技術解説(ザイオソフト)

2016年4月号

Abdominal Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

腹部領域における「Ziostation2」の最新アプリケーション

安達 雅昭(臨床応用開発グループ)

■Computed DWI

computed DWI(computed diffusion-weighted MR imaging:cDWI)は,Blackledgeらが2011年に報告した1)方法で,2つの異なるb値のDWIを基に任意のb値の計算画像を作成する方法である。算出方法は,2つのb値の実測点を結び,延長してより高いb値の画像を計算するというものである。通常の撮像にてhigh b valueの画像を得る場合には,バックグラウンドのノイズの増加によりSNRが低下し,目的の組織コントラストも低下してしまうが,cDWIを用いたhigh b valueの画像は,ノイズが少なくコントラストの良い画像が得られるとされている。しかし,cDWIは,高いb値の画像にした場合,高輝度ノイズが発生する。この高輝度ノイズは,診断をする上で障害になる懸念事項となるため,「Ziostation2」のオプションアプリケーション“Computed DWI”には,さらにcDWIを表示する際に,ADCの値を用いて皮膚や骨髄など,DWIの観察に不要な高信号ノイズを抑制する“ADC Threshold”機能を搭載し,目的の組織をより明瞭に観察することを可能とした。臨床例で見ると,図1のように,b=1000s/mm2(cDWI)では高輝度ノイズは見られないが,b=1500s/mm2(cDWI)になると高輝度ノイズが発生しているのがわかる。これをADC Threshold機能を使用し,ADC<0にすることで,観察に不要な高輝度ノイズを抑制することが可能である。また,図1の下部にあるb値調整スライダーは,固定されたb値で撮像された画像の読影ではなく,症例や疾患に合わせて観察しやすいb値を読影しながらリアルタイムに調整が行える手段としても期待できる。さらに,ADCマップを同時に計算し,形態画像,cDWI画像,ADC マップを比較してフュージョン表示することも可能である(図2)。

図1 ADC Threshold機能による高輝度ノイズの抑制

図1 ADC Threshold機能による高輝度ノイズの抑制
a:cDWI b=1000s/mm2
b:cDWI b=1500s/mm2
c:cDWI b=1500s/mm2(ADC<0をカット)

 

図2 Computed DWI

図2 Computed DWI
a:b値=50s/mm2 b:cDWI b値=2000s/mm2
c:ADCマップとのフュージョン d:ADCマップ

 

■ADCヒストグラム解析

“ADCヒストグラム解析”は,skewness(歪度)*1とkurtosis(尖度)*2を求めることにより,化学療法などの治療効果判定に生かすことが可能である。従来のADCの測定での問題点は,関心領域(ROI)を置いて計測することにより,歪みの異なる画像を計算することであったが,skewness,kurtosisという全体の分布を,グラフの形状を基に診断することで,より正確な診断をサポートできる。ボリューム内のADCの平均値を利用した評価に加え,腫瘍などの治療効果をADCのヒストグラム分布の形状変化から求めたskewnessやkurtosisを利用して経時的な評価が可能である(図3)。図4は,治療前後の経過観察の画像だが,右のグラフのskewnessを見ると,左の偏心(赤)から右へ偏心(緑)しているのがわかる(図4 b)。このヒストグラムにより治療効果が良好であることが判断できる。

図3 Skewnessとkurtosis

図3 Skewnessとkurtosis

 

図4 ADCヒストグラム解析

図4 ADCヒストグラム解析
a:治療前(左),治療後(右) b:治療前後のヒストグラムの比較表示

 

■3D解析:腎臓抽出機能

腎囊胞などで巨大化している腎臓のボリューム計測を行う施設が近年増えつつある。これは,サムスカ錠(大塚製薬社製)などの腎臓に作用して尿量を増やし,体内の余分な水分を排泄することにより,体のむくみをとる薬剤の適応を決定するために需要がある。薬の添付文書には,以下のように記載されている。
(1) 両側総腎容積が750mL以上であること
(2) 腎容積増大速度がおおむね5%/年以上であること
そのニーズに沿った形で,腎臓を選択的に抽出する機能を開発し,最新バージョンのZiostation2に標準搭載した(図5)。腎臓の解剖学的情報を認識しているため,非造影の腎臓に対して,ワンクリックで抽出をすることが可能だ。このように,Ziostation2は常に現場のニーズ,多様化する医療現場の声を基に,最新の機能提供を行っている。

図5 腎臓抽出機能

図5 腎臓抽出機能

 

■3D解析:仮想ステント機能

近年のインターベンション技術は日進月歩で新しいデバイスが発表され,より良い治療成績が望まれている。特に,ステント治療においては冠動脈のみならず,脳血管,頸部,大動脈から末梢血管まで,さまざまな領域で使用されているのが現状だ。前項の腎臓抽出機能同様,最新バージョンのZiostation2から標準搭載された仮想ステント機能は,術前に留置予定のステントを置くことが可能であり,より直感的に術前のシミュレーションを行うことができる。図6はステントグラフトの術前計測だが,このように,複数のステントを入れる場合にどのデバイスでどこまで置けるかというのが直感的に判断できる。
また,各施設にて頻繁に使用するステントを登録しておくこともできるので,デバイスの選択も容易になる。

図6 ステントグラフト術前シミュレーション

図6 ステントグラフト術前シミュレーション

 

■CT肝臓体積測定:非剛体位置合わせ機能

肝切除術は,一般的に多くの病院で行われているが,“CT肝臓体積測定”には,新たに非剛体位置合わせ機能を搭載した。これにより,CT間の位相の違いによる位置ズレを合わせるだけではなく,肝臓の予備能を考慮した切除範囲を評価するためのアシアロシンチグラフィとのフュージョン表示においても,非剛体位置合わせを行うことで,より正確な肝機能の術前,術後評価が可能になった(図7)。また表示法として,サーフェスレンダリングにも対応し,通常のボリュームレンダリングに比べ,血管走行を容易に把握することが可能である(図8)。

図7 非剛体位置合わせ

図7 非剛体位置合わせ
a:位置合わせ前
b:位置合わせ後
c:位置合わせ前
d:位置合わせ後

 

図8 サーフェスレンダリング表示とインターフェイス

図8 サーフェスレンダリング表示とインターフェイス

 

*1 skewness(歪度)とは,正規分布と比較して,左右対称であるかどうかで分布の偏りを表す指標。
*2 kurtosis(尖度)とは,分布の尖り具合によって,データが平均の周辺に集中する程度を表す指標。

●参考文献
1)Blackledge, et al. : Computed diffusion-weighted MR imagingmay improve tumor detection. Radiology, 261・2, 573~581, 2011.
2)高原太郎 : Ziostation2上で動作するComputed
DWI用プロトコルの開発. INNERVISION, 29・9, 2014.

 

●問い合わせ先
ザイオソフト株式会社
〒108-0073
東京都港区三田1-4-28
TEL:03-5427-1921
http://www.zio.co.jp

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