放射線治療統合管理システム「ARIA OIS」の使用方法紹介
Varian Oncology Summit 2022

2022-11-15


座長:小玉 卓史(東京ベイ先端医療・幕張クリニック医療技術部医学物理室)

 

ARIA OIS(Oncology Information System)によるVCP(Visual Care Path)の運用例
樽谷 和雄(関西労災病院放射線治療科放射線品質管理室)

樽谷 和雄(関西労災病院放射線治療科放射線品質管理室)

放射線治療情報の統合管理システムである「ARIA OIS」は,治療RISを介在させないシンプルなシステム設計が特長である。HISとの連携によって,ARIA OISでデータの集中管理が可能なほか,モニタ数を削減できるためデスクトップ周りの省スペース化を図ることができる。以下では,ARIA OISの利点を生かした活用として,ペーパーレス運用と,視覚的なタスク管理を可能にするツールである“Visual Care Path(VCP)”を用いた運用について紹介する。

当院では,操作室の中央に大画面モニタを設置して,ARIA OIS全体を管理している。2台ある放射線治療装置のコンソール脇に,ARIA OISのモニタを2面ずつ設置し,それぞれに“Time Planner”と“Treatment Preparation”を表示して,主に看護師が利用している。Time Plannerでは,新規プラン,治療終了,定位放射線治療(SRT)のプラン,プラン変更などを色分けしており,スケジュールを視覚的に把握できるようカスタマイズしている。また,Treatment Preparationには,申し送り事項を記載できる“ジャーナルメモ”,放射線治療計画装置「Eclipse」で設定された線量の分布状況をグラフ化し自動表示する“コース概要”,過去画像を参照しながらの治療を可能とする“Offline Review”などの機能があり,当院ではこれらを活用することでペーパーレス化を図った(図1)。

図1 ARIA OISで患者情報を管理

図1 ARIA OISで患者情報を管理

 

VCPは,タスク管理とワークフローを視覚化できることが大きな特長であり,当院では約6年前から活用している。VCPの画面では,縦のレーンに職種,横軸には日付を設定しており,治療の進捗状況をリアルタイムに把握することができる。当院のワークフローのテンプレートは,「基本」「緊急照射」「IMRT」の3種類あり,いずれかをVCPの画面にドラッグ&ドロップすることで,タイムラインに沿ってタスクが表示される(図2)。各ユーザーホームのタスクリストからタスクをクリックすると,VCPとリンクされているドキュメントやEclipseなどの機能が立ち上がり,治療計画の指示書作成,CT撮影や画像取り込み,治療計画作成,照射オーダ発行,照射スケジュール確認,治療計画の最終確認などが行えるため,治療中の手順の確認や漏れなどもなく治療を完遂することができる。当院では,オーダ登録をVCPで行っているのが特徴的である。事前に登録してある245のオーダパターンから必要なものをVCPの画面にドラッグ&ドロップするだけでオーダが自動発行され,HISにも登録される。また,当院では1回目の治療後に画像承認のタスクを設定しており,医師がOffline Reviewで確認を行う。その際に異常を認め,オフライン修正を行った場合は,コンソール側にダイレクトにアラートを指示することが可能であり(図3),これはARIA OISならではの非常に良い機能であると考える。

図2 当院におけるVCPの一例

図2 当院におけるVCPの一例

 

図3 オフライン修正時のアラート指示

図3 オフライン修正時のアラート指示

 

ARIA OISの運用 ─現状と課題─
白井 真理(島田市立総合医療センター診療放射線室)

当院では,2021年5月の新病院の開院に伴い,放射線治療装置と治療計画用CTが更新され,治療RISとしてARIA OISが導入された。旧病院では治療RISを使用しておらず,ゲートウエイPCを介して診断RISで治療受付や会計の情報をやり取りしていたが,新病院では電子カルテや医事システムとARIA OISを接続し,直接やり取りができるようになった。また,旧病院で運用していた紙カルテを廃止した。

治療RISの導入に当たっては,HIS / PACSとの連携〔患者基本情報の取得,治療サマリ(線量分布を含む)のWeb配信〕,照射オーダ発行,患者受付・実施入力・会計情報転送,照射録・各種統計データ出力,放射線治療症例全国登録(JROD)への対応,照射予約表・バーコード出力,旧病院のARIAデータの引き継ぎ,端末数の増加,モバイル運用,固定具の認証,画像誘導の撮影条件記録・線量管理,導入費用とランニングコストなどについて検討。上記の多くをカバーでき,経済性にも優れたARIA OISを選定した。

ARIA OISを導入後,VCPを活用してペーパーレス化をめざした。現状ではレポーティングツール“AURA”を使いこなせていないため,試行錯誤の結果,他院での運用事例を参考に, ARIA OISに搭載されたExcelを用いて患者ごとに治療情報一覧のファイルを作成し,ARIA OISと併用することとした(図1)。このファイルでは必要な情報を一覧表示できるほか,日々の照射における申し送り事項を入力可能であり,スタッフ間の情報共有に役立てている。また,ARIA OISでは照射後に会計情報の画面が自動で立ち上がるが,Excelファイルと突き合わせることで,ダブルチェックを行う運用としている。Excelファイルは,一連の照射が終了後,仮想プリンタ“ARIA eDoc”にて,患者IDに紐付いたPDFとしてARIA OISのデータベースに保存することで,「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」における「電子保存の3基準」を満たしている(図2)。

