第一医科,「医工連携」で開発した眼球運動を解析するプログラム医療機器を発売

2017-4-7


眼振をリアルタイムで解析可能なyVOGの画面

眼振をリアルタイムで解析可能なyVOGの画面

第一医科(株)は,眼球運動検査装置用プログラム「yVOG(ワイボーグ)」を,2017年7月をめどに発売することを発表したが,2017年4月4日(火),yVOGの開発を行った(株)YOODS(ユーズ),山口大学医学部,地方独立行政法人山口県産業技術センターの3者が出席して,「医工連携」と題したプレスセミナーを,第一医科ショールーム「ENT+」(東京都文京区)にて開催した。

yVOGは,赤外線CCDなどを用いた眼球運動検査装置から取得した眼球の映像を解析することで,脳梗塞やメニエール病など,めまいが生じる疾患の診断をサポートする医療機器プログラム。めまい検査の眼振観察には,フレンツェル眼鏡や注視眼振検査,赤外線CCDによる映像記録が用いられている。山口大学では,赤外線カメラで撮影された眼球運動の動画をもとに眼振図の記録や定量解析を行うvideo-oculography(VOG)と呼ばれる解析方法を開発して臨床に用いてきた。yVOGは,この眼球運動解析法をベースとして,FA(Factory Automation)分野での組込型画像処理技術を持つYOODSが連携して,“次世代フレンツェル眼鏡システム”として開発された。

yVOGの開発は山口県の「やまぐち産業戦略研究開発等補助金」採択として進められた。山口県産業技術センターが,山口大学とYOODSをマッチングし,耳鼻咽喉科領域で医療機器製造販売のノウハウを持つ第一医科が協働する“医工連携”プロジェクトとなっている。yVOGの開発事業は,高フレームレートとモーションセンサーを搭載した次世代フレンツェル眼鏡「yVOG-glass」と,眼球運動解析システムの両方で進められているが,今回,解析システムのソフトウエアが医薬品医療機器等法のプログラム医療機器として認証を取得した。2014年の薬機法改正以降,耳鼻咽喉科領域でプログラム単体で認証されたのは,yVOGが初めてで,回旋性眼振の記録が可能な国内唯一のプログラム医療機器となる。

今回のプレスセミナーでは,第一医科取締役の小池直樹氏とマーケティング本部設計課・宮川 昇 氏,YOODS代表取締役社長の原田 寛 氏,山口大学医学部耳鼻咽喉科講師の橋本 誠 氏,山口県産業技術センターの松本佳昭氏らが登壇し,“医工連携”プロジェクトによるyVOGの開発経緯と機能についての解説を行った。

冒頭,挨拶に立った小池氏は,医工連携プロジェクトについて,「現在,医療分野はさまざまな企業から注目を集めており,これまで医療と縁のなかった企業とのコラボレーションにより,全く新しい製品が生み出される可能性を秘めている。yVOGについても,当社が持つ耳鼻咽喉科領域での豊富な医療機器販売のノウハウを生かして,普及に取り組んでいきたい」と述べた。

小池直樹 氏(第一医科取締役)

小池直樹 氏
(第一医科取締役)

   

 

次いで登壇した原田氏は,YOODSが培ってきた画像処理技術について,「これまで製造業分野向けに,画像処理技術に特化したLinuxベースの組み込みシステムを開発・提供してきた。今回の医工連携プロジェクトで,当社が培ってきた画像処理技術の知見を,山口大学が開発したVOGに生かすことで,水平・垂直だけでなく回旋まで含めた,眼球運動の解析に最適化した画像処理ロジックを開発し,リアルタイムで精度の高い解析が可能になった」と説明した。

また,第一医科の宮川氏はyVOGの具体的な機能や特徴,使用方法について紹介し,「眼球運動の高度な解析と,位置・速度センサーによる頭位および体位の同時記録を可能とし,記録された眼球運動の動画を診断データと同時に参照できる。また,眼球運動の動画を再生中に,画面上を指でタッチするだけで虹彩の範囲を指定でき,測定範囲の校正が簡単に行えるようになった」と解説した。

原田 寛 氏(YOODS代表取締役社長)

原田 寛 氏
(YOODS代表取締役社長)

宮川 昇 氏(第一医科マーケティング本部設計課)

宮川 昇 氏
(第一医科マーケティング本部設計課)

 

 

続いて登壇した橋本氏は,実際の眼球運動解析への利用について,「めまい検査での眼振観察では,患者のめまいが良性か,あるいは中枢性の脳梗塞やメニエール病などによるものかを判断できる。従来は,赤外線フレンツェル眼鏡などを利用して眼球運動の動画を記録していたが,山口大学では診断結果の数値化・定量化を行う手段が必要と考え,VOG / Hi-VOGを開発した。VOGは,Image-JやFileMakerなどの市販ソフトウエアを利用して開発したもので,動画の取り込みに手間と時間がかかり,リアルタイムでの解析ができないなどの問題があった。今回発表したyVOGは,眼球運動のリアルタイム解析を実現し,一般の臨床でも使えるように開発されている。眼球の位置・速度を水平・垂直・回旋の三軸から測定し,変化を波形として表示するため,検査後に動画を見なくても,数秒前の眼球の動きを参照することができる。また,操作のほとんどを自動化し,画像処理から検査結果の出力までを一括して行えるため,検査のワークフロー短縮にも大きな効果がある」と述べた。

橋本 誠 氏(山口大学医学部耳鼻咽喉科講師)

橋本 誠 氏
(山口大学医学部耳鼻咽喉科講師)

yVOGのデモンストレーションの様子

yVOGのデモンストレーションの様子

 

 

最後に,松本氏からyVOGの今後に向けた挨拶が行われ,「やまぐち産業戦略研究開発等補助金は,研究支援プロジェクトとしては国内最大級となり,yVOGについても多くの予算を支給している。医薬品医療機器等法における認証取得など,プロジェクトは順調に推移しており,山口県としては今後も積極的にyVOGを支援していきたい」と締めくくった。

松本佳昭 氏(山口県産業技術センター イノベーション推進センター 医療関連推進チーム 兼 産学公連携室)

松本佳昭 氏
(山口県産業技術センター イノベーション推進センター 医療関連推進チーム 兼 産学公連携室)

   

 

●問い合わせ先
第一医科(株)
TEL 03-3814-0111
http://www.first-med.co.jp/


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