320列CTによる心臓検査 ziostation2による大規模ネットワーク下におけるボリュームデータの活用 沖縄徳洲会湘南鎌倉総合病院 放射線科 清水利光

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320列CTによる心臓検査
 ー ziostation2による大規模ネットワーク下におけるボリュームデータの活用

Coronary CTは、近年心臓の検査法として確立されつつあり全国の病院で行われるようになっている。その理由は心臓カテーテルに比べて非侵襲的なこと、sensitivity、specificityが高いこと、またプラーク評価、心機能評価、心筋性状評価など多くの情報が得られることが挙げられる。さらに、診断のみでなく、経皮的冠動脈形成術(以下PCI)にも多くの情報を提供する検査となってきている1)、2)。 当院では、2010年9月の新築移転と同時に320列のAquilion ONE(東芝メディカルシステムズ社製)を導入した。その後、Coronary CTはもちろん、全体的な検査件数が格段に増加し同時にボリュームデータも多くなっている。そこで移転と同時に導入したziostation2の当院での使用方法について、心臓領域を中心に紹介する。

s 当院におけるziostation2のシステム構成
図1  Aquilion ONE CT室のziostation2 設置状況
図1 Aquilion ONE CT室のziostation2設置状況

当院では、CTの画像処理を目的としてziostation2の大規模ネットワーク型が導入されている。演算処理サーバー(VGS)3台と画像保存サーバー(ZIOBASE)3TBを中心とするソリューションである。これにより、同時に6万スライスの処理を可能としている。院内にはネットワーク型ワークステーションのフル機能クライアント(以下VGR)を41台導入して、どこからでも計測、VR作成、Thin SliceでのMPRの確認などが行えるようになっている(システム構成図参照)。
当院には3台のCT装置が稼働しており、1階に2台、4階に320列CTが設置されている。特に320列CTは検査件数が多く、大量の画像処理が必要となるため、VGR4台が稼働している(図1)。そのうち2台はVGR専用PCであり、残りは電子カルテ端末にインストールして利用している。検査時には3〜4名の診療放射線技師で稼働させているが、撮影終了後にCT担当の6〜7名が集中して画像処理やレポート作成を行うために必要な台数である。
また、ziostation2は東芝社製のレポートシステムと連動しているため、石灰化を計測するアガストンスコアをziostation2で処理することで、ワンクリックでレポートシステムにアガストンスコアの情報がすべて入るようになっている。近く心機能解析の情報も取り込む予定である。

●湘南鎌倉総合病院ziostation2ネットワーク構成図
●湘南鎌倉総合病院ziostation2ネットワーク構成図

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s ボリュームデータを中心に院内全体で活用
図2  循環器診察室の動画システムとziostation2
図2 循環器診察室の動画システムとziostation2

ziostation2を多く使用しているのは、循環器科、脳神経外科、脳卒中科、外科、ERである。
近年、MDCTによって1回の検査で多くの画像情報が得られるようになったが、PACSサーバーの容量の問題からボリュームデータをPACS上で医師に提示することは困難な状況であった。そこで、ERでは、PACSに5mmスライス厚のAxial画像を送信するのとは別に、ziostation2をPACSの“短期サーバー”として考え、必要に応じてボリュームデータをziostation2に送信し診断している。これにより後日、読影医より“ボリュームデータを見たい”という要望があった場合でも、生データがなく再構成できないという状況を回避し、ERの現場では本当の意味でのThin Sliceによる診断が可能となっている。
脳卒中科では、320列CTでのみ撮像可能な全脳4Dデータによる解析を行っている。ルーチン検査は技師が作成するが、症例によってデータ量の大きい4D画像やVR画像は医師が作成している。外科では、ステントグラフト作製に必要な血管径の計測に使用しており、脳神経外科では医師がアプローチ部位によって腫瘍、動脈瘤などの計測を行っている。
以上のように、現在の診療ではボリュームデータでの診断、計測が必要不可欠となっている。当院は15階建てで、医師が計測やボリュームデータを観察するためだけに移動するのは困難である。VGRによって手術室や診察室、医局やナースステーションなど、院内のどこでも利用できる環境が構築できた(図2)。

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s Coronary CTでのziostation2の使用法

当院でのCoronary CTは、移転後から2011年2月までで1000件にのぼる。そのほとんどが循環器科からのオーダーである。また、当日追加のCoronary CTも多く、検査後に診察を行うこともある。そのため、画像処理は撮影終了後、1時間以内にレポートをつけて終わらせることが要求され、迅速な画像処理が可能なワークステーションが必要であった。
当院でのziostation2によるCoronary CTの具体的な運用を紹介する。

