innavi net画像とITの医療情報ポータルサイト

ホーム

ITEM2024 フィリップス・ジャパン ブースレポート イノベーションと病院DXを推進するソリューションを提案し,グローバルと日本で共通する医療課題の解決に挑む

2024-4-24

フィリップス・ジャパンブース

フィリップス・ジャパンブース

フィリップス・ジャパンは,「See beyond to a new perspective on patient care~つながることで,新しい価値を創造し,確実性の高い医療へ~」をテーマに,CT,MRI,超音波,ヘルスケアIT,Image Guided Therapy(IGT)の新製品・新機能を中心に展示を行った。フィリップスでは,診断装置とヘルスケアITを組み合わせることで病院のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し,2024年4月から始まった「医師の働き方改革」を支援することをめざしており,シンプルで効率的なワークフローや,より早期により確実で正確な診断と低侵襲治療を可能にする技術や機能を実装したソリューションをアピールした。
また,今回はオランダ本社のロイヤルフィリップスから多くのエグゼクティブが来日。プレス向けブースツアーの冒頭には,画像診断・イメージガイド下治療領域の最高責任者を務めるエグゼクティブ・バイスプレジデントのBert van Meurs氏が挨拶に立ち,グローバルと日本の医療における課題に対してフィリップスが果たす役割やCTの新製品「CT 5300」の概要をプレゼンテーションした。Meurs氏は,「医療従事者不足,データ量の増大,非効率なワークフロー,コストの増加が,日本も含めた世界における共通の課題となっている。われわれの市場調査では,日本の病院経営者はデジタルヘルス技術の活用やAI技術,オンライン診療へのコミットメントが諸外国と比べて高く,実際に先進技術をいち早く取り入れている。フィリップスはMRIや循環器エコー,血管撮影装置などの領域で日本市場に深くコミットしており,今後も患者アウトカムの改善,ワークフローの最適化,長期にわたる経済的メリットという日本の医療ニーズにも合致した課題に対して,イノベーションを加速させていく」と,フィリップスの戦略と日本市場の重要性について述べた。

ロイヤルフィリップス エグゼクティブ・バイスプレジデントのBert van Meurs氏

ロイヤルフィリップス エグゼクティブ・バイスプレジデントのBert van Meurs氏

 

●CT:心臓AI技術を搭載したプレミアムモデル「CT 5300」が登場
●MRI:患者の負担を軽減するコイルや小児検査の安全性向上に寄与するソリューションを展示
●ヘルスケアIT:AIアルゴリズムを搭載した心臓MRアプリケーションをアピール
●超音波:国内ユーザーの声を反映した最新ソフトウエア「VM10」をデモンストレーションで紹介
●Image Guided Therapy(IGT):モバイルCアーム「Zenition」シリーズからFPD搭載の2機種を展示

 

●CT:心臓AI技術を搭載したプレミアムモデル「CT 5300」が登場

CTは,4月に発売したばかりのCT 5300の実機を国内初展示した。64列128スライス,0.35秒/回転のスペックを有するハードウエアと先進のAI技術を組み合わせることで,フラッグシップクラスの心臓CT検査を可能にする。撮影者の技量や患者(高心拍・不整脈)に依存せず高画質・低線量な検査が可能なほか,シームレスで円滑なワークフロー,長期にわたる経済的メリットが特長で,心不全パンデミックにより高まる心臓CTのニーズに応える装置だ。
CT 5300には新型高効率検出器「NanoPanel Precise Detector」を搭載するとともに,AI画像再構成「Precise Image」と心臓専用のモーションフリー画像再構成機能「Precise Cardiac」を実装。ハード・ソフトの両面から心臓CTの画質向上を図り,冠動脈のブレがない画像を従来の1/5程度の線量で取得できる。Precise Imageにより,心臓だけでなく全身領域の画質向上を実現しており,頭部においてはMRIライクな画像を得られることもアピールした。さらに,自動的に肋骨を展開した画像を作成する「Precise Rib」やヘリカル撮影画像からOMラインに沿った画像を自動作成する「Precise Brain」,椎体に沿ったMPRを作成して椎骨の自動ラベリングを行う「Precise Spine」などのアドバンスツールも利用できる。
また,AIカメラにより13箇所の身体的特徴から被検者の向きや部位を自動認識し,ポジショニングを支援する機能も搭載する。検査担当者はガントリに備えられたタッチパネルで患者の体位・撮影部位を確認してボタンをタップするだけで,寝台の高さも含めて患者を適切な撮影位置にセットアップできる。マニュアルでの操作を少なくすることで,技師の技量によるバラツキを低減し,ワークフローを改善する。

