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次世代の画像解析ソフトウェア

【月刊インナービジョンより転載】

■AZE VirtualPlace 風神Plusを活用した細血管三次元画像構築の有用性

大西 宏之
王子会神戸循環器クリニック放射線技術科
福家 啓起
王子会神戸循環器クリニック循環器内科
岡田 昌義
王子会神戸循環器クリニック心臓血管外科

●はじめに

当院は,2009年1月に開院した循環器診断に特化した新しい診療スタイルのクリニックである。また,低侵襲に心血管系疾患の早期発見や外科的治療の指針に画像を有効利用するため,最新のMRI装置,CT装置を導入した。そして,撮像された膨大なスライスデータを「AZE VirtualPlace 風神Plus」(以下,VirtualPlace)に転送して,診断だけでなく,術前シミュレーションのためにも三次元画像を構築して,臨床の現場に提供している。
本稿では,特に術前シミュレーション画像について当院での活用手段について述べる。

●症例提示

●症例1:右側頭部AVM

右側頭部に動静脈奇形(arteriovenous malformation:AVM)を認める症例に対して,術前評価としてnidusと周囲血管との関係を把握するため頭部CTAを施行した。撮影条件は,120kV,220mAs,0.33s/rot,pich 0.8,scan time約4秒である。撮影プロトコールは,単純と,動脈優位相および静脈優位相を撮影する。撮影タイミングは,高濃度造影剤90mLを注入速度4mL/sで右正肘静脈より投与し,総頸動脈において,目視法で動脈が約300HUになってから動脈優位相の撮影を開始した。また,delay5秒で静脈優位相を撮影した。
一般的に,AVMの血液循環は急速であるため,動脈優位相で流出血管の描出が予想できる。そのため,静脈優位相を撮影することによって,動脈優位相の流出血管の同定が可能であると考えられた。単純・動静脈優位相の3相をVirtualPlaceに転送し,サブトラクション機能にて動脈優位相から単純を差分して流入動脈,nidus,一部の流出静脈の三次元画像を取得することができる。また同様に,静脈優位相から単純を差分することによって,流出静脈相の画像が取得できる(図1)。そして,動脈優位相と静脈優位相の血管を色分けして表示し,マルチボリューム機能により,色の重なりの強い部分と弱い部分から動脈と静脈を判断する。そのおのおのの三次元画像から,余分な血管を削除していくことによって,最終的にnidusを取り巻く流入・流出血管を描出した(図2)。
外頸動脈には浅側頭動脈,後耳介動脈,後頭動脈が存在しており,AVMの流入・流出血管の情報が,手術時の血管の結紮時に必要不欠である。本症例においては,右の浅側頭動脈からnidusへ流入しているのが明瞭に描出されている。また,反対側の浅側頭動脈からも細い流入血管の存在が確認できたが,その血管を追跡していくと同側の静脈にもつながっており,nidusと動静脈の判別が困難な血管においては,画像上で色調の合成として表現した(図2)。

図1 症例1:右側頭部AVM a:動脈優位相−単純の差分画像 b:静脈優位相−単純の差分画像。色分けしておくことによって時相を判別できる。
図1 症例1:右側頭部AVM
a:動脈優位相−単純の差分画像 b:静脈優位相−単純の差分画像。
色分けしておくことによって時相を判別できる。

図2 症例1:nidus周辺の流入出血管の色分け表示
図2 症例1:nidus周辺の流入出血管の色分け表示

術後のフォローアップとして,同症例を同様に撮影した画像を提示する。右の浅側頭動脈,静脈が結札されnidusが切除されている(図3)。また,対側から頭頂部にかけての末梢血管を描出するために,骨のマスクを膨張させ,オパシティを調整することで頭頂部の末梢動脈も確認できた(図4)。

図3 症例1:術前・術後のVR像 a:術前のVR像 b:術後のVR像(nidusの流入出血管が切除されている)
図3 症例1:術前・術後のVR像
a:術前のVR像 b:術後のVR像(nidusの流入出血管が切除されている)