〈画像処理〉
320列CTで撮像したボリュームデータをziostation2のアプリケーションである“CT冠動脈解析2”によって展開すると、心筋、大動脈、右冠動脈、左冠動脈に分かれて自動抽出され、その精度はかなり高いと感じている。まず、VRにて心筋のみを抽出し、肺動脈、肺静脈、肝臓をカットする。次に、右冠動脈のみ抽出し、マスクをつけて右冠動脈のみが末梢まで選択されているかを確認する。
同様に左冠動脈についても行う。血管抽出が足りなければ、“エクステンダー(自動血管延長機能)”や“フリーライン”を使用する。大動脈は、ほぼ完全に抽出されているので、最後に大動脈、心筋、右冠動脈、左冠動脈を加算することでVRは終了する。細かい手順をとると以上のようになるが、ほとんどの場合が肝臓のカットのみでVRが完成する。
次に、冠動脈にパスを引くことを行う。これは最も簡単で、冠動脈をクリックするだけでパスが完成する。石灰化やステント、冠動脈の分岐部でパスが引っ張られることがあるので、パス上でドラッグして修正を行う。この状態で、『診察用』という名前を付けて“ワークスペース”に保存しておく。
これらの操作に必要なアイコンは、カスタムパレットに任意に登録できるので、毎回画面端までマウスを持っていかなくても操作可能となる。これはわずかな違いだが、件数の多い画像処理ではかなり重宝している。

〈必要な画像をPACS転送〉
ziostation2からPACSへ転送する画像は、VR、AngioView、CPR、ストレッチMPR、MPR Axialである。VRは、入口部や全体が見えるように15枚程度作成している。AngioViewは、RAO、RAO CAUDAL(以下CAU)、CAU、CRANIAL(以下CRAN)、LAO CRAN、LAO、LAO CAUの7Viewを分岐良く描出している。残りのCPR、ストレッチMPR、MPR Axialは、VGRに入っている組み合わせ画像出力を使用している。この出力方法はいくつかの組み合わせがあるため、各施設が必要な画像を選択し出力することができる。当院の出力画像を図3に提示する。
ステントや石灰化の強いところ、プラークなどのしっかり評価したいところは、MPRにて細かくshort Axialやlong Axialなどを作成しPACSに送信している。

図3 PACS転送している出力画像
図3 PACS転送している出力画像

〈実際の診察〉
当院では、基本的にPACSを使用して診察を行っている。しかし、評価困難なものや、心臓カテーテルが必要なものについては、診察室の電子カルテにインストールされたVGRを利用して、“ワークスペース”から技師が作成した『診察用』と名前をつけたボリュームデータを開き診察を行っている。これにより、CPRやストレッチMPR、Axial断面などを自由に動かして確認できる。

〈心臓カテーテル室での使用法〉
当院の心臓カテーテル室(以下心カテ室)にも同様のVGRを設置している(図4)。VGRはPCIの難しい症例に使用しているが、特に慢性完全閉塞(CTO)症例では非常に有用である。Coronary CTの利点のひとつに、閉塞血管の内部が確認できるということがある。これを生かして、心カテ室ではVGRを使用し、閉塞内部がプラークなのか石灰化なのかをリアルタイムに確認することができるようになっている。
また、ある程度の厚みを持たせて(スラブMIP)表示することにより、閉塞している血管を順行性の血管と、側副血行路の血管を挟み込む形となり、任意の方向より確認することができる。この方法により、Angioでは確認できない閉塞部の血管走行がわかり、側枝との関係もつかむことができる。まだ導入後のCTO成績を出すほどの件数を行ってはいないが、医師はCTO治療を行う際に必要な情報だと認識している。

図4  心臓カテーテル室内に設置されている、56インチのLIVEモニター。今後、出力予定である。
図4 心臓カテーテル室内に設置されている、56インチのLIVEモニター。今後、出力予定である。

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s ボリュームデータのさらなる高速処理に期待

当院に導入された320列CTのAquilion ONEは、今までの64スライスCTに比べ、明らかに造影剤の低減、また低線量での撮影が可能になってきた。よって、今後もCoronary CTは増えていき、同時に当日のうちに診断をつけたい患者や急性冠症候群の症例も増えていくと考えられる。これらにより、今までよりも速い画像処理が必要とされている。
そのような状況でワークステーションに望むことは、ボリュームデータを任意の画像処理法で展開した時、自動で、なおかつ手直しすることなく、診断可能な画像まで作成してくれることである。また、ボリュームデータの時代になり、今後は短期サーバーとしての利用も期待され、より大きなメインサーバーとVGSの計算スピードアップが望まれる。
今後もCTデータは増える方向であるうえに、320列CTは多くの可能性を秘めており、ziostation2に望まれることは増えていくと思われる。

●参考文献
1) 医学のあゆみ.229・2,2009.
2) Circulation. 120,867-875,2009.

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(インナービジョン2011年5月号掲載)

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