臨床診断に役立つモバイル活用事例—ziostation2による緊急時の画像配信ソリューションを救急医療に活用 石川県立中央病院 放射線診断科

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臨床診断に役立つモバイル活用事例
 — ziostation2による緊急時の画像配信ソリューションを救急医療に活用

スマートフォンやタブレット端末の登場により、携帯電話機能やメール、インターネット環境をより身近なツールとして活用することが可能になってきた。これまでの携帯電話などに比べれば、画像表示サイズや解像度は飛躍的に向上しており、ノートPCに比べて携帯性に優れている。このツールが貢献できる用途は確実に広がっている。医用画像システムにおいて緊急時の画像配信ソリューションは、各診療科との緊密な連携に不可欠であり、高度な救急医療サービスの向上に期待がかかる。読影者が居場所や時間を限定されることなく画像を詳しく観察することが容易となれば、救急などの緊急読影に際して有効であろう。

s zioMobileとiPadによる緊急時画像配信システムを構築

当院は石川県金沢市に位置し、金沢大学病院と金沢医科大学病院とともに24時間365日三次救急を担当、石川県の救急の砦的な役割を担っている。金沢市内はもとより、加賀、能登など県内全域から患者の搬送を受け入れている。2010年度の救急部受診患者において、CT、MRI検査の実施件数は、延べ3855件であった。救急で時間外に行われる画像検査に対して、放射線科医は決められたスケジュールに基づいて担当医が待機している。救急医の要請があれば病院へ来て、行われた検査に対して緊急読影を行っているが、放射線科医の病院到着までの時間がかかることや救急医の遠慮などの問題があり、即時性の高い緊急時の画像診断読影支援が求められていた。そこで、当院では2007年より、救急患者のCT、MRI検査結果を放射線科専門医に即時に相談できるシステムとして、EIZOが開発した「Air ViewQuad-L」を導入した。これは携帯テレビ電話機能を使用するもので、簡便で安価、画像情報の院外流出がないという利点のあるシステムである。導入後、月平均4〜5件の利用実績があったが、このシステムでは肝心な画像解像度はモニタ診断よりかなり劣り、画像の操作性も不良であった。そのため、送られた画像が判読しにくいという理由で、病院へ出向いて読影することもまれではなかった。
この経験を踏まえて、今回、われわれは画像解像度の向上を主な目的として、緊急対応可能な配信・受信システムを検討し、ザイオソフト社製の「zioMobile」を導入した。
当院では以前より、ザイオソフト社製のZIOSTATIONのネットワークタイプを使用していたが、CT更新に伴い、ワークステーションシステムのさらなる配信機能の強化を目的として、他社製品も含め検討を重ねた結果、コスト的、拡張的な面から最新バージョンであるziostation2のネットワークタイプを選択した。その配信機能として、今回新たに採用したのがzioMobile Gatewayである。これは院内外を問わず、院内のDICOM画像データを送信し、モバイル端末で画像参照を行うことができる、文字どおりのMobile Kitである。近年の小型端末は非常に進化が早く、Apple社のiPadは携帯性に優れながら、画面表示サイズも大きく、画像参照に十分に利用可能な解像度を備えている。さらに、ワークステーションからオフラインで必要なデータを匿名化、暗号化して書き出し、メール添付書類機能を利用して送信し、専用のビューワーソフトで解凍して画像を閲覧するため、患者の個人情報が保たれる。読影を依頼する救急医側も、院内電子カルテからワークステーション画像を参照することが可能で、放射線科医から結果報告を受ける際には同様の画像を見ることができる。診断する側としても、iPadを利用しているため高画質の画像が閲覧できる、ビューワー機能が直観的でわかりやすい、通常のメール機能を使用しており、汎用性が高く画像転送にかかる時間が短い、ビューワーが無料で(zioMobileの暗号化したファイルを参照できるビューワーはApp Storeから無料でダウンロードが可能である)費用の負担がなく、院内外での利用向上を図りやすい、などの利点がある。

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s セキュアな環境でデータを送信し、iPhone,iPadでの画像参照を実現
図1 ziostation2のVGRクライアント
図1 ziostation2のVGRクライアント

画像データの送信は、ziostation2のどのVGRクライアント(フル機能端末:図1)からでも操作が可能で、患者リストから目的の検査を選択してメールに添付する形式である。その際、暗号化パスワードを入力する必要がある。メール受信者はメール受信後に、このパスワードを入力しないと復号化することができない(図2)。セキュリティ向上のため、技師側でメール転送時に設定されるパスワードは単一のものとせず、月単位で変更することとした。
使用できるモバイル端末装置はiPhoneまたはiPadで、操作性も非常にシンプルにまとめられている。リアルタイムの画像操作(拡大・縮小、WL/WW値調整、反転など)のほか、距離計測やコメント記入なども行える。操作方法も、指の動きに合わせたスクロールやフリックでページングする、ピンチイン・アウトに合わせて画像の拡大・縮小がインタラクティブに行えるなど、iPhone、iPadの特長である操作方法にあわせた直感的なものとなっている(図3)。
患者情報を除くオリジナル画像の持つすべての情報がiPhone、iPad上でも保持され、JPEGやPDFへの変換による画質劣化がなく、実用性が高い。iPhone、iPadの画面は通常使用しているモニタより大幅にサイズが小さいため、確認しづらい場合は拡大などの操作が増えることから、元画像のクオリティは非常に重要である。

