東芝メディカルシステムズ

別冊付録

Aquilion PRIMEのコンセプトと技術

宮谷 美行
東芝メディカルシステムズ株式会社CT営業部

Aquilionとは,空の王者「Aquilia(鷲)」と陸の王者「Lion」に由来する。世界最高性能のCTシリーズとして命名された。当初は,社内外から「発音しづらい」と言われたネーミングだったが,今では世界に誇るブランドとなった。
1999年に誕生した「Aquilion Multi」のスペックは,10年以上経った今でも見劣りしない非常に高いもので,0.5mmスライス検出器を搭載し,リニアモータを使って900viewを0.5秒回転で達成した。
また,長い焦点・検出器間距離により,ガントリ開口径を大きくすることで,寝台幅を470mmにすることができた。焦点・検出器間距離を長くする標準ジオメトリは,画像のボケ低減だけでなく,今後増大するコーン角への影響を,この時点で最小限に抑えることを考えていた。「Aquilion Multi」から「Aquilion ONE」に至るまで同じコンセプトなのは,Aquilion ONEの原型となる256列のプロトマシンがこの頃に開発されたからだ。
その後,2002年には16列CTによる本格的な3D診断が,2004年には64列CTによる冠動脈撮影が臨床で行われるようになり,そして,2007年に登場した320列ADCTの「Aquilion ONE」は,ヘリカル撮影を行わず,4D撮影で診断目的の血管造影の一部を代替した。
そして,64列を超えるヘリカルCTとは何かを考えた時,ルーチンから特殊な検査に至るまでのすべての検査を,高速に,楽に,かつ低侵襲に行える,究極のCTであると東芝は考えた。0.5mm×80列の検出器を搭載した「Aquilion PRIME」は,単に検出器を多列化しただけでなく,ヘリカルスキャンにかかわるすべてのワークフローの高速化を図っており,そのコンセプトを東芝CT装置の最高機種であるAquilionの名を冠した「Aqula(アキュラ)」と名付けた。
ポジショニングに関する高速化を「Aqula Setting」,スキャンに関する高速化を「Aqula Helical」,そして,再構成処理に関する技術を「Aqula Recon」と名付け,それらすべてに最新技術を投入することで,ワークフロー全体の高速化を実現した。
また,それらの技術により,心電同期撮影による冠動脈撮影や,逐次近似応用再構成を用いた低線量撮影も,特別な撮影や特別な処理を行っていることを感じさせないフローとなった。
Aqula Settingでは,Aquilionの標準ジオメトリを最大限生かすべく,新開発のX線コリメーションにより,開口径をさらに780mmにまで広げることを実現した。広いガントリ開口径は,バックボードを使った撮影を行う救命救急領域だけでなく,寝台を左右に移動させることによって,患者さんを動かすことなくFOV中心と撮影対象の中心を合わせることが可能となる。
Aqula Helicalでは,0.5mm×80列検出器と,高ヘリカルピッチ撮影時に発生するアーチファクトを抑制するTCOT+により,高精細かつ超高速のヘリカル撮影を実現した。
さらに,画像再構成系の高速化技術も一新した。Aquilion PRIME専用画像再構成エンジンの開発を行い,最短60画像/秒の画像再構成を行うことができ,被ばく低減の重要な技術となる逐次近似応用再構成の高速処理も可能とした。
東芝は,「日本におけるCTの医療被ばくを一気に半減させたい」という強い意志を持っており,これまで,画像ベースのノイズ低減技術「QDS」や,QDSの逐次処理によるさらなるノイズ低減技術である「AIDR」,生データベースでのストリークアーチファクトを低減する「Boost 3D」を開発し,多くの装置に搭載してきた。
Aquilion PRIMEは,最新の被ばく低減技術である逐次近似応用再構成法「AIDR 3D」を標準搭載している。AIDR 3Dは生データと呼ばれるサイノグラムを構成する前の投影データ上で処理を行い,選択的かつ効果的にノイズやアーチファクトを低減する。
また,究極のヘリカルCTにふさわしく,ヘリカル撮影軌道前後の再構成に寄与しない無駄な被ばくをカットする「Active Collimator」も標準搭載している。
1986年にヘリカル技術の特許を取得した東芝が,究極のヘリカルCTとして位置付け,開発したのが,「Aquilion PRIME」なのである。

多列化に伴うコーン角の広がり
多列化に伴うコーン角の広がり

究極のヘリカルCTのコンセプト「Aqula」
究極のヘリカルCTのコンセプト「Aqula」

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