ziostation2のMRトラクトグラフィーを用いて脳神経外科の術前情報提供や予後予測に活用 マルチモダリティなフュージョンや自由度の高いROI抽出により高い操作性を提供

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ziostation2のMRトラクトグラフィーを用いて脳神経外科の術前情報提供や予後予測に活用
マルチモダリティなフュージョンや自由度の高いROI抽出により高い操作性を提供

杏林大学医学部放射線医学教室准教授 土屋一洋 氏

土屋一洋 准教授
土屋一洋 准教授

杏林大学医学部付属病院では、3Tを含む5台のMRIが稼働し、CTとあわせた3D画像処理システムとしてziostation2が導入され、CT、MRIの各種の画像処理に活用されている。同院の救命救急センターに新しく320列CTが導入されたことをきっかけとして、ziostation2が最新のバージョン2.1にアップデートされ、MR解析オプションとしてMRトラクトグラフィー、MR血流解析などが利用可能になった。同院でのMRトラクトグラフィーの運用と、MRIの神経放射線領域におけるziostation2の活用について放射線医学教室の土屋一洋准教授に取材した。

[3Tを含むMRI5台体制で、救急患者を含むMRI検査に対応]

 ziostation2のMRトラクトグラフィーを活用し術前情報提供や予後予測に活用
ziostation2のMRトラクトグラフィーを活用し
術前情報提供や予後予測に活用

杏林大学医学部付属病院では、東芝メディカルシステムズ社製の3T MRI「Vantage Titan 3T」をはじめ5台のMRIが稼働しており、外来棟地下の放射線科に4台、救命救急センターに1台を設置して検査が行われている。土屋准教授は、同院でのMRI検査の現況を次のように説明する。
「外来棟地下では限られたスペースに3Tを含む4台が並んで、日常診療でフル稼働しています。救命救急センターでは1.5Tの装置を設置し、救急患者に加えて整形外科のルーチン検査や認知症のスクリーニング検査など、入院患者の比較的時間のかからない検査も行っています。救命救急センターのMRIは、休日や夜間など24時間対応の体制です」
同院での3D画像処理ネットワークは、CTを中心にziostation2によるシステムが構築されている。土屋准教授は、「当院ではCTの検査件数が多く、3Dの画像処理についてもCTが中心ですので、ziostation2をベースにした画像処理の体制を構築しました。診療放射線技師の検査体制も、CTとMRIがひとつのグループになっており、運用や操作性の効率化を図る意味でもziostation2に統合しています」と述べる。
ziostation2は、放射線科のCT室、MR室のほか、救命救急センターのCT、MRIにも設置されている。MRIの神経放射線領域では、動脈瘤疑いや血管奇形、狭窄の症例に対するMRAのボリュームレンダリングによる3D表示、脳神経外科の脳腫瘍などの術前の情報提供として、造影の3D画像からMPR、脳表の3D表示などの作成を行っている。土屋准教授は、「当院では、他院からの動脈瘤症例の依頼やフォローアップの検査を数多く行っていますが、東芝のMRIは1.5Tの時から頭部のMRAのクォリティが高く、CTAに近い描出能がありました。3Tになって信号強度がより向上し、末梢まで描出されるようになっています」と述べる。

[ziostation2のMRトラクトグラフィーで脳腫瘍の術前情報を提供]

同院では、ziostation2のバージョン2.1で新たに搭載された「MRトラクトグラフィー」を用いた検査をスタートしている。MRトラクトグラフィーは、拡散テンソル画像法(diffusion tensor imaging)で撮像されたMRIのデータから神経線維を追跡して描出する機能で、ziostation2では神経線維を描出する領域を任意(円形や多角形)に設定でき、CTやMRAなどマルチモダリティの重ね合わせも容易で、病変部分との位置関係の把握が可能になる。
同院では、MRトラクトグラフィーの作成については、以前から東大放射線科で開発されたフリーソフトウェアである「dTV」などを利用してきた。土屋准教授は、研究の一環として早くからトラクトグラフィーに注目し、2005年には脊髄の神経線維の描出に取り組み、論文として発表している。大学病院としてのMRトラクトグラフィーの運用について、土屋准教授は次のように述べる。
「トラクトグラフィーについては、拡散強調画像の応用法として用いられるようになった初期の段階から取り組んでいますが、当院は救急を含め日常的に多くの患者さんのさまざまな検査を行っており、トラクトグラフィーについても研究目的ではなく、主に脳外科手術の術前検査の一環として行っています」
同院の脳神経外科では、2010年ごろから手術のナビゲーションシステムに、トラクトグラフィーの情報を取り込み、腫瘍切除の術中ガイドとして利用されている。

