第15回富士通病院経営戦略フォーラム
ゲノム・オミックス医療による個別化医療や次世代電子カルテへの取り組みを議論

2014-5-19

富士通

ヘルスケアIT


第15回富士通病院経営戦略フォーラム

第15回富士通病院経営戦略フォーラムが,2014年5月15日(木),東京・千代田区の東京国際フォーラムで開催された。15,16日の両日に同会場で開かれた“富士通フォーラム 2014”の中で医療特別セミナーとして行われたもの。今年のテーマは,「間近に迫る個別化医療・先制医療 その現状と将来の展望〜ゲノム電子カルテの到来は近いか?」。プログラムは,基調講演として東北大学教授で東北メディカル・メガバンク機構三世代コホート室長の栗山進一氏が「東北メディカル・メガバンク事業とその目指すもの 〜今の医療と近未来の医療」を講演。続いて,パネルディスカッションとして,最初にモデレーターの田中博氏(東京医科歯科大学教授)が「ゲノム・オミックス医療の到来に向けて」を講演し,林崎良英氏(理化学研究所プログラムディレクター),柴田龍弘氏(国立がん研究センター分野長),宮田満氏(日経BP社特命編集委員)の3名のパネリストによる講演,パネルディスカッションが行われた。また,富士通フォーラムの展示会場では,“次世代医療ICT基盤の取り組み”としてゲノム解析の活用や個別化医療に対応した富士通の取り組みの紹介,ライフ&コミュニティーコーナーで“高齢者を皆で支えあう社会へICTで貢献”として「高齢者ケアクラウド 往診先生」などのソリューションを展示した。

病院経営戦略フォーラムの会場風景

病院経営戦略フォーラムの会場風景

富士通フォーラムの展示会場では,未来医療開発センターの展開をアピール

富士通フォーラムの展示会場では,
未来医療開発センターの展開をアピール

 

基調講演の「東北メディカル・メガバンク事業とその目指すもの〜今の医療と近未来の医療」では,公衆衛生学,分子疫学が専門で東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 三世代コホート室長である栗山氏が,東北メディカル・メガバンク事業の概要と,その中で次世代のための復興・研究事業として取り組まれている三世代コホート調査について紹介した。東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)では,東日本大震災の被災地を含む宮城県,岩手県の住民に対して“医療者の確保・育成,地域医療の再建”といった今の世代に対する復興事業と,“長期健康調査”,“健康に関する最先端の研究と次世代医療の開発”などの次世代のための復興,研究事業を展開している。現世代に対する支援としては,医療過疎の地域に医師が無理なく,常勤できるような仕組みを構築する「循環型医師支援システム」などを提供。次世代に向けた事業では,長期健康調査,バイオバンク,ゲノム解析とデータベース化の事業を展開する。長期健康調査事業の中の三世代コホート調査は,妊婦を基点にその父親と生まれてくる子供,子供の兄弟,そして祖父母の三世代を対象にして,健康調査や画像診断や採血による各種検査を定期的に行い,健康増進や次世代医療の開発を行うプロジェクト。2013年7月から試験的にスタートし,妊婦の同意3119人を含め5067人(2014年5月13日現在)が登録しており,三世代7万人を目標とする。検査の中には全ゲノム解析が含まれており,バイオバンクで他の調査データと合わせて保管され,研究目的と同時に遺伝子解析の結果を個人に回付することも検討されている。栗山氏は,三世代コホート調査による生涯ライフレコードとゲノム解析による個別化医療によって,個人の体質や環境による疾病の予測と予防が可能になり,病気になったとしても体質に合わせた最適な治療法を選択できることを利点としてあげた。さらに,被災地域で実施することで,その調査結果は被災地ならではの影響を把握できるだけでなく,影響のない集団に対しても適用できる“外的妥当性”を持つメリットを挙げた。

栗山進一 氏(東北大学教授)

栗山進一 氏
(東北大学教授)

田中 博 氏(東京医科歯科大学教授)

田中 博 氏
(東京医科歯科大学教授)

 

続いて,パネルディスカッションのモデレーターである田中氏が講演し,ゲノム・オミックス医療の現状とアメリカを中心とする臨床応用の例を挙げて,今後の医療におけるゲノム・オミックス情報の活用の方向性を概説した。田中氏は,実際に臨床医療に用いられているゲノム医療として,病因がわからない遺伝疾患の原因遺伝子変異の同定(WGS/WES),遺伝性がん(BRCA1/2)の診断,薬剤代謝酵素の多型性診断と電子カルテへの実装などを紹介した。次世代の電子カルテでは,ゲノム情報も統合して診療支援を行うことが期待されるとし,さらにゲノム・オミックス情報を利用して生涯にわたる健康医療(lifelong care)管理を行う時代になってきたと述べた。
パネリスト講演では,最初に柴田氏は,「ゲノム診断によるがん個別化医療の最前線」について,がん領域における個別化医療について遺伝子レベルのがん診断によってオーダメード医療が実現できることを展望した。また,林崎氏が「オミックス科学と予防医療の展開」と題して,遺伝子診断と予防的介入について概説した。最後に宮田氏が「個の医療の現状とその次の課題」として,ゲノム解析がコモディティ化する中でゲノム解析が臨床医学に及ぼす影響と,実際の企業や医療機関の動向を概説した。パネルディスカッションでは,田中氏を司会として各氏が登壇して,「地域の住民に対してゲノム解析を行う際の同意の取り方や,実際のリアクションについて」や「ゲノム情報を電子カルテで扱う際の障壁やその解決方法」など,会場からの質疑に答える形で行われた。

柴田龍弘 氏(国立がん研究センター分野長)

柴田龍弘 氏
(国立がん研究センター
分野長)

林崎良英 氏(理化学研究所プログラムディレクター)

林崎良英 氏
(理化学研究所
プログラムディレクター)

宮田 満 氏(日経BP社特命編集委員)

宮田 満 氏
(日経BP社
特命編集委員)

 

パネルディスカッションの様子

パネルディスカッションの様子

 

●システム展示

富士通フォーラムの展示会場(地下2階展示ホール)の「ソーシャルイノベーション」のコーナーで,“次世代医療”,“ライフ&コミュニティー”でヘルスケア関連ソリューションが紹介された。

次世代医療のコーナーでは,2013年12月に発足した未来医療開発センターのコンセプトや,次世代電子カルテの開発など今後の取り組みをプレゼンテーションしたほか,東京大学先端科学技術研究センターのIT創薬研究などの事例を紹介した。

次世代医療のコーナーでは,2013年12月に発足した未来医療開発センターのコンセプトや,次世代電子カルテの開発など今後の取り組みをプレゼンテーションしたほか,東京大学先端科学技術研究センターのIT創薬研究などの事例を紹介した。

 

展示会場では「食・農クラウドAkisai」で作られた富士通製の低カリウムレタスを配布

展示会場では「食・農クラウドAkisai」で作られた
富士通製の低カリウムレタスを配布

ライフ&コミュニティーコーナーでは,“高齢者を皆で支えあう社会へICTで貢献”として「高齢者ケアクラウド 往診先生」,「親孝行モデルプロジェクト」などを展示した。

ライフ&コミュニティーコーナーでは,“高齢者を皆で支えあう社会へICTで貢献”として「高齢者ケアクラウド 往診先生」,「親孝行モデルプロジェクト」などを展示した。

 

●問い合わせ先
富士通(株)
富士通病院経営戦略フォーラム事務局
TEL 03-6252-2572
http://jp.fujitsu.com/

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