「本格的に使い始めたのは,この病院に赴任して整形外科の手術台帳を電子化したのが最初です。手書きの手術申込書が読みにくいという要望があって,FileMakerでフォーマットを作成しワープロがわりに使っていました。そこから,自分たちの手術予定を管理し,外来や病棟で共有して参照できるように発展していきました」
その後,病院機能評価認定の要件から,全科で共通の退院サマリが必要となり,カルテ管理部会で検討した結果,整形外科で運用していたFileMakerの退院サマリ,入退院管理のシステムを全科に拡大して構築することになり,FileMakerの全病院的な利用に発展した。
手術室の進捗状況のステータス管理は,患者サービスの向上だけでなく,院内各部署からの参照を可能にしたところ,放射線部や病理部,輸血室などで手術の状況がわかることで,業務の予定が立てやすくなったと井上部長は言う。「今までは,進捗状況がわからず待機しているしかなかったのが,必要とされるタイミングを予測できるようになって予定が立てやすくなりました」
「電子カルテだけでは,すべてをカバーできないことはわかっていましたので,導入過程で電子カルテと,FileMakerで構築する部分の業務の切り分けをする予定だったのですが,時間的な問題で十分な検討ができませんでした。そこで,まず最低限必要な退院サマリだけはFileMakerで継続して運用することにして,電子カルテと連携した新たなシステムを構築することにしました」
構築にあたっては,基幹系のシステム連携で多くの実績を持つ(株)ジェネコム〈東京〉が電子カルテとのデータ連携の開発を担当し,稼働後の保守・管理を地元の(株)ユビキタステクノロジー〈大分〉が行うことになった。ユビキタステクノロジーのSD事業部第2システム開発課の伊東岳課長は「病院情報システムの保守・管理の業務委託を受け,電子カルテと連携したFileMakerの運用を中心に継続的な開発を担当しています。当社はFileMakerと電子カルテのシステム連携は経験が少なく,当初の開発はジェネコムの協力を得て,その後の日常的な管理と運用は弊社で進める体制になっています」と語る(ジェネコムの開発はコラムを参照)。

ナースステーションでは,FileMakerで構築した物品管理のシステムを活用

伊東 岳氏
「電子カルテが対応できない部分で,院内で必要とされる機能をFileMakerでカバーしていくことが,第一の目標です。例えば,電子カルテで蓄積されたデータから,特定の麻酔科医が担当する手術の予定だけを一覧するという“横串を刺す”仕組みがありません。これを電子カルテ側で用意するにはカスタマイズになり時間と予算が必要ですが,電子カルテとデータ連携ができればFileMakerで簡単に作成できます」
井上部長にFileMakerによるユーザーメードのメリットと,基幹システムとの連携のポイントを聞いてみた。
大分県立病院では,今後もパートナーと協力して,電子カルテとの連携を深めてユーザーメードのメリットを活用したシステムをめざして開発を進めていく予定だ。
大分県立病院では,電子カルテシステムHOPE/EGMAIN-GX(富士通)およびデータウエアハウス(DWH)とFileMaker Proの連携を行っています。連携には,共通のAPIであるODBCを使用しています。FileMakerには,ODBCを用いてRDBMS(Relational DataBase Management System)のテーブルからレコードを取り込んだり,RDBMS側のテーブルに対してデータ更新を行う機能が実装されています。データ取込作業は,FileMaker Serverによって行われ,あらかじめ登録されたスケジュールに従って,自動的に処理を実行します。これによって,患者基本情報,入退院情報,個人病名情報,紹介元履歴情報,手術情報などを定期的に取り込みます。
また,大分県立病院では,電子カルテ系DBとDWH系DBの2系統が存在することから,FileMaker側では,どちらのDBからもデータを取得する必要があり,これらのDBに対する取込処理を行うスクリプト(自動処理)を作成して対応しています。
院内共通の各サマリ系FileMakerDBのレコード作成は,電子カルテとDWHからFileMaker側へデータが自動的に取り込まれたタイミングで行われます。取り込まれたデータは,取り込み専用のFileMakerDB(電子カルテ連携基盤:入退院情報.fp7など)に蓄積した後に,退院サマリ(summary.fp7)などのサマリ系のFileMakerDBに必要なデータ(患者ID,サマリ種別,入退院情報プライマリキー)をコピーします。同時に,患者基本情報や病名マスタ,術式マスタなどのマスタデータから必要な関連情報が参照されます。
FileMakerで作成された退院サマリは,最終的に富士通の文書管理システム(Medoc)で管理されますが,FileMakerから退院サマリのPDFと属性情報が記録されたCSVファイルをエクスポートし,そのPDFとCSVファイルをMedocが自動的に吸い上げ,以降はMedocで退院サマリの確認が行えます。
ファイルメーカー株式会社
東京都千代田区二番町11-5 番町HYビル
医療分野でのユーザー事例 : www.filemaker.co.jp/medical
ライセンスご相談窓口
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(インナービジョン2011年7月号 別冊付録 ITvision No.24より転載)


