日本放射線腫瘍学会(JASTRO)が11月10日(木)~12日(土)の第35回学術大会に先立ちプレスカンファレンスを開催

2022-9-20

放射線治療


2019年以来,3年ぶりの現地開催が予定されている

2019年以来,3年ぶりの現地開催が予定されている

日本放射線腫瘍学会(JASTRO)は,2022年11月10日(木)~12日(土)に広島市で「百万一心−高精度放射線治療の現状と行方−」をテーマに第35回学術大会を開催する。それに先立ち,同大会のハイライトや放射線治療の最新情報などを紹介するプレスカンファレンスを,9月15日(木)にフクラシア八重洲(東京都中央区)で開催した。

冒頭で同学会理事長の茂松直之氏(慶應義塾大学医学部放射線科学教室教授)が挨拶に立ち,放射線治療の現状と同学会について解説した。茂松氏は,前立腺がんを例に放射線治療の発展について紹介した上で,JASTROは専門医制度の導入などを経て会員数が大幅に増加し,認定施設は全国に分布しているとした。さらに,国際的な活動として,中国や韓国などのアジア圏内の放射線腫瘍関連学会と連合し,FARO(Federation in Asia of Radiation Oncology)として活動していることなどを紹介した。

茂松直之 氏(理事長/慶應義塾大学)

茂松直之 氏(理事長/慶應義塾大学)

 

次に,第35回学術大会の大会長を務める永田 靖氏(広島大学大学院医系科学研究科放射線腫瘍学教授)が,今大会のハイライトについて紹介した。永田氏は,大会のテーマ「百万一心」について,「国人が皆で力を合わせれば何事も成し得る」ことを意味する戦国時代の武将・毛利元就の言葉であり,放射線治療におけるチーム医療の重要性を象徴するものとしてテーマに選定したと述べた。今大会は2019年以来の現地開催(オンデマンド配信あり)であり,一般演題350演題,要望演題55演題,ポスター演題211演題のほか,小林久隆氏(米国国立がん研究所)による特別講演「がんの近赤外光線免疫療法(光免疫療法)」などが予定されている。また,オリゴ転移に対する放射線治療やRI内用療法,粒子線治療などの最新エビデンス,前立腺がん治療や人工知能(AI)を用いた治療の最前線などの11テーマについてシンポジウムが開催されるほか,海外の関連学会の学会長やエキスパートを招き,国際招待講演が行われる。さらに,学会期間中には市民公開講座「日本の名医が解説! いまどきの放射線治療」や広島県立広島がん高精度放射線治療センター(HIPRAC)でのサテライトセミナーが予定されていることなどが紹介された。

永田 靖 氏(第35回学術大会長/広島大学)

永田 靖 氏(第35回学術大会長/広島大学)

 

続いて,広報委員会委員長の岡嶋 馨氏(近畿大学奈良病院放射線科科長)が「SDM(シェアード・ディシジョン・メイキング)における放射線治療」について解説した。近年,放射線治療などの発展に伴って治療選択肢が増加した半面,患者が「自分はどの治療を受けるべきか」について判断に迷う事態に陥るケースが多く見られる。このような状況に対応しうるものとして,岡嶋氏は2000年代初頭から拡大しつつある“Shared Decision Making(SDM,共同的意思決定)”を挙げた。SDMは,個人の価値観や生活も考慮し,医療従事者と患者がパートナーとして話し合いながら合意を形成していくもので,治癒確率や緩和効果などの新しい科学的データも活用する。インフォームドコンセント(IC,説明と同意)と異なり,医学情報以外にも個人的・社会的情報や個人の価値観などの情報が医師と患者の双方向でやりとりされる。がん診療連携拠点病院の指定要件にも,”SDM”の表記はないもののその概念が明記されている。岡嶋氏は,がん治療において放射線治療は技術革新による根治性の向上や機能温存,多発性がんへの対処が可能になり,根治性と合併症のバランスや手術の合併症との比較,経済的問題などが治療選択時の要素として浮上し,放射線治療チームはSDMの中心的役割を果たすと述べ,学会としても正確な情報提供が使命であるとの認識を示した。

岡嶋 馨 氏(広報委員会委員長/近畿大学奈良病院)

岡嶋 馨 氏(広報委員会委員長/近畿大学奈良病院)

 

最後に,健保委員会委員長の大西 洋氏(山梨大学医学部放射線医学講座教授)が「令和4年保険改訂から見る新しい放射線治療−現状と今後の課題−」と題して解説を行った。令和4年(2022年)の診療報酬改定では,体外照射における寡分割照射加算の増点や粒子線治療の適応拡大,ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の新設などが行われた。大西氏は,放射線治療は免疫チェックポイント阻害剤と合わせて全身がんの予後を向上するほか,低侵襲で外来治療が可能でコロナ禍でも対応可能な持続可能型治療であることに加えて,がん治療の中では比較的医療費が低いことなどから,超高齢化社会を迎える日本において,放射線治療の適切かつ持続可能な運用を実現することは非常に重要であるとした。一方で,がん診療連携拠点病院のうち強度変調放射線治療(IMRT)が実施可能な施設は約半数に留まるなど,高精度放射線治療の提供体制は不十分なのが現状である。大西氏は,その要因の一つとしてIMRTでは2名以上の常勤放射線医が施設要件とされ,医学物理士などへの「放射線治療計画支援業務」のタスクシフトが診療報酬上,明確にされていないことなどを挙げ,診療報酬における適正な評価や施設要件の見直しを求めていきたいとした。また,遠隔放射線治療計画の推進やAIによる自動・知識ベース治療計画などの新規技術の評価が,医師の働き方改革や治療の質の均一化・向上につながると期待を示した。

大西 洋 氏(健保委員会委員長/山梨大学)

大西 洋 氏(健保委員会委員長/山梨大学)

 

●問い合わせ先
公益社団法人日本放射線腫瘍学会事務局
TEL 03-3527-9971 FAX 03-3527-9973
https://www.jastro.or.jp/medicalpersonnel/
第35回学術大会 https://site2.convention.co.jp/jastro2022/

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