ziostation2を用いた法医解剖前CTの読影

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ziostation2を用いた法医解剖前CTの読影

東北大学 医学系研究科 画像解析学分野1)、画像診断学分野2)、法医学分野3)
齋藤春夫1)、川住祐介2)、臼井章仁1)、細貝良行1)、佐藤美帆2)、石橋忠司2)、舟山眞人3)

東北大学医学系研究科では、2009年5月より保健学専攻放射線技術科学コースと医科学専攻法医学分野とで協力し、保健学専攻内に教育・研究用に設置された8列のMDCTを用いた法医解剖前CTを開始した。オートプシーイメージングセンターは医学系研究科内に2010年5月に設置された。CT件数は法医解剖数の約40%から始まり現在は約60%で、累積件数は2012年5月までで約500例である。法医解剖前CTにおけるziostation2による三次元画像の利用の現況について述べる。

[オートプシーイメージングセンターについて]

保健学専攻内のCT室と法医解剖室とは約200m離れているため、解剖室とCT室間の搬送は宮城県警にお願いしている。御遺体は、御遺体搬送用の袋に封入したまま撮影している。CT撮影前にFlat Panel Detectorの移動用X線撮影装置を用いて単純X線撮影を行い、引き続きCTを撮影している。法医解剖前CT開始当初から、ポジショニングと撮影は保健学専攻に所属する診療放射線技師が行い、保健学専攻所属の放射線診断専門医がCT撮影後30分以内に読影し、報告書を作成して法医解剖室にFAXで伝達している。読影結果は法医解剖報告書内に記載されるか、参考資料として解剖報告者(法医)の名前で宮城県警等に提供される1)
単純X線画像とCT画像は、解剖室ですぐに参照できるようにネットワークを整備してあり、解剖に必要な画像の解剖室での供覧と、法医解剖所見確認のために画像診断側のスタッフが解剖に立ち会うよう努めている。法医解剖所見は、解剖後速やかに法医側から画像診断側に提供され、必要があれば再読影、追加画像構築を行っている。また、CT画像による死因を含めた異状所見は、死後CT画像というある意味「未知」なものであることから、実務者間だけで知識を占有するのではなく、その他の医療関係者を含めての討論の場、また、若手スタッフの教育の場が必要と考えて年間10回のセミナーを開催し、その記録を報告書にまとめている。

[ziostation2の導入と運用]

当初は、読影を簡易ビューワによるAxial画像のみで行い、後でzioTermなどで3D画像構築と三次元的画像観察を行っていた。2010年10月にziostation2を導入し、簡易ビューワと同時にziostation2を用いた読影、三次元画像作成が行えるようになった。知識を有する医療関係者だけではなく、警察・司法関係者などにもわかりやすく説明できるボリュームレンダリング法による3D画像などは非常に有用で、解剖室でのziostation2画像の供覧は解剖に立ち会う警察・司法関係者などにもわかりやすいと好評である。
導入したziostation2は同時に4台のワークステーションで起動可能であるが、対象が法医解剖前CTであるため、保健学専攻内の一部と法医学分野内のクローズド・ネットワークで運用しており、大学病院のネットワークとは接続していない。ziostation2は法医解剖前CTの撮像法・診断法の研究にも大きな威力を発揮する。同時使用が徐々に増えており、今後は、ライセンス数についても検討する必要があると考える。
以下にziostation2が有用であった症例を供覧する。

●成傷器の破片の同定、骨片分布の把握

外因性の死亡の場合、成傷器の破片などが御遺体に残っていると、解剖時に解剖者を傷害する可能性がある。破片の有無や局在は非常に重要な解剖前情報である。成傷器が見つかっていて、成傷器に破損がある場合はもちろん、成傷器が見つかっていない場合にも読影には細心の注意が必要である。金属で製造された成傷器の破片はCTでメタルアーチファクトを生じるような高吸収を呈し、2D画像のみでも発見に苦慮することは少ないが、情報を解剖側に伝える際には存在部位をいかに的確にわかりやすく伝えるかに注意する必要がある2)図1)。ziostation2による3D再構成画像は全体から細部までをわかりやすく表現することを可能とし、解剖室で3D画像を観察しながら解剖することを可能とした。また、画像診断側のスタッフが解剖に立ち会うことで、解剖に必要な画像を解剖室で供覧することでき、より安全な解剖が施行できると考えている。
頭部の銃創では、射入口や射出口の決定などに有用な骨片が脳内に散在する場合があり、解剖時に問題となることがある。解剖後にこれらの骨片の分布を再現することは、ほぼ不可能とのことである。法医解剖前CTをziostation2により再構成した画像は、死亡時の状況保存の観点からも非常に有用である。

