頭部領域病変に対するziostation2の活用 福岡徳洲会病院 放射線科 鷹尾 祐一

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頭部領域病変に対するziostation2の活用

当院では、2005年に64列検出器を搭載したCT装置であるAquilion64(東芝メディカルシステムズ社製)が導入され、それと同時にザイオソフトの画像処理ワークステーションであるM900 QUADRAが導入された。その後、M900 QUADRAはZIOSTATIONへのバージョンアップを経て、2010年12月にziostation2に更新された。64列CT装置においては試行錯誤を重ねながら脳血管CT-Angiography(CTA)の撮影法の改善を行い、ワークステーションにおいても画像処理や表示方法などの検討を行い、診療科からの要望に応えられるよう工夫を行ってきた。本稿では、現在、当院で行っている頭部領域CTAの撮影法、およびziostation2による頭部領域病変に対する処理画像を紹介する。

s ziostation2のシステム構成

当院で導入しているziostation2のシステムは、ネットワーク型の標準的なタイプで画像保存容量は2TBである。ziostation2のフル機能クライアントである「VGR」を利用するモダリティは、64列と4列CT、1.5TのMRIが2台で、VGRクライアントはCT室に2台、MRI室に2台の計4台が稼働しており、画像処理はもとより、ボリュームデータの一時保存サーバーとしても活用している。現在のところ、VGRクライアントは放射線科内のみで使用しているが、将来的には他診療科や手術室への設置も検討している。

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s 頭部領域CTAの撮影法

まず、高濃度または中濃度造影剤約50mgI/kgを2秒注入して、頭蓋内の任意断面(トルコ鞍付近)でテストインジェクション撮影を行い、動脈と静脈に関心領域を設定してTime Density Curve(TDC)を得る。その後、テストインジェクションのTDCを表計算ソフトで読み込み、重畳積分法(畳み込み)を用いて、8秒および10秒注入の仮想TDCを作成する(図1)。作成したTDCのグラフから動脈相、静脈相のタイミング決定、および造影効果を予測、適正化するようにしている。撮影条件、造影剤注入法は表1に示す通りである。

図1  テストインジェクションのTDCから計算した8秒および10秒注入の仮想TDC
図1 テストインジェクションのTDCから計算した8秒および10秒注入の仮想TDC
赤系の線:動脈における8秒および10秒の仮想TDC
青系の線:静脈における8秒および10秒の仮想TDC
緑系の枠:動脈相と静脈相の撮影タイミング設定例
(造影剤注入時間が10秒で撮影時間が3秒の場合)
TDCの横軸に表示されたディレイタイムをそのまま読み取り、CT装置に設定するため、単純ミスが減少する効果もある。

表1 頭部領域CTAの撮影条件と造影剤注入法
表1 頭部領域CTAの撮影条件と造影剤注入法

なるべく純粋な動脈相を撮影するために、8秒注入のピーク付近をねらって撮影することが多く、術後などで静脈相を省略する場合は、実際の造影剤注入時間も8秒にする。動静脈の2相を撮影する場合は、静脈相の十分な造影効果を保持するため、造影剤注入時間を10秒としている。
この脳血管CTAの撮影方法は、本スキャン前に被検者の生理機能をある程度把握することが容易なため、体格で造影剤注入法を決定する通常のボーラストラッキング法よりも、良好な動脈相、静脈相の画像を取得できる確率が高いと考えている。

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s ziostation2による基本的な画像処理

頭部領域においては、造影剤を注入する前に低線量で撮影した単純画像のデータを用いて、動脈相および静脈相からサブトラクション処理を行っている。その後、単純およびサブトラクション後の動脈相、静脈相をマルチデータフュージョンで読み込み、画像処理を行ってから必要に応じて加算表示する(図2)。ziostation2のサブトラクションは自動位置合わせ、およびワーピングの精度が良好であり、当院では、頭部領域のほかに、頸部、下肢領域でも使用している。また、処理速度が向上したため、大きくワーピングが必要な場合や広範囲撮影においても実用性が高くなった。