図2 zioMobileにおけるiPadへの配信の仕組み
図2 zioMobileにおけるiPadへの配信の仕組み
図3 フリックやピンチアウトなど、iPadのユーザーインターフェイスで操作可能
図3 フリックやピンチアウトなど、iPadのユーザーインターフェイスで操作可能

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s 30分前後で救急画像の読影依頼から結果報告まで

当院では、救急画像診断支援として、院外にいる待機医が利用する際の使用フローを図4のように決めている。

図4 当院における救急画像診断支援の使用フロー
図4 当院における救急画像診断支援の使用フロー

(1) 救急当直責任医が画像の読影が必要と判断した場合、放射線科待機医に電話で連絡をする。
(2) 放射線科待機医と救急当直医で臨床情報の交換を行い、画像転送をするかどうか決める。
(3) 画像転送が決まった場合は、救急当直医が当直放射線技師に電話連絡をして、当該患者の当該検査の中で必要な画像データ(シリーズ番号とイメージ番号)を指示し、画像転送を依頼する。
(4) 診療放射線技師がzioMobileで放射線科待機医に画像を送信。電話で放射線科医に伝える。
(5) 放射線科待機医は読影後、緊急当直医に電話で読影結果を報告する。

例として急性腹症で撮影された腹部CT検査で、使用フローに従い、運用を行った結果を下記に示す。
・救急医の依頼から放射線当直技師が画像データを送信するまでの時間 → 10分前後
・ メール転送にかかる時間 → 2〜3分
・データ解凍とビューワーの立ち上がり → 2〜3分
・ 読影に要す時間 → 5分前後
・依頼から結果報告までの時間 → 15〜20分程度

現時点での経験例においては、救急医からの依頼電話を受けてから、メール受信し画像をダウンロードするまでの時間は10〜15分、読影に要した時間は4〜5分であり、比較的短時間での結果報告が可能であった。現実的に送信される枚数には限界があるものの、モニタ診断と比べて診断には問題のない画質が得られている。画像の操作性も簡便であり、読影結果は、その後病院にある読影システムで行った読影結果と変わりなく、正確な診断が可能であった。期待通りのパフォーマンスであったので、さらに使用されるケースは増えると予想される。
当機能はziostation2から搭載された新しい機能であり、今後の機能向上にも期待を寄せている。現在はメール添付機能を使用しているため、添付画像の作成に画像枚数の制限(50枚)があり、転送画像の選択も救急医に依存している。放射線科待機医は休日の画像検査の読影についても、1〜2日中には登院の上、正規レポートを作成しており、相談患者の送信部位外の画像データも確認しているが、送信部位外に病変が存在する可能性もあり、診断の遅れが生じるリスクもゼロとは言えない。そのため、枚数制限を外して、ネット上のオンラインストレージを利用する方法や、圧縮技術の向上で転送データ枚数を増やすなどの向上が望まれる。転送可能データが増加すれば、より多くの画像データを閲覧することが可能となり、診断の精度もより向上するものと思われる。また、患者情報保護のため画像上の患者情報を消去していることから、当該患者確認の手段が困難となっている。転送データの取り違えを回避する一助として、データに間違いがないことが確認できるような工夫が必要と思われる。救急医に結果報告をする際、見ている画像が同じであるということをお互いに認識できるとよい。現時点では最低限、シリーズ番号、イメージ番号は消去せずに画像上に残すなどの改善が求められる。

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s 通信環境などのインフラやモバイル端末のスペックに合わせた構築が可能

iPhone、iPadは従来の読影、画像処理端末装置の代わりをするものではない。その解像度や画像表示されるエリアも、デスクトップのモニタ装置に比べれば性能差は明らかである。適用されるモダリティは必然的に制限される。また、巨大なメモリーを搭載しているわけでもないので、処理性能にも限度がある。
さらに、最も重要なポイントは通信環境である。通信環境はすべてにおいて望ましい環境が常にあるわけではなく、この環境によってどのようなシステムを構築できるのか、利用したい処理機能は何なのかは、事前に十分検討しなければならない事項の一つである。
ziostation2のzioMobileは、通信環境や用途によって製品タイプを選択することが可能である。当院が利用しているのは院外から利用することが多いため、通信環境に依存しないダウンロード型であるが、院内など高速の通信環境があれば、3D画像の処理や閲覧も可能なサーバー接続型もあり、今後の配信ソリューションの進化に大きな期待を寄せている。

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(インナービジョン2011年6月号掲載)

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