超音波による脳組織の評価は,特に,頭蓋骨の厚いアジア人の高齢者では超音波が減衰するために困難とされてきた1)。このため脳領域における超音波検査は,カラードプラ法やパルスドプラ法を用いた主幹動脈の狭窄や閉塞病変の同定,クモ膜下出血の血管攣縮の評価などに施行されている2),3)。
現在,わが国で脳血管領域に対して唯一認可されている超音波造影剤「Levovist(レボビスト)」による造影超音波では,高い音圧で造影剤(マイクロバブル)を崩壊することにより造影効果を得るため,リアルタイムでの観察は困難で,その造影効果は血流速度に依存し,血流速度の遅い血流を観察することはできなかった。一方,「Sonazoid(ソナゾイド)」は,中低音圧でマイクロバブルを共振させることで造影効果を得るため,リアルタイムに血流速度の遅い血流も観察できる。また,ソナゾイドは難溶性でシェルを持つため,長時間にわたって造影効果が得られ,高音圧で関心領域(ROI)内の気泡を一掃し,その後,再びROI内に流入する新たな気泡を映像化するFlash Replaenishment Imaging(FRI)や,画像をキャプチャーし再構成することで血管構造をトレースすることなどが可能である。このため,理論的には,リアルタイムに脳実質内に流入する微細な血管まで観察することができ,皮質動脈などの微細血管の形態を複数の断面で評価可能になる。また,腎臓,心臓などの臓器でも行われているように,ROIを設定して時間輝度曲線(time intensity curve:TIC)を描くことで,組織内に灌流する血流量を間接的に評価することができる4)。
このようなソナゾイド造影超音波法の特徴を生かして,脳組織灌流評価や脳血管解剖の評価を試みたので初期経験について概説する5)。
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