の段階から障害されていることがわかる。対して中層の動きを反映したcircumferential strainは、梗塞の程度に応じて段階的に障害されており、解剖学的な左室の心筋線維の走行と梗塞の範囲が一致して、ストレインに反映されていることがわかった。ガドリニウム造影剤が使用できない高度腎機能の低下例では、ストレイン法によって非造影で梗塞の程度を予測可能だと考えられる。

図2 正常域と異常域のストレインの違い

図2 正常域と異常域のストレインの違い

 

[ストレイン解析の虚血への応用]

次に、虚血心筋でのストレインの変化を評価した。図3は、遅延造影で側壁に染まり()があり梗塞が認められるが、負荷と安静時のパーフュージョンでは、側壁の梗塞域とは別に下壁中隔にかけて虚血が認められる()。虚血部分の下壁中隔と前壁の正常部分のストレイン解析を行ったところ、負荷時と安静時の比が、虚血心筋では正常心筋に比べて低下していた。Korosoglouらの論文によれば、負荷時と安静時のストレインの比(Strain Reserve)のカットオフ値を0.94とした場合、冠動脈狭窄病変の検出能は感度71%、特異度92%と報告されている。この症例の場合、虚血部位では0.86、正常では1.20であった。虚血心筋の評価もストレイン解析によって可能であり、腎機能が低下して造影剤が使用できない場合でも施行可能と考えられる。

図3 ストレイン解析の虚血への応用

図3 ストレイン解析の虚血への応用

 

[‌ストレイン解析の右室への応用]

従来、壁が薄い右室では、タグの評価が困難とされてきたが、ziostation2では左室と同様の右室の解析機能が搭載されており、これによって右室のストレイン解析(W.I.P.)が可能になっている。1.5Tでもタグの評価が可能で、さらに3Tを使うことでタグのサイズを縮めることができる。図4は、右室肥大が認められる肺高血圧症の画像(下)だが、右室の壁に肥厚がないボランティアの右心機能(上)と比較したところ、左心機能(LVEF)には差がないが、右心機能は肺高血圧症で低下しており、右室の壁運動のストレイン解析でも同様に低下が認められた。

図4 ストレイン解析の右室への応用

図4 ストレイン解析の右室への応用

 

[‌PhyZiodynamicsによる拡張能評価]

次に局所収縮能よりも早い段階で生じる拡張機能障害のMRIによる評価について述べる。
拡張能の評価では、心臓の拡張期における左室容量曲線を時間微分して得られた曲線から、拡張早期に一番高い値を取る“peak filling rate(PFR:最大充満速度)”とPFRまでの時間を示す“time to peak filling(TTPF)”が指標となり、PFRが低下しているかどうかが重要となる(図5)。PFRを正確に求めるためには、収縮末期から拡張早期を正確に捉える時間分解能(40msec)が必要となる。時間分解能が低いと撮像ポイントが少なくなり、拡張能指標を過少評価してしまうことになる。しかし、時間分解能を上げるとマルチスライスが撮像できなくなり、息止めが長くなることで、検査時間が延長するという問題があった。

図5 MRIでの拡張能評価

図5 MRIでの拡張能評価

 

そこで、PhyZiodynamicsによって時間分解能の低いデータを補完することで、収集ポイントの不足を補うことができるかどうか検証した。PhyZiodynamicsは、ザイオソフトの画像解析のための基盤技術で、独自のレジストレーション技術とインターポレーションによって、異なる形状の2点間の補完を可能にしている。
同一患者で20phase、60phaseそれぞれの左室のシネ撮像を行い、20phaseのデータをPhyZiodynamicsで補完したところ60phaseのデータに近い値が得られた。それぞれの容量曲線を時間微分したPFRの値に20phaseと60phaseでは明らかな差があり、補完データではオリジナルに近い値を取ることがわかった(図6)。数値を比較してみると、拡張能で問題となるPFRは、20phaseでは198.3mL/sと過少評価しており、補完データでは60phase(261.7mL/s)に近い値(255.3mL/s)が得られていた。

図6 左室容量曲線から求めた微分曲線(参考文献:Journal of Cardiovascular Magnetic Resonance 2009, 11: 30 2008,10:36)

図6 左室容量曲線から求めた微分曲線
(参考文献:Journal of Cardiovascular Magnetic Resonance 2009, 11: 30 2008,10:36)

 

[‌まとめ]

ziostation2では、左室容量解析、心筋血流定量、遅延造影定量に加えて、タギング像からの局所ストレイン評価によって梗塞や虚血の評価が可能であり、従来は難しかった右室の壁運動評価も可能である。さらに、PhyZiodynamicsの補完技術によって時間分解能の高くない通常のシネ画像から拡張能評価の指標も算出することが可能で、包括的な心機能評価が可能になると考えられる。

 

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