図4 症例1:頭頂部の末梢血管像 a:頭頂部の末梢血管の全体像 b:拡大像
図4 症例1:頭頂部の末梢血管像
a:頭頂部の末梢血管の全体像 b:拡大像

このように,色分けした動静脈画像を形成外科医に提出することにより,AVMの全体像を術前に把握でき,血管の結紮箇所をシミュレーションできることは,非常に臨床的意義が大きいと考える。

●症例2:血管柄付遊離腓骨皮弁による下腿部再建術

がんや事故,骨髄炎などによって組織欠損を余儀なくされた場合,下腿部の腓骨,筋肉,皮膚を用いて再建術が行われる(血管柄付遊離腓骨皮弁)。この場合の術前シミュレーションとして,下腿部の腓骨とその周辺の筋肉へ向かう腓骨動脈から分岐する末梢動脈の存在(数本分岐することが知られている)および分岐の高さを知ることが,皮弁の栄養血管を把握することにつながり,切除範囲を決める上で大変重要である。
そこで,腓骨動脈から分岐する末梢動脈の描出法として,造影MRAを行った(図5)。MRAは,骨の影響を受けずに血管を描出できることが最大の特長である。しかも,造影MRAは,データ収集方法がCTとは異なるため,動脈血管だけを選択的に描出でき,本症例のような形態を把握するのには大変有用だと考える。しかし,MRAでは骨の情報が乏しいために,骨周辺の血管走行が不明瞭なのが問題点となる。

図5 症例2:下腿部の造影MRAのMIP(maximum intensity projection)像
図5 症例2:下腿部の造影MRAのMIP(maximum intensity projection)像

撮像条件は,3D-T1-TFE法にて下腿部を矢状断像で撮像し,撮像コイルは32ch cardiac torso coilを使用した。Gd造影剤を注入速度3mL/sで注入し,造影後から造影前を差分することで血管を描出する方法を用いた。また,目的血管が筋肉内を走行する穿通枝動脈であるため,循環器内科医の協力のもと,亜硝酸剤スプレーを用いた。高速注入と血管を拡張させていることで,腓骨動脈から分岐する穿通枝動脈が明瞭に描出されている。
骨の形態情報は,T1強調像の骨髄信号が高信号を呈するという事実から,抽出機能を用いて骨(骨髄)のVR像(volume rendering)を作成し(図6),差分画像の動脈のVR像とマルチボリューム表示することで,MRAの弱点である骨との位置関係が明瞭となった(図7,8)。マルチボリューム表示によって,腓骨,筋肉の切除範囲の決定するための臨床的有用性の高い情報が提供できた。

図6 症例2:下腿部動脈のVR像と骨のVR像 a:下腿部動脈のVR像 b:単純T1強調像の骨髄信号から作成した骨のVR像
図6 症例2:下腿部動脈のVR像と骨のVR像
a:下腿部動脈のVR像 b:単純T1強調像の骨髄信号から作成した骨のVR像

図7 症例2:下腿部の動脈と骨をマルチボリューム表示したVR像
図7 症例2:下腿部の動脈と骨をマルチボリューム表示したVR像

図8 症例2:下腿部の動脈のVR像 皮膚の情報を付加することによって,外観からの位置を同定するのに有益である。
図8 症例2:下腿部の動脈のVR像
皮膚の情報を付加することによって,外観からの位置を同定するのに有益である。

●まとめ

細血管を対象とした術前シミュレーションは,医療画像機器の高性能化に伴い,今後需要が増加していくものと考えられる。その中で,VirtualPlaceは膨大なスライスデータに対しても,ストレスなく快適な動作環境を提供してくれる。そして,ユーザーの自由な発想を具現化できるワークステーションを最大限に活用して,今後も臨床的に有用性の高い三次元画像構築に努力していきたいと考える。

【使用装置】
MRI装置:Achieva Dual Nova1.5T R2.6.(フィリップス社製)
CT装置:SOMATOM Difinition AS+(シーメンス社製)
【使用ワークステーション】 AZE VirtualPlace 風神Plus(AZE社製)

(2010年8月号)

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