VMATの特長
  1960年代に高橋によって提案された打ち抜き原体照射1)に代表されるように,わが国では連続回転型放射線治療が古くから行われてきた。わが国の放射線治療では馴染みのあるこの打ち抜き原体照射の発展型として95年,Yuにより逆計算による強度変調を取り入れた回転放射線治療(Intensity Modulated Arc Therapy:IMAT)が提案され2),3),2008年にはガントリ回転速度や線量率,マルチリーフコリメータ(multileaf collimator:MLC)位置などを変調のパラメータとした回転照射(Volumetric Modulated Arc Therapy:VMAT)を実現するシステムが,エレクタ社とバリアン社により提供された4)?6)。図1にVMATの概略を示す。
  これまで日常的に使われてきたリニアックを用いる強度変調連続回転型照射技法は,ファンビームを用いたヘリカル型の「TomoTherapy」(Hi-Art System社製)とも一線を画す最新の技術であり,VMATはいまや世界中の多くの医療施設でその導入が試みられている。VMATはTomoTherapyと同様,回転照射という特徴のためガントリ角における線量が新たな最適化パラメータとなる。他方,TomoTherapyとは異なり,コーンビーム照射であるために,回転という自由度の増加に伴いコリメータによる放射線の余分な遮蔽が減少し,その結果同じ放射線処方であっても照射monitor unit(MU)値をこれまでの強度変調放射線治療(intensity-modulated radiation therapy:IMRT)に比べて少なくすることが可能となる。これは,リーフ間の漏れ線量や照射野外線量などを含んだ,いく分不確かさが増大するビームセグメントを少なくしてくれるとともに,治療時間が短縮されるおかげで,照射中の臓器運動の影響の低減や1回あたりの治療の中での高線量率処方を実現することになる。
  当院では,放射線治療装置「Elekta Synergy」およびVMAT用治療計画機「ERGO++」(ともにエレクタ社製)を用いたVMAT治療をわが国で初めて導入し,現在前立腺がん・頭頸部がんの治療や骨転移の疼痛緩和に適用を開始している。本稿では,当院におけるVMAT治療計画の検証と臨床の経験,そして今後の展望について述べたい。

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