強度変調放射線治療(intensity-modulated radiation therapy:IMRT)は,急速な発展を続けるIT技術を放射線治療分野に応用して開発された最新の外部照射技術である1),2)。IMRTの特徴は,治療計画の際にコンピュータ最適化技術の助けを借りることと,同一照射門内で有意に強度の異なる照射を行う点である。この結果,IMRTを用いると,在来型の照射技術では実現困難であった複雑な形状で,かつリスク臓器に隣接するターゲットに対しても良好な線量集中が可能となった1)。IMRTは,欧米では米国を中心として1990年代半ばより臨床応用が開始されたが,わが国において初めて臨床適用されたのは2000年である。IMRTの開発により,従来の照射技術では実現困難であった線量分布での照射が可能となり,前立腺がん,頭頸部腫瘍をはじめ,多くのがん種において物理・臨床上の有用性が報告されている。
  このような背景のもと,2001年には米国のThe Health Care Financing Administrationによって,病院ベースの外来治療に限定してIMRT治療および治療計画の保険請求コード(G0174 and G0178)が設定された。翌2002年には,The Centers for Medicare and Medicaid Servicesによって,IMRT治療計画および治療に関して新たな保険請求コード(CPT77301およびCPT77418)が設定され,独立開業施設を含めたすべての施設においてIMRTの保険請求が可能となった。
  一方,わが国においては,2000年に一部の大学病院やがんセンターにおいてIMRTの臨床応用が開始されたが,IMRTにかかわる経費については各実施施設の「持ち出し」で行われてきた。これらの先駆施設の努力の結果,2006年には先進医療に認定され,2008年度には原発性の頭頸部腫瘍,前立腺腫瘍,中枢神経腫瘍について健康保険へ収載される運びとなった。
  この保険収載に当たってIMRTガイドラインの整備が必須とのことから,日本高精度放射線外部照射研究会内のワーキンググループを中心に原案が創案され,日本医学放射線学会,日本放射線腫瘍学会(JASTRO)による修正・承認を経て正式に発行された。本稿では,このIMRTガイドラインの目的,要点,ならびに今後の課題について解説する。

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