心臓AI技術やAIカメラを備えたプレミアムモデル「CT 5300」

心臓AI技術やAIカメラを備えたプレミアムモデル「CT 5300」

 

低線量でブレのない心臓CT検査を実現

低線量でブレのない心臓CT検査を実現

 

頭部においてはMRIライクな画像を取得可能(右端はMRI FRAIR画像)

頭部においてはMRIライクな画像を取得可能(右端はMRI FRAIR画像)

 

自動認識された患者の体位・撮影部位を確認するだけでセットアップが完了

自動認識された患者の体位・撮影部位を確認するだけでセットアップが完了

 

また,CT 5300には,放射線科の働き方改革を支援するツールとして遠隔コミュニケーションツール「CT Collaboration Live」が搭載された。検査室と検査室外(院内外)をつなぎ,会話やチャットに加え,コンソール画面の遠隔操作(曝射,寝台操作以外)をすることができ,撮影を担当する技師は検査室外にいる医師や技師と相談しながら検査を行うことができる。遠隔地と画面共有すると患者情報は匿名化され,外からは個人情報を閲覧することはできないように配慮されている。

会話やチャット,遠隔操作で検査室外から検査を支援する「CT Collaboration Live」

会話やチャット,遠隔操作で検査室外から検査を支援する「CT Collaboration Live」

 

さらに,長期的な安定稼働をサポートし,医療課題の一つであるコスト増加に対応する。CTの平均稼働年数が10年を超えるようになっていることから,CT 5300には高耐久のX線管球を搭載するほか,「Tube for Life」プログラムにより,費用負担なしでの管球交換を10年間保証する(保守契約が必要)。また,長期にわたってソフトウエアのアップグレードを提供し,常に最新の状態を保つことができる「Technology Maximizer」プログラムも提供する。

●MRI:患者の負担を軽減するコイルや小児検査の安全性向上に寄与するソリューションを展示

MRIでは,研究用の3T最上位機種「MR 7700」を展示するとともに,1.5T MRI装置「MR 5300」専用の「Smart Fitコイル」と,小児患者に快適な検査環境を提供する「Pediatric Coachingソリューション」を国内初展示した。
MR 7700は,多核種(1H,31P,13C,23Na,19F,129Xe)イメージングに対応する装置で,生体内の代謝情報や機能情報を得られると期待されている。国内1号機が浜松医科大学医学部附属病院で稼働を開始しており,JRSランチョンセミナー13ではMR 7700による多核種イメージングの知見や期待について報告された。研究用装置と位置づけられているが,70cmの開口径を有したコンパクトな装置であり,患者に快適な検査を提供し,全身領域の研究・臨床に活用できる。

国内1号機が稼働を開始した3T最上位機種「MR 7700」

国内1号機が稼働を開始した3T最上位機種「MR 7700」

 

新製品のSmart FitコイルはMR 5300専用のもので,「Smart Fit TorsoCardiacコイル」と「Smart Fit Shoulderコイル」をラインアップする。ケーブルを含めた重量は,TorsoCardiacコイルが1.2kg,Shoulderコイルが1.1kgと非常に軽量で,かつ柔軟性が高いため患者の負担を軽減することができる。Shoulderコイルは立位・座位の状態で装着してから寝台に寝て検査できるため,ワーフクローも改善する。なお,MR 5300は7Lのヘリウムで稼働するヘリウムフリーMRIであり,フィリップスは2019年に初めてのヘリウムフリー装置を発売して以降,実績を積み重ねてきた。現在,ヘリウムフリーMRIは全世界で1000台以上,国内では約90台稼働している。

軽量・柔軟な「Smart Fitコイル」

軽量・柔軟な「Smart Fitコイル」

 

Pediatric Coachingソリューションは,小児のMRI検査に対する不安を軽減することで鎮静の必要性を低減することをめざしたもので,自宅での事前学習が可能な「Scan Buddyアプリ」,小型MRI模型「Kitten Scanner」,小児向けテーマの「Ambient Experience In-bore ソリューション」で構成される。Scan Buddyアプリは,動物キャラクターと一緒にMRI検査や注意点について遊びながら学ぶことができるもので,AR機能も搭載し,室内にMRIを表示してスタンプラリーをしながら装置を観察することもできる。検査当日は,病院に設置したKitten Scannerに動物の模型を載せると,動物ごとに異なる部位(頭部,膝,腹部)の検査についてストーリー仕立ての映像で説明し,理解をうながす。検査中は,一緒に学んだ動物キャラクターが映像に登場し,応援しながら検査をナビゲートする。これらソリューションの利用により,米国では57%だった鎮静剤の利用率が5%まで低減したという報告もあり,小児検査の安全性に寄与することが期待される。