図1 ボリュームレンダリング法による頭部3D再構成画像。左頭頂骨に突き刺さった成傷器であるIce pick先端の残存例

●体腔内の空気の画像診断、解剖者の感染予防

気胸、気腹など空気の存在と分布は、解剖ではわかりにくいので、法医解剖前CTであらかじめ体腔内の異常ガスの有無と分布を確認しておくことは非常に重要である。例えば、致死的状況である緊張性気胸の画像診断は重要である。緊張性気胸例を開胸するとガスが漏れる音がするが、一瞬の出来事である。熟練した術者であれば、解剖時にガスが漏れる音などを逃すことはほとんどないと思われるが、CTなどであらかじめ緊張性気胸(図2)を疑うことで、経験が少ない術者でも解剖時にガスが漏れる音などを逃すことは少なくなると期待できる。ziostation2により、空気の分布をより明瞭に示すことが可能で、解剖すると不明瞭となりやすい緊張性気胸など死因診断に重要な所見として、法医解剖術者・警察などに好評である。
解剖者の感染予防も法医解剖前CTの重要な役割と考えている。解剖者は常に感染の危険にさらされているため、解剖室の換気など解剖時の感染予防には万全の注意が払われている。しかしながら、法医解剖前CTなどであらかじめ結核など感染の危険が強く疑えれば、感染予防のさらなる強化になり、感染が疑われる臓器を、そのまま切開せずに速やかにホルマリン固定するなどのさらなる感染予防措置が可能となる。法医解剖前にCTで粟粒結核を疑うことができ、解剖前に解剖者に伝え得た症例を経験している3)

図2 緊張性気胸の症例のCT画像(a, b)と三次元構成画像(c)

●裁判用資料の提供

裁判員裁判が行われるようになり、御遺体の写真が資料として提出される。実際の写真に比べて3D画像(図3)は刺激が少ないとされ、今後、頻用される可能性が高い。ziostation2により、よりわかりやすい画像を作成し、提供することが必須になると考えている。
法医学者、警察にわかりやすい画像を提供することを心がけることが、裁判員など裁判に携わる方々にも理解しやすい画像を提供することにつながると考えて、さらなる研鑽に努めている。ziostation2のような画像解析ワークステーションのさらなる発展が、よりわかりやすく、説得力のある画像の提供に必須である。

図3 ボリュームレンダリング法による自絞死例の頸部3D画像

[今後の課題]

法医解剖前CTでは、読影時に知ることができる死亡時の情報が少ないことが多く、さらに全身をくまなく観察することが要求される。少ない死亡時の情報からでも読影に注意すべき点をより明確にし、正確な読影につなげることが必要である。単純X線像や単純CTでは、骨や空気などCT値が大きく異なる部位の把握は良好であるが、わずかな変化をとらえるのは難しい。法医解剖前CTでは、残念ながら造影剤が使用できない。また、即死した場合、損傷部に出血がほとんどない。このため、肝外傷、腎外傷などがあってもCT画像のみでは診断できないことが少なくない。法医解剖前CTで注目すべき所見をさらに明らかにすることで、これらの所見を(わずかな変化かもしれないが)ziostation2で把握できるようになれば、より正確な診断ができると期待しており、メーカーの方々と力を合わせて取り組んでいきたいと考えている。

[参考文献]

1) 齋藤春夫:Ai実施施設からの報告.Autopsy Imagingガイドライン第2版,今井裕他 編,ベクトルコア,105,2012.

2) Kawasumi Y., et al.:Postmortem computed tomography images of a broken piece of a weapon in the skull. Jpn J Radiol., 30,167-170,2012.

3) Usui A., et al.:Usefulness of postmortem computed tomography before forensic autopsy for alerting forensic personnel to tuberculosis infection. Jpn J Radiol. (in press).

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(インナービジョン2012年8月号掲載)

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