近い将来,Excelを使用せずにARIA OISの機能だけで紙カルテでの運用を凌駕することをめざしている。そのために活用したい機能の一つが問診などの入力アプリケーション“Questionnaires”である。初診時の情報や食事の指示などを簡単に入力可能であり,看護師や事務スタッフが使用することを想定している。また,“Dynamic Document”では,治療計画作成後に,診療放射線技師や物理士が患者治療情報を簡単に登録することができる。  

ARIA OISはポテンシャルの高いシステムであるが,スムーズに活用するためには,あらかじめテンプレートを作り込むことがカギとなると考える。

図1 Excelによる患者別治療情報一覧

図1 Excelによる患者別治療情報一覧

 

図2 ARIA eDocによる患者別治療情報の電子保存

図2 ARIA eDocによる患者別治療情報の電子保存

 

放射線治療統合管理システム「ARIA OIS」の使用方法
遠山 尚紀(東京ベイ先端医療・幕張クリニック医療技術部医学物理室)

遠山 尚紀(東京ベイ先端医療・幕張クリニック医療技術部医学物理室)

本講演では,当院で活用するARIA OISのさまざまな機能を紹介する。

入力内容の統一にはQuestionnairesが有用である。リスト,チェックボックス,自由記載などの入力項目をユーザーがカスタマイズできるほか,VCPに紐付けた設定が可能なため,当院では患者固定具やCT情報,計画確認リストをQuestionnairesで運用している。

AURAは,ARIA OISのサーバ内の情報を自由に引用してレポートを作成する機能である(図1)。予約,線量処方,輪郭,治療計画,照射履歴などの患者情報を集約し帳票や画面に一括表示できるほか,レポートからレポートに患者情報を連携して表示することや,Questionnairesで入力した情報の引用も可能である。院内ネットワーク上のどの端末からでもWebブラウザでレポートを表示できるため,院内の情報共有に役立つ。また,VCPでは,患者数が増加するとタスクの進捗管理が行いづらくなるため,当院ではAURAのレポート機能を使用し一覧表示している。

診療放射線技師法で義務づけられている治療の照射録およびIGRTの位置照合の照射録は,AURAを用いて自動作成を行っている。ARIA OIS内の画像のヘッダーから撮影情報を抽出可能なほか,他社の位置照合装置などで取得した画像をサーバにインポートし,照射録を自動作成することも可能である。

患者固定具情報は,当院ではQuestionnairesで入力している。治療室で当日の治療患者一覧から患者を選択すると,自動的に固定具情報やプラン番号,写真などの情報がモニタに表示されるため,診療放射線技師はその情報を見ながら固定具の準備を進めることができる。

医師が入力を行う処方線量登録においては,多くの場合,治療RISと放射線治療計画装置のそれぞれに情報を登録する必要があり,また,その2つは紐付いていない。ARIA OISでは登録した処方情報がEclipseでそのまま引用されることが可能となる。処方線量登録画面にて,部位や回数,処方体積,総線量などを入力できるほか,治療頻度の高い部位については処方線量をテンプレートから引用して簡単に設定することができる。

図1 自由自在なレポート機能AURA

図1 自由自在なレポート機能AURA

 

仮想プリンタARIA eDocでは,計画サマリ,計画確認シート,計画キャプチャ画像,検証レポートなどの各種文書をワンステップで自動的にARIA OIS内のドキュメントワークスペースに保存することができる(図2)。一般的な治療RISでは「患者フォルダへの保存」「治療RISへの登録」という2つの手間を要するが,作業が1つになったことで登録ミスがなくなり,効率化が図られた。

上記のほか,当院ではARIA OISとEclipseの情報を“Eclipse Scripting API”により引用しながら,寝台移動量算出,位置照合結果記入に利用するExcelシートの作成も行っている。これにより,診療放射線技師が行う照射前の準備の時間が大幅に削減された。

図2 ARIA eDocによる文書管理の効率化

図2 ARIA eDocによる文書管理の効率化

 

旧治療RISデータの移行や参照システムの構築には,“Document Service API”を利用することができる。当院では,旧治療RISの情報をrobotic process automation(RPA)ソフトウエアを用いて操作を自動化した上でファイル出力またはCSV出力し,テキストデータについてはbusiness intelligence(BI)ツールを用いて,例えば患者リストから特定の治療を行った患者のみを抽出し参照できるシステムを構築した(図3)。また,旧治療RISに登録されていたPDFや画像などの情報は,Document Service APIを用いてARIA OISの文書管理ドキュメント内に自動保存することで,過去のデータベースを参照することなく運用できている。

図3 Document Service APIを利用した旧治療RISのデータ移行および参照システム構築

図3 Document Service APIを利用した旧治療RISのデータ移行および参照システム構築

 

画像照合用ソフトウェアARIA Offline Review:医療機器認証番号 227ADBZX00084000
放射線治療計画用ソフトウェア Eclipse:医療機器承認番号 22900BZX00265000


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