放射線治療分野に携わる医師や診療放射線技師の人数が不足しているのは明らかである。診療放射線技師に限れば,放射線治療に配置したくても,X線検査や核医学検査を含めた放射線診療全般に携わる技師数が絶対的に不足していることや,病院長・職場長の放射線治療に対する理解が低いことなどが人員不足の原因の
1つとして考えられる。一方,高度専門職としての人材育成は,小手先だけの勉強で容易にできるものではなく,大学や大学院の基礎教育のときから臨床現場での継続的な卒後教育・生涯教育を通じて達成できるものである。
それでは,診療放射線技師はいままでどのようにして高度専門職業人をめざしてきたかと言えば,それは組織的な力というよりも,個人の努力で学会や研究会に出席し,自らのスキルを向上してきたのである。そういう状況が続く中,4年前(2005年
2月)に設立された日本放射線治療専門放射線技師認定機構により,全国統一講習会の実施および地方研究会との連携のもと,組織的に高度専門職業人としての人材育成が行われ,大きな成果を上げてきた。放射線治療を専門とする診療放射線技師の不足は,高度専門教育だけの問題でなく,病院組織の方針,患者数,経済的な問題なども関与し,すぐに充足させることは困難と思われるが,本稿では,がん診療のエキスパートとして能力を発揮する放射線治療専門放射線技師の育成について言及する。
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