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別冊付録

CURRENT TECHNOLOGY

クリニカルMRS/CSIを搭載した超電導型MRIシステムECHELONシリーズ

MRスペクトロスコピー(MRS)は,ケミカルシフトを利用して体内の代謝物質情報を非侵襲的に検知する計測法です。ケミカルシフトとは,同じ水素原子を含む物質であっても分子構造の違いによって共鳴周波数が変化する現象を言います。MRSを計測することにより,神経細胞の状態や増殖細胞の活性度,エネルギー代謝異常などに関する情報を得ることができます。特に,脳神経領域における腫瘍,膿瘍,変性疾患の鑑別や検出,経過観察に有用で,診断が難しい場面での補強ツールとしての役割が期待されています。MRSの臨床適用に関して,すでに欧米ではオプション検査としての認識が広がりつつあるのに対し,国内ではいまだ有用性への理解が十分に進んでいないという状況が続いています。その理由として,MRS計測の調整プロセスが多く煩雑であり,データの解析も難解で客観的評価が困難という点が大きな要因と考えられます。そこで日立では,これらの課題を解決する新しいMRSシステムを開発しました。

日立のMRSの特長

図1 1.5T超電導型MRI「ECHELON」シリーズ
図1 1.5T超電導型MRI「ECHELON」シリーズ

「使いやすく解りやすいMRS」の実現をめざし,“ワンボタン計測,ワンボタン解析"が行える新たなMRSシステムを超電導型MRIシステム「ECHELON」シリーズ(図1)に搭載しました。
“ワンボタン計測”は,スタートボタンをクリックするだけで調整と計測を完了し,調整のプロセスや計測途中の様子を画面上で確認することも可能です。また,“ワンボタン解析”は各代謝物質の信号強度をリスト表示し,各信号強度の信頼度を客観的指標で評価することもできます。
データ解析プロセスにおいては,臨床研究サイトから高い評価を得ている“LCModelソフトウエア”(S-provencher社製)を解析エンジンとして採用しており,計測データを別のワークステーションなどに転送することなく,コンソール画面上でLCModelの解析結果を表示することが可能です(図2)。

図2 MRS/CSI計測・解析手順の比較
図2 MRS/CSI計測・解析手順の比較

MRS計測例

MRS計測を行うためには,高性能なハードウエアおよびソフトウエアが必要とされます。特に,ケミカルシフトによる共鳴周波数の変化量はきわめて小さいため,高い静磁場均一度が要求されます。ECHELONシリーズでは,アクティブシミングシステム“HOSS(High Order Shim System)”を装備しており,安定した高い静磁場均一度を得ることが可能です。
図3は,ECHELON Vegaで計測した健常者のMRS計測例です。この例では,正常な神経細胞の密度に相関するN-acetyl-aspartate(NAA)や,神経細胞,グリア細胞の密度に相関するcreatine(Cr)とmyo-inositol(Ins),細胞膜代謝の増減に相関するcholine(Cho)等の信号ピークを明確に測定できており,また,近接するCrとChoの信号を完全に分離できていることから,高い静磁場均一度が得られていることがわかります。図4は,glioma(多形性膠芽腫)のMRS計測例です(計測時間:4分30秒)。この症例では,腫瘍部分においてChoの信号が増加,NAAの信号が低下し,嫌気性解糖の結果生じるlactate(Lac)の信号が増加しています。

図3 健常者のMRS計測例
図3 健常者のMRS計測例
図4 glioma(多形性膠芽腫)のMRS計測例
図4 glioma(多形性膠芽腫)のMRS計測例

CSI計測例

CSI(Chemical Shift Imaging)は,MRSによる代謝物の分布を二次元的に計測してカラーマップ表示したものです。
図5に,解析画面の例を示します。3断面の位置決め画像上に計測領域と,通常の診断画像にボクセルポジションが表示され,関心ボクセルが選択されます。選択した関心ボクセルのスペクトラムが拡大表示され,各代謝物の数値データも表示されます。さらに,選択的に各代謝物のカラーマップを画像上にフュージョンして表示することも可能です。

図5 クリニカルMRS/CSI解析画面
図5 クリニカルMRS/CSI解析画面

図6は,小児神経膠腫のCSI適応例です。NAAの低下とChoの上昇が認められ,右下がりのスペクトラムとなっています。MRSは,特に小児のようにバイオプシーが困難な場合でも,非侵襲的に鑑別に有用な情報が得られるという利点があります。

図6 クリニカルMRS/CSI(小児神経膠腫)
図6 クリニカルMRS/CSI(小児神経膠腫)

ワンボタン操作のクリニカルMRS/CSIの実現により,T1,T2強調などの通常の頭部撮像と造影検査に加えてMRS計測を追加しても,トータル約30分で検査を終えることができるようになり,MRS計測をルーチン検査としてご利用いただくことが可能となりました(図7)。

図7 クリニカルMRS/CSIルーチン検査
図7 クリニカルMRS/CSIルーチン検査

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