CT Colonographyによる大腸がんスクリーニングの成果と展望 進化するziostation2のCT大腸解析ソフト 国立がん研究センター中央病院放射線診断科 飯沼 元 氏

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CT Colonographyによる大腸がんスクリーニングの成果と展望
  進化するziostation2のCT大腸解析ソフト

飯沼 元 氏
飯沼 元 氏

国立がん研究センターがん予防・検診研究センターでは、2010年11月からCT Colonography(以下、CTC)による大腸がん検診を開始した。同センターでは、4列MSCTが登場した当初から、CTCを大腸がんの術前診断に応用するための研究を進め、豊富な症例を重ねてきたが、近年、前処置法などのインフラ整備が急速に進んだことを受け、正式に大腸がん検診への応用へと踏み切った。なかでも、CTCの読影に必須のワークステーションとして、同センターではザイオソフト社の3D医用画像処理ワークステーション「ziostation2」を使用しているが、同社との共同研究の結果、飛躍的な進歩を遂げ、スクリーニングに耐えうる短時間での読影を可能にしている。そこで、同センターにおける大腸がん検診の現状と、 CTCの技術的進歩、さらなる普及に向けた取り組みなどについて、国立がん研究センター中央病院放射線診断科の飯沼 元氏にお話をうかがった。

s CTCによる大腸がん検診の現状と評価
ziostation2を用いたCTC読影風景
ziostation2を用いたCTC読影風景

■タギング法による前処置の評価

当初、1日2例からスタートした当センターのCTCによる大腸がん検診は、現在では 6例に増えています。前処置後に炭酸ガス注入器で腸管を拡張し、CT撮影を行いますが、9割以上で十分読影に耐えうる画像が得られています。実は、内視鏡検査や注腸X線検査においても、残便や残渣の影響が大きく、大腸の内腔全体を十分に観察できる割合はそれほど高くありません。ですから、9割以上の成功率が得られているというのは、非常に優秀です。

CTCにおける前処置法としては、fecal tagging(FT)法を用いています。より適切な検査食や下剤投与後に、バリウム造影剤を経口的に摂取して残便・残渣を標識し、標識された高濃度領域を画像処理により取り除く手法で、これにより大腸の内腔全体が観察可能になります。タギングによるデジタルクレンジング技術については、欧米などでは比較的早期から研究されてきましたが、いまだ確立した方法がないという現状を見ても、われわれの前処置法では、非常に良い結果が得られていると言えます。

さらに、CTCの検査時間は、検査室に入室してから退室するまで10分以内ですので、被検者からの評判も非常に良好です。今後、より効率的で有効性の高い検査法をめざして改善していくことで、近い将来、CTCが一般的な大腸検査法になると予想しています。

ziostation2のVGPによる2体位比較表示。デジタルクレンジングによって,残便・残渣部分がきれいに消去されている。
ziostation2のVGPによる2体位比較表示。
デジタルクレンジングによって,残便・残渣部分がきれいに消去されている。

■VGPの有用性と評価

「ziostation2」の大腸解析ソフトウェアは、当センターとザイオソフト社が共同で開発を進めてきました。中でも、画像表示法の1つである仮想展開画像(Virtual Gross Pathology:VGP)に重点をおいてきました。VGPでは、腸管内腔面を1画面に表示できるため、従来の仮想内視鏡(VE)像と比べてきわめて効率的に大腸全体の観察が可能です。大腸には屈曲やヒダが多く、画像の歪みが生じやすいため、それが診断において問題となります。しかし、ziostation2では歪みが最小限に抑えられ、またここ1〜2年で画質も飛躍的に改善されました。結腸紐や半月ひだ、ハウストラなどの描出の進歩は著しく、VE像により即した状態で観察可能であり、ziostation2は臨床的に高いレベルに仕上がっています。

仮想内視鏡像(VE)+MPR画像表示
仮想内視鏡像(VE)+MPR画像表示

また、画像処理のプロセスも大幅に改良され、ストレスなく高速に各画像表示法を活用できるようになった点も、非常に大きな進歩です。CTCの診断にあたっては、VGPのほか、魚眼方式で観察することができるVEスコープビュー表示、air enema表示などを使用しますが、これらをいかに組み合わせて読影するかが重要なポイントとなります。われわれも当初は、1症例あたりの読影に約30分かかっていましたが、VGPに慣れるに従って診断効率がどんどん向上し、現在では10分程度にまで短縮しています。スクリーニングでは、術前診断と異なり、いかに正確に病変を拾い上げ、存在診断を行うかが重要になりますので、粘膜面全体を一瞬で観察できるVGPはきわめて有用です。

ziostation2では、VGP、VE像、air enema像がすべてリンクしているため、VGPで病変が疑われる部位を画面上でクリックすれば、ほかの画像の同じ部位に印が表示されます。VE像とMPR像との合成画像の質も非常に高く、VGPで印をつけた部位を断層像で詳細に評価することも可能です。当センターでは、実際にこのような診断プロセスを構築することで、読影時間の短縮につながりました。将来的にはVGPを中心に、1症例あたり数分で診断できる診断プロトコルを構築したいと考えています。