■MRトラクトグラフィー

症例1(視放線症例)
症例1(視放線症例)
右側頭葉の悪性グリオーマの症例。両側の視放線の後半部 (Meyer's loop) を描出している。背景のFLAIR像で高信号を示す腫瘍により患側の視放線は内方に偏位しているが、線維路の描出は健側と比べ同程度であることがわかる。

症例2(錐体路症例) 右の視床から放線冠レベルにおよぶグリオーマ症例の錐体路のトラクトグラフィー。ziostation2では他のモダリティのデータとの融合も容易である。本例ではその有用性は必ずしも高くないが、動静脈(CTAによる)と錐体路が同時に描出されている(aの右下、b)。
症例2(錐体路症例)
右の視床から放線冠レベルにおよぶグリオーマ症例の錐体路のトラクトグラフィー。ziostation2では他のモダリティのデータとの融合も容易である。本例ではその有用性は必ずしも高くないが、動静脈(CTAによる)と錐体路が同時に描出されている(aの右下、b)。

[WSに統合された操作性でCTなどとのフュージョン画像を作成]

同院では、今年からziostation2によるMRトラクトグラフィーを利用しはじめたが、土屋准教授は「導入の初期段階の経験でも、すぐにわかるのは操作性の良さです。これまでdTVを長く使ってきましたので、操作性の違いから戸惑う面はありましたが、シンプルな操作性で直感的に扱うことができるのですぐに慣れることができました」と評価する。
ziostation2のMRトラクトグラフィーでは、描出する神経線維のROIの設定を、円形だけではなく、多角形で自由に描画でき、さらにはMPR上でも設定することができるので、必要な領域だけを選択的に描出させることが可能になっている。また、ziostation2ではフュージョン機能によってCTなどマルチモダリティの画像データと融合できることがメリットだと土屋准教授は言う。
「当院では脳腫瘍の術前にCTAを行い、そのデータからCTAだけでなく脳表画像を作成していますが、ziostation2では、そういったCTからの画像とトラクトグラフィーのデータを重ね合わせることが簡単に可能ですので、今後取り組んでいきたいですね」
土屋准教授は、トラクトグラフィーの画像処理がziostation2で可能になったことで、従来のdTVに比べて多くのスタッフが処理業務に当たれることを期待している。
「ziostation2という使い慣れた操作環境でトラクトグラフィーが可能になりましたので、多くのスタッフが処理業務にかかわることができると期待しています」

[MRIによる形態、機能を統合したワンストップの情報提供をめざす]

同院でのトラクトグラフィーの検査は、週2件程度が行われている。土屋准教授はMRトラクトグラフィーの臨床的有用性について、術前検査と予後予測への期待を挙げる。
「術前の情報提供としてMRIの画像やCT、PETなどの他のモダリティの情報と加算表示することで、悪性腫瘍(グリオーマ)などの手術における切除範囲の決定や、血管性病変におけるアプローチ方向の設定などに有効です。また、脳梗塞や外傷性の脳損傷の予後予測について、トラクトグラフィーを用いてある程度の評価ができるのではと考えており、実際に脳外科からの依頼で検査を行っています」
ziostation2によるMRトラクトグラフィーのこれからの活用について土屋准教授は、「3T MRIによって、より微細な神経線維の描出が可能になりましたので、例えば聴神経と病変の関係の描出や、さらに存在は確認されていてもトラクトグラフィーでは未だ描出されていないような神経線維について、描出法を工夫することでトライしていきたいと考えています」と述べている。
さらに、ziostation2によるMRIの画像処理の方向性として、他のモダリティとのフュージョンはもちろん、MRIのみの“ワンストップ”の情報提供も可能になるのではと土屋准教授は期待する。
「術前検査のDSAをCTAの脳表画像作成で置き換えたように、MRI+MRAで描出が可能になれば、ヨード造影剤や被ばくのリスクを回避できます。MRIの撮像方法や画像処理を検討することで、術前に必要な形態情報をMRIデータだけで提供できる可能性が考えられます。さらに、トラクトグラフィーはもちろん、ファンクショナルMRIやMRSなどの機能情報を加えることで、PETなどを行わずに機能的な情報を統合して提供することが期待されます。機能情報としては、灌流情報について造影剤を用いないASL(arterial spin labeling)のデータが3Dで取得できるようになってきましたので、これをフュージョンできれば脳腫瘍の診断や治療に意味のある情報提供が可能になります。こういった情報を統合的に扱い処理できるのがziostation2の特徴だと思いますので、今後の活用を進めていきたいと考えています」
臨床の最前線で多くの症例を扱う杏林大学病院での、MRトラクトグラフィーを中心とするziostation2の今後の成果が期待される。

(2012年11月5日取材)

杏林大学医学部付属病院
杏林大学医学部付属病院
東京都三鷹市新川6-20-2
TEL 0422-47-5511

(インナービジョン2012年12月号掲載)

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