第34回医療情報学連合大会(その2)
海外から講演者を招聘して,医療におけるIT活用の方向性を探る

2014-11-17

ヘルスケアIT


特別講演2を行ったNada Lavrac氏と高林克日己大会長

特別講演2を行ったNada Lavrac氏と高林克日己大会長

第34回医療情報学連合大会(第15回日本医療情報学会学術大会)2日目の11月7日(金)は,9時からA会場で大会企画1「医療情報学が未来を可視化する〜超高齢社会における医療情報学の役割〜」が行われた。この企画は, 超高齢社会となったわが国において,医療情報などのビッグデータを活用して,その解析を行い医療政策などに役立てることが求められている状況を踏まえて設けられた。座長は,千葉大学の藤田伸輔氏が務めた。まず,国際医療福祉大学の高橋 泰氏が登壇し,わが国の人口動態の今後の予測を示した上で,地方における人口減と都市部における高齢者人口の増加などによる療養病床の不足といった医療への影響を解説した。2番目に登壇した千葉大学の土井俊祐氏は,GIS(geographic information system)と政府の統計データを用いる医療受給者評価手法について,千葉県で行った実証を交えて報告した。 次いで,発表した自治医科大学の藍原雅一氏は,同大学が取り組んでいる地域医療データバンクにおけるGISを活用したビッグデータ解析例を紹介。さらに,京都大学の荒牧英治氏は,Twitterやクラウドソーシング,ブログなどのWebデータから医療や健康に関する情報を分析した経験を発表した。

A会場では, 続いて日本医学教育学会との共同企画7「医学教育と医療情報学について考える〜医学教育の質保証と医療情報学専門医制度の紹介を通して〜」が設けられた。座長は,日本医療情報学会会長の岡田美保子氏。先に,日本医学教育学会の福島 統氏が登壇し,「医学教育の質保証」をテーマに,わが国の医学教育の歩みを解説するとともに,海外の医学教育と比較した場合の問題点などを挙げ,国際化時代における医学教育のあり方について言及した。続いて,日本医療情報学会学術委員会の澤 智博氏は,「各国の医療情報学領域の専門医制度とコアコンピテンシー」をテーマに発表した。

次いで,学会長講演が行われた。東京大学の大江和彦氏が座長を務め,岡田氏が「医療情報学会としての活動方針および診療情報連携の観点からみた医療情報化のフレームワーク」をテーマに講演した。岡田氏は,まず学会の組織や運営体制,今後のスケジュールなどを紹介。学会として取り組むべき15のテーマについて解説を行った。また,岡田氏は,「医療ITではなく医療情報テクノロジー」であるべきだとして,EHRなどの医療情報テクノロジーは,直接ケア,医療の質の向上,ポピュレーションヘルスが目的となるとの見解を示した。

学会長講演に続いて,A会場では特別講演2が行われた。島根大学の津本周作氏が座長を務め,スロベニアのJozef Stefan InstituteのNada Lavrac氏が「Advances in Data Mining for Biomedical Research」をテーマに講演した。Lavrac氏は,Jozef Stefan Instituteの紹介をした上で,データマイニングの歩みについて第一世代,第二世代,第三世代に分けて解説を行い,さらにsemantic dataの分析などの将来展望を述べた。

岡田美保子 学会長

岡田美保子 学会長

データマイニングについて講演するNada Lavrac氏

データマイニングについて講演するNada Lavrac氏

 

 

この後,A会場では,大会企画2「世界のEHR」があり,高林克日己大会長と浜松医科大学の木村通男氏を座長に,諸外国の医療情報のIT化について報告があった。
まず,ドイツ・ProRec CentreのRolf Engelbrecht氏が登壇し,「Health Telematics Development for a Health Supporting Infrastructure」をテーマに発表した。Engelbrecht氏は,ドイツで採用されている電子健康カードなどについて解説したほか,アクセンチュア社が行った諸外国におけるEHRの利用に関する意識調査結果を紹介した。さらに,2番目に発表したRadbound University Medical CenterのFelix HJM Cillessen氏は,「Evolution of Electronic Health Record Systems in the Netherlands」と題し,オランダにおけるEHRの構築事例を取り上げ,記録形式や運用法について解説した。 最後には,韓国の事例として,健康保険審査評価院の崔 東鎭氏による「ITが基盤となっている韓国の健康保険制度」があった。この発表では,崔氏に代わり,東京工業大学の李 中淳氏が通訳として発表した。各国の医療情報システム,医療のITの現状を知る機会となり,参加者にとって意義のあるセッションとなった。

大会企画2の座長を務めた高林克日己大会長と木村通男氏

大会企画2の座長を務めた
高林克日己大会長と木村通男氏

 

 

ドイツの取り組みを紹介したRolf Engelbrecht氏

ドイツの取り組みを紹介したRolf Engelbrecht氏

オランダでのEHR導入事例を発表したFelix HJM Cillessen氏

オランダでのEHR導入事例を発表した
Felix HJM Cillessen氏

韓国での医療データの活用事例を報告した崔 東鎭氏

韓国での医療データの活用事例を報告した崔 東鎭氏

 

●問い合わせ先
千葉大学医学部附属病院 企画情報部内
TEL 043-226-2346(代表)
http://www.ho.chiba-u.ac.jp/jcmi2014

 

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