小児患者に快適な検査環境を提供する「Pediatric Coachingソリューション」

小児患者に快適な検査環境を提供する「Pediatric Coachingソリューション」

 

小児向け「Ambient Experience In-bore ソリューション」では動物キャラクターが検査をナビゲート

小児向け「Ambient Experience In-bore ソリューション」では動物キャラクターが検査をナビゲート

 

展示では,1.5T,3Tの次期バージョン(R12)でリリース予定の最新アプリケーションも展示した。「AV-TRANCE」は,日本の技術者とユーザーにより開発された非造影血管撮像法で,組織の緩和時間の差を利用することで,非造影・非同期で広範囲に血管を描出することができる。また,「High Bandwidth Inversion Recovery LGE」は,広いバンド幅設定,デバイスに適した任意の周波数オフセットに対応し,体内デバイスに起因する金属アーチファクトを低減する。MR対応デバイスを埋め込んでいる患者が増加しているが,そのような患者の検査においてもリードによるアーチファクトを抑制し,心筋を明瞭に描出することができる。

非造影・非同期で全身の血管を撮像可能な「AV-TRANCE」

非造影・非同期で全身の血管を撮像可能な「AV-TRANCE」

 

●ヘルスケアIT:AIアルゴリズムを搭載した心臓MRアプリケーションをアピール

ヘルスケアITコーナーでは,マルチモダリティ・マルチベンダー解析ワークステーション「IntelliSpace Portal」を中心に,医用画像管理システム「Vue PACS」,心血管領域用画像・情報管理システム「Cardiovascular Workspace」,協業するCogSmartの脳ドック用プログラム「BrainSuite」などを展示し,読影や診断の支援による働き方改革の推進をアピールした。
約70のアプリケーションを搭載するIntelliSpace Portalは,最新ソフトウエアV12でAIアルゴリズムを搭載した心臓MRアプリケーションを強化しており,3つのアプリケーションをデモンストレーションで紹介した。「Cardiac MR Analysis」は,AIアルゴリズムにより心筋の内膜・外膜を自動トレースする。マニュアルで一枚ずつトレースする必要がないため,5分以内で解析処理を完了することが可能だ。解析者によるバラツキを防げるほか,解析に必要な領域だけを抽出してトレースするため,患者の個人差によるバラツキも抑えることができる。

心筋内膜・外膜を自動トレースする「Cardiac MR Analysis」

心筋内膜・外膜を自動トレースする「Cardiac MR Analysis」

 

「MR Caas Strain」は,feature tracking法によりシネ画像から3ステップの操作で3方向(GRS,GCS,GLS)のストレイン解析を行える。解析結果はカラーマップやグラフで表示され,心筋の動きが低下している領域を視覚的に把握できる。解析のための特別な追加撮像は不要なため,従来どおりの心臓MRI検査に付加価値を提供できる。

簡便にストレイン解析を行える「MR Caas Strain」

簡便にストレイン解析を行える「MR Caas Strain」

 

また,「Caas 4D Flow MRI」は,大動脈血管の血流の視覚化とFlow計測を行える「4D Flow Artery」と心臓弁にフォーカスした「Caas 4D Flow Heart」の2つの機能を備える。Caas 4D Flow Heartでは,4つの心臓弁を認識して血流を視覚化することで逆流の状態を容易に把握できるほか,逆流率が数値でも表示される。患者説明に活用することで,病態や治療方針への理解をうながすことにもつながる。

弁逆流を視覚化する「Caas 4D Flow Heart」

弁逆流を視覚化する「Caas 4D Flow Heart」

 