当センターにおける術前診断のデータは、すでに2000例を超えています。ザイオソフト社との共同研究では、そのデータに基づき、早期がん、特に表面型大腸腫瘍がVGP上でどのような所見としてとらえられるか、ということについて研究を進めています。

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s CTCの普及に向けた取り組み
 AIMS abdominal Imaging 2011(2011年10月8日)において開催されたCTCハンズオントレーニングの様子 20数名の放射線科医が参加し,活発な討論と臨床に即したCTC診断を経験した。
AIMS abdominal Imaging 2011(2011年10月8日)において開催されたCTCハンズオントレーニングの様子
20数名の放射線科医が参加し,活発な討論と臨床に即したCTC診断を経験した。

■広がるCTCハンズオントレーニング

CTCは、最近ではかなりポピュラーな診断法になってきており、ここ数年、CTやワークステーションメーカーもCTCをテーマにした開発を行うようになってきました。

こうした状況の中、CTCのさらなる普及に向けて、われわれが中心となり2007年から、毎年4月に開催されるJRCに合わせてハンズオントレーニングコースを行っています。当センターで経験した重要と思われる症例を提示し、ワークステーションを有効に活用するためのノウハウなどを実践的に学習する場となっています。

このようなトレーニングコースは、欧米ではたくさん開催されており、放射線科医は高い参加費を払ってCTCを学んでいる状況です。一方、わが国ではまだ、そこまでの認識には至っていませんが、ここ数年で確実にイベントの開催が増えています。特に、JRCでは毎年恒例のイベントになっていま すし、日本腹部放射線研究会においても、 2010年度からイベントとして行われるようになりました。CTCに関連した各企業が開催するセミナーや研究会でも、ハンズオントレーニングが取り入れられるようになってきています。これはつまり、CTCの重要性がより強く認識され、より実践的に学びたいという放射線科医、消化器科医が増えてきているということを意味していると思います。今後、臨床におけるCTCの地位を確立するためにも、ハンズオントレーニングの企画を増やしていくことが重要と考えています。

■診療報酬収載へ追い風 一部の器材が保険適用へ

これからのCTCのさらなる普及・発展のためには、診断学の確立と同時に診療報酬収載が大きなポイントです。幸い、ここにきて炭酸ガス送気装置(エーディア、根本杏林堂販売)の薬事承認や、注入用直腸カテーテル(エーディア、日本メドラッド販売)の保険収載が認められるなどCTC実施のための環境には追い風が吹いています。この流れをさらに加速するために、国立がん研究センターを中心に、ziostation2を用いて診療報酬収載をめざした多施設共同研究を行う予定です。現在のCTCの普及の速度と関心の高まりからすると、2012年度に共同研究を開始すれば、2014年度の診療報酬改定時には十分に間に合うと見込んでいます。

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s CTCの今後の展望

日本における消化管診断は、これまで消化器科医がリードしてきているため、CTCの精度をより高めていくためには、消化器科医のCTCに対する理解と診断への協力が必須です。ただし、CTCはCT画像がベースになりますので、診断においてはやはり放射線科医が主体となり、消化器科医と連携しながら行っていく体制が理想と考えています。一方、CTCを全国レベルで展開するためには、放射線科医の人数が十分とは言えません。また、CTCに対して正しい知識を持った放射線科医を増やしていくためにも、CTCの学習の場を増やし、診療報酬に収載されることで、大腸画像診断におけるメリットをより明確に感じられるような環境作りも重要です。

放射線科医不足を補う意味では、遠隔画像診断やCADの開発も重要です。特に、CADはすでに開発が進み、欧米では基本的な診断技術として出来上がっており、国内でも現在日本の診断レベルに合わせてザイオソフトと共に開発を進めています。今後は、CADのさらなる精度向上をめざし、早期浸潤がんの検出能を上げていく必要があります。

このほか、低線量化もひとつの重要なテーマです。CT検査では被ばくは避けられませんが、幸いCTメーカー各社が低線量化に非常に力を入れて研究を進めており、すでにCT画像処理において逐次近似法を応用し超低線量を達成するCT装置が開発されています。これにより、近い将来、胸部単純X線写真1枚に近い線量でCTCを施行することも可能になると予想されています。

消化管診断は、世界の中でも日本がずば抜けて優れています。そういう意味で、日本の大腸内視鏡の優れた診断学に基づいてCTCが開発されることは、非常に意義深いことです。特に、欧米では表面型腫瘍やその他の病変に関する知識が乏しく、CTCでは基本的にポリープ型病変しかターゲットにしていません。したがって、より有効性の高い表示法やスクリーニング法、診断学を、日本から世界へと発信していきたいと考えています。

(2011年11月21日インタビュー)

(インナービジョン2012年1月号掲載)

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