日立メディコ

ホーム の中の inNavi Suiteの中の 日立メディコの中の Technical Noteの中の 日立1.5T MRI「ECHELON Vega」の最新アプリケーション

Technical Note

2008年9月号
特集−Step up MRI 2008−Z 技術開発最前線

MRI−日立1.5T MRI「ECHELON Vega」の最新アプリケーション

八杉 幸浩
MRIマーケティング本部

高磁場MRIシステムでは,ハードウエアの仕様だけでなく,さまざまなアプリケーションの搭載が重要なポイントとなっている。日立1.5T MRI「ECHELON Vega」(図1)は,被検者が挿入された状態での静磁場を高精度に補正する高次シミングシステム“HOSS(High Oder Shim System)”を特長とした最新のMRIシステムである。本稿では,ECHELON Vegaに搭載された最新の高機能アプリケーションを解説する。


図1 ECHELON Vega
図1 ECHELON Vega

◆prime FSE

“prime FSE”は,進化した最新のFSEシーケンスである。ルーチン撮像で重要なFSE法において,複雑な撮像パラメータを最適化し,常に画像を最適に保つことができる。まず,シーケンスパラメータの実効TEとバンド幅の入力により,そのほかのパラメータが自動的に最適化される。このとき,エコーシフト時のエコー配列が滑らかにつながるようにデザインされるため,これに伴う画像アーチファクトを低減できる(図2)。さらに,最短IET(インターエコータイム)が選択され,フローアーチファクトを低減する。デュアルコントラスト撮像時には,それぞれのシーケンスが独立してデザインされるため,プロトン密度強調画像(PDWI)とT2強調画像(T2WI)のコントラストを良好に保つことができる。また,heavy T2WI撮像時にTEの短いエコー成分を除くことで,高い画像コントラストを実現する。
このように,FSE法の画像を改善するさまざまなテクニックを総合した技術がprime FSEである。この画像例を図3,4に示す。prime FSEでは,シーケンスの最適デザインにより画像のアーチファクトが改善されている。


図2 prime FSEのエコー配列の違い
図2 prime FSEのエコー配列の違い
prime FSEではk空間上のエコー間の段差をなくし,滑らかな配列を行う。
 
図3 アーチファクトの低減効果
図3 アーチファクトの低減効果
 
図4 エッジエンハンスの低減
図4 エッジエンハンスの低減

◆H-sinc

高磁場MRIでは,脂肪信号の抑制が重要な技術となる。ECHELON Vegaでは一般的なSTIR(short TI inversion recovery)法とCHESS(chemical shift selective)法以外に,新たに開発した脂肪抑制パルスを利用することができる。
“H-sinc”は,日立独自の広範囲脂肪抑制手法である。RF照射不均一の影響が少ないという特長があり,体幹部などの周辺で特に高い効果がある。この手法は図5で示すように,CHESSパルスを複数回印加し,さらにその位相や信号強度を調整した最適化パルスを使用することで,安定した脂肪抑制を得るものである。STIR法の効果を持たせたCHESSパルスによる脂肪抑制で,脂肪のnull pointであるTI(約150ms)より短いTIを設定することができる。
図6に,脊椎領域と体幹部のH-sincによる脂肪抑制画像を示す。H-sincでは,広範囲で高い脂肪抑制効果が得られている。図7は,膀胱腫瘍と右耳下腺腫瘍の脂肪抑制T2WIであるが,磁化率による不均一の影響を受けやすい頸部領域においても良好な脂肪抑制効果が得られている。


図5 H-sincの原理
図5 H-sincの原理
STIR法のIRパルスで脂肪を選択的に励起し,さらに脂肪のnull pointであるTI=約150msを待たずに,より短いTIを利用できるように分割してIRパルスを照射する。
 
図6 H-sinc脂肪抑制の効果
図6 H-sinc脂肪抑制の効果
 
図7 H-sinc脂肪抑制の臨床適用例
図7 H-sinc脂肪抑制の臨床適用例

◆NATURAL

最新の高感度受信コイルは,“RAPID”(パラレルイメージング)対応も含め,マルチチャンネル化が進んでいる。このようなマルチチャンネルコイルは感度が向上する反面,受信感度の均一性においては低下するため感度補正を行う必要がある。例えば,頭部において8チャンネルコイルは,コイルエレメント近傍の頭表部位は高い感度であるが,中心部位では感度が低下し,画像が暗く表現される。そこで,この受信コイルの感度分布をあらかじめ測定しておき,この情報と画像の大まかな明るさ分布をもとに中心輝度を持ち上げる自己参照型補正手法がある。しかしこの手法では,被写体の大きさによる感度分布変化に対応できず,不要な画像ノイズが持ち上がってしまう,病変による信号への影響などの問題がある。
それに対し,ECHELON Vegaに搭載した新たな感度補正手法“NATURAL(NATural Uniformity Realization ALgorithm)”は,図8に示すように,ガントリに内蔵された均一性の高い照射コイルで受信を行い,撮像した参考画像を基準として感度の均一補正を行う技術である。さらにNATURALは,これまでの画像自体で補正を行う自己参照型補正のアルゴリズムも併用することで,より正しい感度補正を行うことができる(図9)。


図8 NATURALの原理
図8 NATURALの原理
個々の受信コイルから得られたそれぞれの画像と,均一な感度分布を持つガントリコイルから受信された画像を比較して感度補正を行う。
 
図9 NATURALの効果
図9 NATURALの効果
自己参照型:あらかじめ求めた受信コイル感度分布と,画像データの低周波領域から得た輝度傾向を用いて均一補正を行う。
一般法:ガントリコイルの均一な感度分布を基準にして,マルチチャンネルコイルの個々の感度を補正する。
NATURAL:一般法に自己参照型のアルゴリズムも同時に用いて,より正しい補正を行う。


【問い合わせ先】 MRIマーケティング本部  TEL 03-3526-8307