第15回日本ロボット外科学会学術集会が開催

2023-2-21

手術支援ロボット


テーマは,「普及と革新:Permeation and Innovation」

テーマは,「普及と革新:Permeation and Innovation」

2023年2月2日(木),3日(金)の2日間,名古屋国際会議場(愛知県名古屋市)で,第15回日本ロボット外科学会学術集会が開催された〔オンデマンド配信は2月9日(木)〜28日(火)〕。テーマは,「普及と革新:Permeation and Innovation」。会長は楯谷一郎氏(藤田医科大学)が務めた。日本におけるロボット支援下手術は,2009年に「ダビンチサージカルシステム」〔インテュイティブサージカル(同)〕が薬事承認を得て,その後2012年に前立腺悪性腫瘍手術が保険適用となった。その後,保険適用の術式が拡大し,頭頸部,呼吸器,心臓,消化器など領域が広がっている。また,日本製である「hinotoriサージカルロボットシステム」〔(株)メディカロイド〕が薬機法承認を得るなど,産業としても広がりを見せている。このよう中,同学会の規模も拡大しており,今回も2日にわたって,理事長講演,会長講演,基調講演,特別講演,特別企画が各1題,領域横断シンポジウムが5セッション,領域別シンポジウム12セッションなどが設けられた。

初日2月2日には,同学会理事長の渡邊 剛氏(ニューハート・ワタナベ国際病院)が座長を務め,楯谷氏による会長講演「耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域におけるロボット支援手術 〜普及と革新に向けて〜」が行われた。楯谷氏は,耳鼻咽喉科・頭頸部外科の手術について,コミュニケーションに重要な器官や味覚・嗅覚などのQOLに影響する機能,露出した部位を扱うことから,機能温存や整容的な配慮が求められるとし,経口的ロボット支援下手術(trans oral robotic surgery:TORS)により低侵襲な治療が可能になったと説明。ロボット支援下手術によって,従来よりも5年生存率が向上して断端陽性率も優位に低いことなどを示されていると述べた。また,安全性を確保して普及を図ることが大切だとして,日本頭頸部外科学会などの取り組みを紹介した。さらに,楯谷氏は,甲状腺のロボット支援下手術についても取り上げ,腋窩からのアプローチのため頸部皮膚の切開痕を残さず手術できる点が女性患者のQOL向上にも寄与すると述べた。楯谷氏は,現状の課題と今後の期待として,手術支援ロボットやデバイスの小型化,ナビゲーション機能や人工知能(AI)の搭載などについても言及した。

会長:楯谷一郎 氏(藤田医科大学)

会長:楯谷一郎 氏(藤田医科大学)

 

同じく2月2日に行われた領域横断シンポジウム1「ロボット支援手術のnew comer」では,今後保険適用が期待されるロボット支援下手術が取り上げられた。大内昌和氏(順天堂大学医学部附属浦安病院)は,2020年11月から自費診療として開始した鼠径ヘルニアに対する手術について17例の経験を報告した。また,武藤 淳氏(藤田医科大学)は,ロボット支援下経口頭蓋底手術について発表。手術支援ロボットにより繊細な手技を行えるという利点がある一方,インストゥルメントなどさらなる改良が必要であるとの課題を示した。

続いて行われた領域横断シンポジウム1「2022年新規保険収載ロボット手術」では,腹腔鏡肝切除術,TORS,小児総胆管拡張症手術,副腎摘出術が取り上げられた。このうち,山髙篤行氏(順天堂大学)は,小児総胆管拡張症手術において,当初,拡張胆管剥離を腹腔鏡下,総胆管空腸吻合をロボット支援下で行うハイブリッド手術を施行し,最近では2つの手技をロボット支援下で実施して,良好な成績が得られている経験を報告した。

このほか,初日には,三木谷浩史氏〔楽天メディカル社/楽天メディカル株式会社〕の特別講演「テクノロジーによる革新で切り拓く未来」が行われた。また,2日目の2月3日には,渡邊氏による理事長講演「Beyond Less & Least Invasive surgery」,Kim Se-Heon氏(Yonsei University)の基調講演「New Era of Advanced TORS Surgery Using Single Port Surgical Robotic System」が設けられた。

なお,次回第16回学術集会は,2024年2月10日(土),11日(日)の2日間,米子コンベンションセンターおよび米子市文化ホール(鳥取県米子市)で開催される。会長は,武中 篤氏(鳥取大学)が務める。

インテュイティブサージカルは最新の「ダビンチSPサージカルシステム」を紹介

インテュイティブサージカルは最新の「ダビンチSPサージカルシステム」を紹介

 

日本発の手術支援ロボット「hinotoriサージカルロボットシステム」を展示したメディカロイド

日本発の手術支援ロボット「hinotoriサージカルロボットシステム」を展示したメディカロイド

 

●問い合わせ
第15回日本ロボット外科学会学術集会
運営事務局〔(株)コングレ中部支社〕
TEL 052-950-3430
E-mail j-robo15@congre.co.jp
https://www.congre.co.jp/j-robo15/

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