X線動態画像セミナー(コニカミノルタ)

第5回X線動態画像セミナー[2023年10月号]

Overview

コニカミノルタ(株)は2023年6月17日(土),第5回X線動態画像セミナーをオンラインで開催した。X線動態画像は,同社が開発したデジタルX線動態撮影システム(Dynamic Digital Radiography:DDR)で得られる動画像。診断用X線撮影装置「RADspeed Pro」〔(株)島津製作所〕や2022年3月発売のコニカミノルタ社製回診用X線撮影装置「AeroDR TX m01」とカセッテ型デジタルX線撮影装置「AeroDR fine motion」を組み合わせて動画像を撮影し,X線動画解析ワークステーション「KINOSIS」で解析処理を行うことで,動きの可視化や定量化,動きに伴う信号値変化の抽出などが可能になる。
セミナーでは,コニカミノルタの小林一博氏(ヘルスケア事業本部長)の挨拶と原田真衣氏(ヘルスケア事業本部モダリティ事業部)のメーカー講演に続き,テーマごとの講演などが行われた。

第1部:特別講演

第1部では,山崎誘三氏(九州大学大学院医学研究院臨床放射線科学分野)が「Dynamic chest radiography for pulmonary vascular diseases:clinical applications and correlation with other imaging modalities」と題して特別講演を行った。座長は,近藤晴彦氏(杏林大学医学部付属病院病院長)が務めた。山崎氏は,第108回北米放射線学会(RSNA2022)でCum Laudeを受賞しており,その発表内容を基に解説した。

第2部:研究報告

続いて,第2部の研究報告が行われた。座長は高瀬 圭氏(東北大学大学院医学系研究科放射線診断学分野教授)が務めた。最初に,昆 祐理氏(聖マリアンナ医科大学救急医学/救命救急センター救急放射線部門)が「救急診療における動態ポータブルX線検査利用の実際」と題して講演した。昆氏は,救急集中治療領域では検査のための移動はリスクが高く,ベッドサイドで行えるポータブルDDRは大変有用であると述べた。次に,平岩宏章氏(名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学)が「X線動態画像を用いた心不全患者の心機能および血行動態評価の試み」と題して講演した。平岩氏は,心不全患者の心機能および血行動態の評価においてDDRの有用性が示されたことを報告した。第2部の最後に,英国での臨床応用について,Thomas Simon FitzMaurice氏(Specialty Registrar in Respiratory Medicine, Liverpool Heart and Chest Hospital)による「Implementation of dynamic digital radiography in research and clinical practice : a UK perspective」と題した講演の収録動画が供覧され,同氏が所属するLiverpool Heart and Chest Hospitalでは,DDRの標準作業手順書(SOP)を作成して画像診断ワークフローに組み込んだことで,地域の臨床医からの依頼が増加したことなどが紹介された。

第3部:臨床報告

第3部では,黒﨑敦子氏(公益財団法人結核予防会複十字病院放射線診療部部長)が座長を務め,臨床報告が行われた。最初に,内田真介氏(順天堂大学医学部附属順天堂医院呼吸器外科)が「いかに動態撮影を実臨床へ応用するか〜胸部外科診療の現場から〜」と題して報告し,DDRは胸膜癒着などの動的な評価に加え肺血流評価が可能であり,肺塞栓の低侵襲な評価法の一つとして期待できるとした。続いて,藤枝市立総合病院での動態撮影の応用について,同院の大川剛史氏(同院診療技術部放射線科)が同席し,3演題の報告が行われた。まず,江間俊哉氏(同院呼吸器外科)が登壇し,「呼吸器外科領域における胸部動態撮影の使用経験〜術前癒着予測と腫瘍部位鑑別への応用〜」と題して講演した。江間氏は,DDRにより得られた患側横隔膜移動量の低下という計測値も胸膜癒着予測の一助となる可能性が示唆されたことを紹介した。次に,「手関節疾患におけるX線動態撮影の臨床応用」と題して,鈴木重哉氏(同院整形外科)が手関節痛検査へのDDRを基に治療方針を決定し,良好な術後経過が得られた症例を紹介した。最後に,「当院における手関節X線動態撮影法」と題して佐藤恵梨子氏(同院診療技術部放射線科)が報告し,整形外科領域でのDDRの撮影条件の検討を行ったことなどを紹介した。

第4部:総括と総評

以上の講演に続き,第4部の総括が行われた。長谷部光泉氏(東海大学医学部医学科専門診療学系画像診断学領域教授)が座長を務め,第3部までの座長を務めた3氏に加え,工藤翔二氏(公益財団法人結核予防会代表理事),井上義一氏(一般財団法人大阪府結核予防会大阪複十字病院顧問),權 寧博氏(日本大学医学部内科学系呼吸器内科学分野教授),田中利恵氏(金沢大学医薬保健研究域保健学系准教授),由地良太郎氏(東海大学医学部付属八王子病院診療技術部放射線技術科)が登壇した。今回のセミナーでは海外でのDDRの広がりを示す報告が行われたことを受け,高瀬氏はDDRのより大きな可能性が示されたと評価した。また,近藤氏は,ポータブル撮影症例のフィードバックによるピットフォール解消などに期待を示した。さらに,今回初めて整形外科領域の具体的な臨床報告が行われたが,黒﨑氏は,自身も監修を務めるDDRのデジタル症例集「DDRAtlas」で同領域の症例も蓄積していきたいと述べた。また,權氏は第2部で平岩氏が示したように,DDRがより簡便な検査法として臨床応用されることへの期待を示した。一方,診療放射線技師の立場から,由地氏は被ばく線量と再現性のバランスなども考慮した撮影手順の標準化の必要性を指摘したほか,田中氏はDDRに関する情報を発信・共有するユーザー会について紹介した。
最後に,井上氏と工藤氏が総評を述べ,セミナーを締めくくった。

 

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