図2 ziostation2による頭部領域の基本的な画像処理
図2 ziostation2による頭部領域の基本的な画像処理
a:動脈、b:静脈、c:単純画像より自動抽出した脳表、
d:単純画像より作成した骨、 e:動脈+静脈、f:動脈+静脈+脳表
必要に応じて加算表示する。

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s 症例に合わせた画像処理と表示方法

■脳動脈瘤
CTAは、治療方針決定など術前の情報としてはもちろんのこと、術後の確認や説明用としても重要な位置付けとなっている。主に、脳全体の血管情報を得る目的として検査を行うが(図3)、特に、術前の動脈瘤の形状や穿通枝との位置関係の確認、術後のclip確認などに重点を置いて検査を行っている(図4)。

図3 動脈瘤クリッピング術前の画像
図3 動脈瘤クリッピング術前の画像
a:脳表+動静脈、b:動静脈
このような画像を多方向から観察することで
脳全体の血管および脳実質と動脈瘤の位置関係を把握する。
図4 脳動脈瘤クリッピング
図4 脳動脈瘤クリッピング
a:術前、b:術後

■脳梗塞
脳梗塞の場合、通常は単純CTとMRIで評価することがほとんどであるが、特にCTAでは、中大脳動脈閉塞に対する外頸動脈−中大脳動脈バイパスの手術前後の評価に用いている。術前では、外頸動脈と中大脳動脈末梢との位置関係の把握、開頭野の決定、術後では、バイパス血管の開存性評価や効果判定などを行っている(図5)。

図5 外頸動脈−中大脳動脈バイパス術
図5 外頸動脈−中大脳動脈バイパス術
a:術前 中大脳動脈末梢と外頸動脈との位置関係の把握、開頭野の決定に利用。
b:術前 左中大脳動脈は閉塞しており末梢のみが描出されている。
c:術後 外頸動脈からのバイパスにより左中大脳動脈の血流改善が見られる。

■脳腫瘍
以前は脳腫瘍においてCTAを行うことは少なかったが、最近は手術シミュレータ用のデータを得る目的で撮影することが多くなってきた。ziostation2では、腫瘍組織の血管、骨との位置関係を把握するための画像(図6)の提供や、bregma、nasion、inionなどの基準点や、正中などの基準線から腫瘍までの距離の算出を行い、術前情報として提供している。

図6 髄膜腫摘出術前
図6 髄膜腫摘出術前
外側から3D断面を連続して観察することにより腫瘍、骨、血管の位置関係を見る。

■脳動静脈奇形
MRIとともに用い、特に治療方針決定に有用である。画像処理はほぼ脳腫瘍と同様であり、脳実質や骨との解剖学的位置関係の描出や、基準線(点)とnidusの距離測定、およびnidusのおおよその大きさの算出を行う。可能な限りfeeder、nidus、drainerを分離して、色分け表示するようにしている(図7)。

図7 動静脈奇形の処理画像
図7 動静脈奇形の処理画像
複雑な血管走行になっていることが多いが、可能な限り色分け表示する。

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s まとめ

ziostation2に更新してからは画像処理にかかる時間が短縮し、より撮影業務に集中することが可能となった。これは、単に処理速度が上がったためだけではなく、ルーチンで作成する画像のテンプレートなど、画像作成のためのツールをパレットに登録できることや、自動処理能力の向上などによって、効率良く画像処理ができるようになったためと思われる。
現時点において、ziostation2は当院の使用状況では機能的に必要十分であるが、今後はモダリティの進歩によりデータの大容量化がますます進むと考えられるため、さらに高性能なハードウェア、部位や検査種ごとに細分化された自動処理能力の高いソフトウェアなどが必要となるであろう。今後のziostation2のさらなる進化に期待する。

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(インナービジョン2011年10月号掲載)

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