●超音波:国内ユーザーの声を反映した最新ソフトウエア「VM10」をデモンストレーションで紹介

超音波診断装置は,「EPIQ Elite」の実機を使ったデモンストレーションを行い,2024年3月に発売された「EPIQ」/「Affiniti」の最新ソフトウエア「VM10」と超高周波マイクロリニア「mL26-8トランスジューサ」を中心に紹介した。
VM10では,日本のユーザーの声を反映して画質の最適化が図られており,特に腹部のBモード画像の画質が大幅に向上している。新開発の「AutoSCAN Assistant」は,「Next Generation AutoSCAN」「AutoSCAN Penetration」「Auto Focal Zone」からなる自動画像調整ツールで,より精密な画像調整が自動で行われ,検査者の技量や被検者の体格などに左右されない,一貫した高画質を提供する。検査中のゲイン,TGC/LGC,Focusの手動調整の手間を減らすほか,視野全体の輝度バランスも自動調整され,肥満体型の被検者でも深部までシャドーのない明瞭な画像を描出する。
また,血流を3Dレンダリングにより立体的に表示する「Flow Viewer」も利用できるようになる。血管がより鮮明に描出されて視認性が高まることで,微小血管や重なり合う血管の位置関係も把握しやすくなる。動きのアーチファクトにも強く,より詳細な血管評価を支援する。

「VM10」では自動画像調整により深部まで明瞭な画像を提供

「VM10」では自動画像調整により深部まで明瞭な画像を提供

 

詳細な血管評価を支援する「Flow Viewer」

詳細な血管評価を支援する「Flow Viewer」

 

mL26-8トランスジューサは,8~26MHzの周波数をカバーする超高周波マイクロリニアトランスジューサである。従来製品よりも空間分解能が36%,透過性が64%向上し,真皮のような非常に浅い領域から,乳腺・甲状腺,表在血管,整形,新生児,眼球など,幅広い領域で明瞭な画像を得られる。Flow Viewerによる血流情報の詳細な観察が可能なほか,穿刺における針の視認性を向上させる「Needle Visualizationモード」にも対応し,より正確な診断や手技を支援する。

真皮などの浅い領域も明瞭に描出する超高周波マイクロリニア「mL26-8トランスジューサ」

真皮などの浅い領域も明瞭に描出する超高周波マイクロリニア「mL26-8トランスジューサ」

 

●Image Guided Therapy(IGT):モバイルCアーム「Zenition」シリーズからFPD搭載の2機種を展示

フィリップスは,耐久性の高い回転陽極やイメージインテンシファイア(I.I.)を開発し,1955年に世界初の外科用Cアーム「BV20」を製品化。2009年にFPD搭載のCアームを発売するなど,外科用Cアームのイノベーションを牽引してきた。2019年からはZenitionシリーズを展開しており,今回の展示ではFPD搭載のモバイルCアーム「Zenition 30」と「Zenition 70」の2台を展示した。
2023年9月に発売された最新モデルのZenition 30は,固定陽極X線管仕様の整形外科領域向けの機種で,他機種にない電磁式ロックを採用し,術者自身がアーム操作をしやすい点が大きな特徴となっている。アーム操作のための補助者をつけないなど運用の可能性が広がり,働き方改革に貢献する。術者ハンドルのロック/解除ボタンと,それに対応する可動部が同じ配色となっており,直感的な操作を支援する。12インチのスタンドタッチスクリーンモニタを搭載し,156°のアンギュレーション(アームの回転幅)を備えた柔軟性も特長だ。また,症例ごとに最適な画質と線量を調整しプリセットする「Japan Craft IQ」(開発段階から日本の画像品質専任者が監修)や,金属インプラントを自動認識して線量を変えずにコントラストを調整する画像処理技術「MetalSmart」を搭載し,低被ばく・高画質な透視で手技をサポートする。

フラッグシップモデルのZenition 70は,アームスタンドに搭載した15インチの大型タッチスクリーンモニタに術中に必要な操作を集約しており,X線量の調節や画像処理を指先一つで直感的に行える。MetalSmartも搭載しており,低被ばくで最適な画像の提供と直感的な操作性で,オペ室のパフォーマンス向上にも貢献するソリューションとしてアピールした。FPDサイズは21cm×21cm,26cm×26cm,30cm×30cmの3種類をラインアップしており,心臓血管外科の血管内治療から脊椎手術,整形外科手術,泌尿器科,麻酔科など,幅広い領域に対応する。

モバイルCアームの「Zenition 30」(手前)と「Zenition 70」(奥)

モバイルCアームの「Zenition 30」(手前)と「Zenition 70」(奥)

 

術者ハンドルのロック/解除ボタンと対応する可動部が同じ配色で直感的な操作が可能(Zenition 30)

術者ハンドルのロック/解除ボタンと対応する可動部が同じ配色で直感的な操作が可能(Zenition 30)

 

●お問い合わせ先
社名:株式会社フィリップス・ジャパン
住所:東京都港区麻布台1-3-1 麻布台ヒルズ森JPタワー15階
TEL:0120-556-494
URL:https://www.philips.co.jp/healthcare