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次世代の画像解析ソフトウェア

【月刊インナービジョンより転載】

■多方向からの心臓CT解析─既存のソフトウェアを用いた心臓周囲脂肪解析について

望月 純二(みなみ野ハートクリニック放射線科)


●はじめに

当院は,iDose4搭載のBrilliance iCT SP(フィリップス社製)を用いて心臓CTを実施している。Brilliance iCT SPの特徴は,128スライスヘリカルスキャン,0.27秒回転,1000mA出力などが挙げられ,より低被ばくで時間分解能に優れた撮影が可能である。また,ネットワーク型のワークステーションであるAZE VirtualPlace Plus(AZE社製)を用いることで,検査から結果説明までの時間短縮を図ることができている。

●心臓CTの解析

当院では,VirtualPlace Plusを使用し,以下のような多方向からの解析を行っている。

  1. VR(volume rendering)とAGV(angiographic view)による形態評価
  2. 細血管解析を用いた冠動脈狭窄度・壁性状評価
  3. ダブルオブリークを用いた,心筋脂肪変性・心筋perfusion・遅延造影による心筋性状評価
  4. 心機能解析ソフトウェアによる機能評価
  5. リスク評価として石灰化スコア,腹部内臓脂肪測定,心臓周囲脂肪測定

さらに,心臓CTの適応は冠動脈疾患が疑われる患者であるが,心膜疾患・シャント疾患・弁膜症など,検査により得られる情報を余すことなく医師に提供することを目指している。

●新しいリスク評価としての心臓周囲脂肪

近年,心臓周囲に位置する脂肪である心臓周囲脂肪の過剰な蓄積が,心筋梗塞や心房細動などの循環器疾患に影響を与える可能性が指摘されている1),2)。その心臓周囲脂肪は,心外膜を基準に,外側に位置しているものをparacardial fat(心膜外脂肪),内側に位置しているものをepicardial fat(心外膜脂肪)と2つに分けられる。心臓周囲脂肪でも特にepicardial fatは,直接,冠動脈や心筋に炎症性物質を分泌し悪影響を与え,リスクとして大きいと予測されている3)
心臓周囲脂肪の分布はさまざまであり,冠動脈周囲や房室間溝などに生理的な脂肪沈着を認めるが,特に肥満患者には多く蓄積される傾向にある。ただ,沈着する位置は個人差が大きく,一様ではない。そのため,測定は困難であり,定量的な測定法は確立されていない。

●心臓周囲脂肪の測定方法

当院では,石灰化スコア計測用単純CT画像を用いて,paracardial fatとepicardial fatを分離し,面積および体積を測定している。脂肪のCT値は,ヒストグラムから算出して平均CT値±2.2SDとした。解析は,アキシャルおよびサジタル画像から,体積測定ソフトウェアで,それぞれ最も多く脂肪が沈着しているスライスの脂肪の面積(図1,2)と,3D解析ソフトウェアにより両脂肪の体積を測定する。
体積測定の方法は,以下の通りである。(1) セミオートで脂肪を含んだ心臓全体を抽出する(図3 a)。(2) サジタルで求めた脂肪の推定CT値で閾値範囲設定を行い,心臓全体から脂肪のみを抽出させる。(3) 心外膜に沿ってparacardial fat(図3 b)とepicardial fat(図3 c)をセミオートで分離抽出する。
評価には各体積と,心臓全体に対する各脂肪の割合を算出して行う。面積に加えて体積を測定することで,心臓周囲脂肪を全体量として計ることができ,さらに体積比で評価することにより,呼吸変動や心位相の違いによる誤差を補正できると考えた。また,心臓と脂肪のマルチレイヤー表示画像は,患者への説明に有効である(図3 d)。

図1 アキシャル心臓周囲脂肪面積測定例
図1 アキシャル心臓周囲脂肪面積測定例

図2 サジタル 心臓周囲脂肪面積測定例とヒストグラム解析
図2 サジタル 心臓周囲脂肪面積測定例とヒストグラム解析

図3 心臓周囲脂肪体積測定例
図3 心臓周囲脂肪体積測定例

●まとめ

心臓CTは,他部位に比べて被ばく量は多くなる傾向にあるが,ワークステーションを有効に使用することで得られる冠動脈以外の情報に目を向けることが大切である。また,心臓周囲脂肪についても,撮影を追加することなく,既存のソフトウェアを使用して簡便に分離抽出し計測することができる。その結果,個人での経時的変化を評価できるだけでなく,今後,心臓周囲脂肪と循環器疾患との相関が得られれば,心疾患発症予防の新たな指標になることも可能と期待している。

[参考文献]

1) Ding, J., et al. : The association of pericardial fat with calcified coronary plaque. Obesity, 16・8, 1914〜1919, 2008.

2) Al Chekakie, M.O., et al. : Pericardial fat is independently associated with human atrial fibrillation. J. Am. Coll. Cardiol., 56, 784〜788, 2010.

3) 小川桂宏 : 異所性脂肪. 東京, 日本医事新報社, 2010.

【使用CT装置】 Brilliance iCT SP(フィリップス社製)
【使用ワークステーション】 AZE VirtualPlace Plus(AZE社製)

(2012年8月号)

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